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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
3章 雪と夜の国

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ロザリアンヌはキラルとテンダーと合流すると要塞監獄へと戻り、約束通りダンジョンの説明をする為にペナパルポをダンジョンへと連れてきた。


「何だここは・・・」


「ここがダンジョンよ」


「信じられない。天国のようだ・・・・・・」


そう言ったまま絶句し立ち尽くすペナパルポに、ダンジョンがどんな所かこのダンジョンでどんな物が入手可能かを詳しく説明した。

そして入手してあった日用雑貨の種をすべて植えて木へと成長させて見せた。


「このダンジョンの中を開墾して畑を作るのも可能なの。でもそうするとここに出る魔物が強くなってしまうから兼ね合いが難しいわね」


ペナパルポはダンジョンに畑が作れると聞いてもイマイチピンとは来ていないようだった。


「約束よ、転送魔法を教えてくれるよね」


ロザリアンヌはダンジョンに来てからずっと反応の薄いペナパルポに迫る。


「ああ、そうだな。その前に奴らをみんなここへ連れてきていいか。奴らにもこの景色を見せここで手に入るというそれらで奴らの腹を満たしてやりたい」


ペナパルポはそう言って涙を流し始めた。

勿論ロザリアンヌに反対する理由も無く、今まで寒さと飢えと闘い続けていたペナパルポや要塞監獄の人達の苦労を推し量り胸を熱くした。


「キラル、テンダー、監獄要塞に居る人達の食べる物の準備をお願い。このダンジョンで入手可能な物を使った料理よ。今はそれ以外は余計な情報になるから注意してね」


ロザリアンヌはシェフに任命されたキラルとその弟子のテンダーが、張り切りすぎて豪華な食事を用意しないように注意する。


要塞監獄の人達はこのダンジョンにある食材でしかしばらくは生活できないのに、それ以外の次にいつ食べられるか分からない豪華な食事を教え、失望させるのを避けたかったのだ。

知識はとても必要だと思うが、きっと今必要な知識はそれじゃ無いとロザリアンヌは咄嗟に思ったのだ。


「りょうか~い」


「お任せください!」


そうしてロザリアンヌとレヴィアスとで手分けをして要塞監獄の人々をダンジョンへと転移させる。

みんな一様に信じられないといった表情で現実を受け止められずにいた人々も、キラルとテンダーが用意したバーベキューとスープの匂いに我に返り喜び合った。

そしてみんなが美味しそうに食べる食事風景に涙を流し続けるペナパルポに思わずロザリアンヌも貰い泣きしてしまう。


「本当に夢のようだ」


「夢じゃ無いわよ。でも問題はこれから先よ」


今回ロザリアンヌは介入しすぎるのは止めようと決めていた。ロザリアンヌにできるのはせいぜい手助け程度の事だと。


この大陸のすべてのダンジョンを踏破したら立ち去るだけのロザリアンヌが関わるには責任が重すぎると思えたからだ。


このダンジョンの存在をこれほど喜んでいる彼らがこれからどんな選択をするのかは、これからもこの地で生活する彼らに任せるしかないのだと。


「ここを知ってしまった以上もうあの監獄へは戻れない」


(やっぱりそうなるよね)


「それじゃまずは家を建てなくちゃならないわね」


「何故だ? この気候なら野宿で十分だろう。毎日魔物を狩り食事もできるなら他に必要なことなど無い」


「それじゃ全員探検家になるって事?」


「探検家とは何だ? 俺たちは普通に生活していくだけだ」


ベナパルポとの噛み合わない会話にロザリアンヌは頭が痛くなる。

要塞監獄から連れてきた人々のことはキラルとテンダーに任せ、ロザリアンヌとレヴィアスはとことんペナパルポと話をする事に決めた。


そうして知った事実はロザリアンヌにはとても凄絶なものだった。

この極寒の地で生きていく為だと言われると何も言えなくなるが、与えられた役目を果たすだけの生活は幸せなのだろうかとロザリアンヌは考える。


統制され秘匿される情報の中で個人の選択や自由などを与えられる事も無い。ただ統率者の言う事を信じ聞くだけの毎日。しかしそれでも街で暮らせる者は幸せなのだとペナパルポは言う。


そして余所から訪れる者があると身ぐるみ剥がされ要塞監獄へ送られるのが当然と聞いて、ロザリアンヌは間違っても街に寄るのは止めようと決めた。


なんでそんな事がと疑問に思うが、そもそも余所の街への移動は許されておらず、もし訪れる者があるならそれは役目を果たさず逃げ出した者だと決めつけられるからだそうだ。


「それにしても統制された情報の中でペナパルポさんはよくそれが間違いだって気づけましたね」


「俺に教えてくれた人が居たからな」


「その人はどうして一緒じゃ無いの?」


「見せしめに公開処刑された。だから俺は自ら監獄送りになる事を選んだんだ。公開処刑をされるくらいなら少しでも多くの人を助けられる可能性に賭けたと言ってもいい」


「・・・・・・」


ロザリアンヌはなんと言っていいのか分からなくなり、ロザリアンヌ自身それほどの覚悟を持って何かに挑んだ事があるのだろうかと自分に問いかける。


答えは勿論否だ。今までそんな覚悟など必要ない人生しか送っていない。いかに今の自分が幸せなのかと思い知らされた気分だった。

そして今まで自分が恵まれ過ぎていて、本当の苦労をよく理解できていなかったと思い知る。


「魔物を狩るにはまずは武器ね。それに野宿するにしてもテントや布団くらいは必要よ。持続可能な方法で用意できるように一緒に考えましょう」


ロザリアンヌはペナパルポにそう提案する事しかできなかった。



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