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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
3章 雪と夜の国

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ロザリアンヌ達が次に訪れたダンジョンは、ギラギラと照りつける太陽の日差しが痛い砂漠フィールドのダンジョンだった。


一瞬サボテンが合体しているのかと思ったトカゲにもサボテンにも見える不思議な魔物にはかなり驚いたが、倒してみると魔石と塩をドロップしたのにはもっと驚いた。

それも精製塩のようにサラサラしたものではなく、岩塩を細かく砕いたみたいなつぶつぶとした感じの塩だった。


砂漠とトカゲとサボテンのどれが塩に結びつくのか知らないロザリアンヌは、これはクレイジーソルトに使えるかもと暢気に考えながら喜んで採取した。


他にも堅い真っ白な鎧のようなものを纏い太陽光を反射させながら移動する魔物や、耳が異様に大きな地中に巣を作り生息しているネズミみたいな魔物など、ロザリアンヌが見たこともない魔物が多数生息していた。


そして・・・。


「スゴいわね」


「ああ」


「本当にスゴいねー」


「この木はまだ生きているのでしょうか」


ダンジョンに入ってすぐに見えていた木の側まで来てみると、その大きさに圧倒され改めて驚いた。


テンダーの森にあった世界樹の木も大きかったが、アレは世界樹だと思うからその大きさに納得できた。

しかしこの木はなんだか枯れているようにも見えるし、何というかまるで木を逆さに植えたようにも見えるから不思議な凄さを感じた。まるで根っこが空に向かって伸びているようなそんな不思議な力強さ。


そしてそんな不思議な木の枝先に一つだけ小さな気配があるのを探知し、気配の場所を探すとタンポポの綿毛のような小さな花が一輪咲いているのを見つけた。


ロザリアンヌは何故かこの木は凍らせてはいけないと直感が働き、その綿毛をじっと見詰めているとクルリと動き、今まで白い葉っぱに見えていた綿毛の後ろの部分にパチリとした目が現れた。

現れたと言うより目が開いたといった方がしっくりくる。そして目が合った瞬間に予想通り飛んで逃げ出した。


ロザリアンヌはコレでも四度目の体験なので既にバッチリ対策済み。即座に絶対零度結晶【ダイヤモンドダスト】を進行方向に発動させる。

空気中の水分を凍らせながら綿毛もピキピキと凍り始めると、今日はレヴィアスの魔弾がトドメを刺していた。


そしてキラキラとした粒子へと変わる綿毛の元へ駆けつけドロップ品を確認すると、赤い魔石と瓢箪を思わせる何かが落ちていた。

鑑定してみると『神々が最も愛する酒』とでた。


「コレお酒だって」


「お酒ですか! それの中にあるという事ですね!!」


何故かテンダーが喜び、是非飲んでみたいというテンダーのためにグラスに注ぐと中身は琥珀色だった。

お酒には今現在あまり興味のないロザリアンヌもキラルもレヴィアスも、冷めた目で見ているのにも気づかずテンダーはテンション高く解説を始める。

香りがどうとか色がどうとかしばらく語った後ゆっくりと口に含んだと思ったら今度は感動で涙し始めた。


「それ程?!」


テンダーはロザリアンヌの疑問に答えることなく瓢箪をロザリアンヌの手から取り上げ、その後はまるで取り憑かれたようにお酒を飲み続けた。

その様子に呆気にとられていたロザリアンヌは重要な事に気づく。


「ちょっと待って! コレは神様にお供えしなくちゃならないものなのよ」


ロザリアンヌはもう既に大分無くなってしまっただろう中身を心配して、慌ててテンダーから瓢箪を取り上げる。


「あれっ?」


中身は減っている筈なのに、ロザリアンヌがドロップ品として拾い上げた時と重さが変わっていない気がした。

もしかしたらと瓢箪の中を覗いてみると、相変わらず中身はお酒で充満している。


「コレって・・・」


以前クトラ大陸のダンジョンで手に入れた中身が絶えず一杯になるというあの樽と同じなのだろうかと考えた。

そしてロザリアンヌにはまったく必要の無い物だけれど、きっとリュージンだったら喜ぶんだろうなとふとそんな事を思っていた。


「あまり世に知られてはいけない物だな」


リュージンにプレゼント出来ればと考えながら少し迷っていると、レヴィアスが迷いの答えをくれる。


「やっぱりそうよね」


ロザリアンヌは確認できていないが、テンダーが涙を流す程美味しいお酒だ。それも無限に湧き出るとなったらどんな事をしても手に入れたいと考える人もきっと出てくるだろう。


「それを神に捧げてしまうのですかぁ。それじゃぁもう飲めなくなるじゃぁないですかぁ!」


少々呂律が怪しいテンダーが必死になってる時点でもう既に厄介なのに、これ以上に厄介事が起こりそうな予感しか無い。


「コレはこのまま神様にお供えして終わりよ。どうしても欲しかったら自分でさっきの綿毛を狩るのね」


「わ、分かりましたぁ。そうしますよぉ。そうすれば良いんでしょうぉー」


ロザリアンヌは酔っ払って大樹の傍から動こうとしないテンダーを放って、瓢箪を手に深層へと進み祭壇を探した。


深層にはアリに似た魔物が出現したが、アリの巣だろう砂山に近づきさえしなければ戦闘は容易に避けられたので構わずに祭壇を探した。


そして見つけた祭壇に瓢箪を奉納して手を合わせると、ホオズキの実のような赤いまん丸な神様が現れた。細い手足もつぶらな瞳も相変わらずだった。


「この瓢箪をここにお供えしないで持ち帰っても罰が当たりませんように」


ロザリアンヌは万が一本当にテンダーが瓢箪を手に入れた時、持ち帰ろうとしてここの神様に攻撃を受けないようにと考えて願った。

ロザリアンヌでも対処できなかったあの攻撃はテンダーではどんなことになるか考えるだけで恐ろしい。


「願いは聞いた。安心するが良い、何なら他の神々にも届けて欲しい」


「他の神々って、他のダンジョンの神々ですよね。って事はあと七つは手に入れないとダメですね」


「八つだ」


「ああそうか。全部攻略した後に現れるというダンジョンにも神様がいるんですね」


「当然だ。では頼んだぞ。ちなみに他に私に捧げたい物は無いのか?」


ロザリアンヌはホオズキ神に強請られ他のダンジョンで手に入れた神々が愛する食材の事を思い出した。そういえば苔玉神もそんな事を言っていたと。


「今手に入れてあるのはこれだけです」


そう言って神々が愛するキノコと果物と貝をマジックポーチから取り出して祭壇の上に置いた。


「おぉぉ、ありがたい。特別だ、戻ってみるが良い。そのくらいの礼はしよう」


そう言うとホオズキ神は姿を消したので、ロザリアンヌは大樹まで急ぎ戻った。

するとそこではまるで遊ばれているようにテンダーと綿毛の魔物が追いかけっこをしていた。


「ねえ、見て」


キラルに言われ気づくと木には他にも綿毛の魔物が全部で八つ出現していた。


「ホオズキ神が言った特別ってこの事だったのね」


ロザリアンヌはここでリポップを待ち何日も滞在する事を覚悟していたが、これならすぐに済みそうだとホオズキ神に感謝した。

そしてテンダーの追いかけっこは無視して、木に残る綿毛をキラルとレヴィアスと手分けして倒した。


「テンダーまだなの~」


「ほら、頑張って-」


「だ、だってコイツってぇ、フワフワ飛んでいるよ、ように見せかけてぇ、ホントすばしっこいんですよぉー」


余裕で木に残っていた綿毛を倒し終わった三人でテンダーの様子をしばらく眺めていたが、大分時間も経過していて既に退屈になり戻りたくなっていた。

テンダーはそれでもヘロヘロになりながらまだ諦めずに綿毛を追いかけている。


「仕方ないわねぇ」


ロザリアンヌはテンダーに瓢箪を手に入れても絶対に飲み過ぎない、そして瓢箪の管理はロザリアンヌに任せる事に不満を持たないというのを約束させ手助をした。


「このお酒の事は絶対に口外禁止よ」


「私を信用してください!」


まったく信用できない赤い顔とイントネーションで言うテンダーには苦笑いしかでないロザリアンヌだったが、お酒好きには一杯くらいはご馳走してもいいかと考えていた。



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