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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
3章 雪と夜の国

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ダンジョンを探しては攻略する日々が始まった。

考えてみたらマップ埋め作業だと思えば苦も無く魔導艇で大陸を移動できたし、ダンジョンを探し当てるまでの時間もそれぞれ自由時間のように好きな事ができた。


苔玉神のダンジョンを見つけるまで何故あんなにストレスを感じたのか今となっては不思議だった。

そして苔玉神のダンジョンの次に見つけたのは密林ダンジョンで、それも雨期の最中なのかシトシトとした雨が降り続いていた。


苔玉神のダンジョン同様ワンフィールド型のダンジョンで、下層中層深層のエリアに分けられていた。

下層エリアには色とりどりの大きさも様々なカエルの魔物や蛇の魔物が現れ、魔石と肉だけでなく貴重な錬金素材もドロップした。


中層では何種類かの猿の魔物が単独または何匹かのグループになって現れ、何故か木の上から果物を投げつけてきた。

投げてくる果物はどの木に居るかの違いでは無く魔物の種類別にそれぞれ違い、パパイアやココナツやドリアンに似た果物を放っておいたら幾つも投げつけてくる。


いったいどこから果物を取り出しているのかまったく不思議だった。

当たればかなりのダメージがあると思われるが、そんな事はまったく気にせずロザリアンヌ達は喜々として果物を回収してから倒した。


そんな中バナナが歩いているのを発見した。まだ少し青みのあるちょっと大きめなバナナが一本テトテトと雨の中大きな葉を傘代わりにして隠れるように歩いている。まるで伝説のコロポックルのように。


ロザリアンヌは思わず目を疑い、目をしばたたかせながら二度見どころか三度見してしまった。

バナナに手足があるのも驚きだが、葉っぱの傘を差しているなんて想像もしていなかった。


「ねえ、バナナが歩いてるんだけど」


ロザリアンヌの声が聞こえたのかバナナは立ち止まりロザリアンヌの方を見る。そして目が合った瞬間、レースのキノコ同様にスゴい早さで逃げ出した。葉っぱの傘を投げ捨てて。


ビューーーン!!


こうなる事は予想が付いたはずなのにあまりにも意外すぎて油断していた。


「アレがボスって事だね。任せて」


「待ってください私も戦います-!」


キラルがいち早く反応しバナナの後を追うので、ロザリアンヌも負けずと絶対零度結晶【ダイヤモンドダスト】を待機させながら後を追った。


木々の間を縫うように飛ぶのにも大分慣れたが、バナナの逃げ足が速いせいかそれとも姿が小さいせいか気配探知では追い切れず何度か見失いそうになる。


「もう、まどろっこしいな」


ロザリアンヌはバナナの逃げていく方向に当てずっぽうに魔法を発動させる。


「絶対零度結晶【ダイヤモンドダスト】」


急速に範囲を広げ発動させると湿気の多かった環境のせいか、ピキピキピキと派手な音を立てながらそこにあったすべての物が凍り始め、急激に下がる辺りの気温のせいかバナナの逃げる速度も落ちていく。


「ジャストミート!」


バナナに追いついたキラルのピコピコハンマーが炸裂すると、バナナはゆっくりとキラキラとした粒子に変わり消えていった。


そしてそこに残ったのは赤い魔石と何かの種にも見える拳大の何かで、鑑定すると『神々が愛する果物』と出た。


勿論ロザリアンヌは迷うこと無く果物から種を取り出し、植物成長促進剤を使って果物の木を育成した。

この密林の中でも一際大きく育ったその木には、神々が愛する果物がたわわに実ってので当然のようにしっかりと収穫する。


「キリがないね~」


思った通り収穫する尻から次々と神々が愛する果物は実っていく。一本だけでは心許ないかとも思ったが、これだけ次々と実るのなら大丈夫だろうと判断できる程だった。


「食べても良いのですよね?」


テンダーがロザリアンヌの顔色を窺うように聞いてくるので、勿論よと返事をするとナイフで器用に殻を割り中身を取り出す。


すると辺りに芳醇な香りが漂いだし、ロザリアンヌだけでなくキラルも我慢ができなくなる。

同じく中身を取り出しツヤツヤと輝く真っ白な果肉を口に含むと、滑らかな舌触りと共に芳醇な香りと上品な甘さがみずみずしい果汁となって口の中いっぱいに広がった。


「ん、まぁ~」


「何これすっごく美味しいね~」


「レヴィアスも食べてみなよ。ホント美味しいよ」


ロザリアンヌは半分に割ってあった片方をレヴィアスに手渡すと、レヴィアスはそれを素直に受け取りナイフで器用に取り出し口に含む。


「・・・」


「レヴィアスってば言葉も出ない程感動してるんだね」


キラルがレヴィアスの顔を覗き込むように反応を伺うが、返事が無いところを見るとその通りだったのだろう。

そうして一頻り神々が愛する果物を堪能したロザリアンヌ達はダンジョン神に捧げるべく深層を目指した。


今回はマジックポーチに全部は収納せず、捧げる為の一つを手に持ったままの移動だ。またいきなり襲いかかられてはたまったものではない。


深層へと移動し途中に出てくる虎のような魔物は襲いかかってくれば相手にしたが、なるべく無視してとにかく祭壇を探した。


そして見つける石でできた祭壇の上に神々が愛する果物を丁寧に置き手を合わせると、目の前に現れたのは苔玉神と姿が殆ど同じただちょっと色が違う桃みたいな神様だった。

桃に細長い手足がつき、つぶらな二重の瞳にほんのり赤い頬は女性かと思えた。


「ご苦労であった。願いがあれば申してみよ」


「えっ、願いを聞いて貰えるの?」


「その為にこの祭壇にコレを捧げたのでは無いのか?」


「知らなかった、願いを聞いて貰えるのか・・・。苔玉神はそんなこと言ってなかったよ」


「苔玉神?」


「ああ、別のダンジョンで出会った神様」


「誰のことを言っているか分からぬが、願いを叶えられるかどうかは願いの内容次第だ。申せ」


願いと聞かれロザリアンヌは一瞬だけ考えたが、思い浮かんだのはさっき育てた神が愛する果物の木の事だった。


「この神々が愛する果物の木を根付かせたのだけど、アレをダンジョンの一部と認めてください」


「根付かせた?!」


「はい」


「・・・」


ロザリアンヌは急に黙り込んでしまった桃神の反応を気にしながら返事を待った。


「ダンジョンに取り込んだ。願いは叶えた。一応魔物に荒らされないようにしておいたので安心するが良い。ではさらばじゃ」


桃神様はいともあっけなく姿を消したので少々拍子抜けしたが、ロザリアンヌ達も傍に現れた転移紋を使いダンジョン入り口へと戻ったのだった。



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