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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
3章 雪と夜の国

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ロザリアンヌとレヴィアスはダンジョンの隅々までくまなく調査を続けながら最深部を目指した。

いつもように宝箱を探し素材採取魔物討伐をしながらサクサクッと進んではいたが、気配探知だけを当てにせずいつも以上に念入りに目視確認をして行った。


するとフッと何かが体に当たった気がした。それはとても軽く柔らかく、まるでカーテンを開けずに潜った時のような感じだった。


そして気づくと針葉樹林はそのままなのに目の前の木々は少し太く高くなっていて、箱根や日光の杉並木程ではないが重厚感というか荘厳な雰囲気が広がった。


そしてその木々の間をキノコがトコトコと暢気に歩いている。そう、長い手足が生えたシメジのようなキノコが歩いていたのだ。

メイアンのキノコとはまた違った姿で、メイアンのキノコは体中がキノコでそこに手足が付いていたが、ここのキノコは頭部がキノコって感じだった。


ロザリアンヌは攻撃を受けるのはテンダーとキラルに任せることにして即座に倒す。そして次に見つけたキノコはベニテングダケ風で、いかにも毒々しい色で斑点のあるキノコだった。


ロザリアンヌは変わらずに魔法でサクサクッと倒して進むと突然そのキノコに出会う。エリンギにレースのドレスを着せたようなキノコで、ロザリアンヌは思わず立ち止まり可愛いと呟いてしまう。


しかしお互い目が合うと何とそのキノコはくるりと回れ右をして全速力で走り出した。

それもものすごい早さで。多分前に出会った事のあるやたらと逃げ足の速かったスライム以上の早さだ。


「何で?」


ロザリアンヌは思いもしなかったキノコの行動に一瞬呆気にとられ固まった。

しかし逃げられると本能的に追いたくなるもので、ロザリアンヌは咄嗟に駆け出していた。


だが、キノコは思った以上の速さで走り、本気で追いかけるロザリアンヌでも追いつきそうで追いつけずにいる。

なぜならキノコは器用に優雅に木々を避けるが、ロザリアンヌは木々が邪魔で全速力を出せないでいたからだ。


(なんか悔しい!)


ロザリアンヌは立ち止まりこの際邪魔な木々をすべて切り倒してしまおうかと考えた時だった。木がまるでロザリアンヌの視界を邪魔するように動いたのに気づいた。


さらによく見ていると全部ではないが、キノコが逃げやすいように動いている木があって、キノコの方もそんな動く木を明らかに利用しているのが分かる。

落ち着いて気配探知で探ると確かに所々の木が魔物の気配になっていた。


「レヴィアス、キノコをお願い!」


ロザリアンヌは邪魔された恨みを晴らすかのように木の魔物に魔法を撃ち込んで行く。風の刃で切り倒し雷を打ち込み、キノコを追うようにして手当たり次第に次々と魔法を連射する。


しかし先回りできないどころかなかなか追いつけないのをもどかしく感じていると、レヴィアスの魔力銃弾が漸くキノコに命中した。


キノコも真っ直ぐに走って逃げればいいのに、木を利用して逃げようとするから結局堂々巡りになってしまったのだろう。ロザリアンヌが木の魔物を倒し風通しが良くなった分逃げ場を無くし、レヴィアスの魔力銃弾が命中しやすくなったのだ。


「こんなに手こずったのは久しぶりだな」


「ホントに! あんなに速く走るキノコなんて想像もできないよ」


ロザリアンヌもレヴィアスもまさかキノコの魔物程度でこんなに苦戦するとは考えてもいなかった。

そもそもこんなに早いスピードで必死になって逃げる魔物など今までいなかった。


しかし魔法が当たれば一撃で沈んだので、多分物理的にもそう強くはない。ただそのスピードと木の魔物との連携が厄介なだけだった。

でも次はもっと上手くやれるとロザリアンヌは考えていた。逃げ始める前に魔法を撃ち込めればいいのだと。


そしてあのレースを纏ったキノコはきっとレア種だろうと想像し、ドロップ品に期待した。

するとそこにあったのは赤い魔石とマンゴーのような色と形をした何かだった。鑑定してみると『神々が愛するキノコ』とあった。その香りと味は極上らしい。


この大陸というかこの世界に神が居るのかという疑問より、そんなにも貴重で美味しいキノコなのかと少し興奮した。

そして焼きキノコにバターソテーに土瓶蒸しに茶碗蒸しにシチューやパスタもいいなと、あれこれと脳内で料理しては味を想像する。


「このキノコ、レア種なんだよね?」


「何故そんな事を聞く?」


「キラルとテンダーに教えたらどんな事になるのかと思って・・・」


きっと満足いくまでこの森を探し回り狩りまくる事になるだろう。時間も忘れて。


「育ててみるのはどうだ?」


「えっ!?」


「このダンジョンでなら可能なんじゃないのか」


目から鱗だった。確かに前世では食用キノコの殆どは栽培されたものだ。ロザリアンヌも椎茸の原木で挑戦したことがある。


「試してみる価値はあるね」


今すぐ味わいたい気持ちを抑え、食べるのは栽培に成功してからだとロザリアンヌはそのマンゴーのようなキノコをそっとマジックポーチに収納した。



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