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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
3章 雪と夜の国

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ニジマス風の魚はとても美味しかった。

ロザリアンヌは前世では海沿いの町で育ったので、海の魚は毎日のように食べていたが、川魚は鰻くらいしか食べたことがなく、初めて食べた鰻はとても泥臭い匂いがして好きになれなかった思い出が強かった。


「美味しい~」


ロザリアンヌはキラルの言葉に川辺で新鮮な魚を炭で焼いたから余計に美味しく感じるのだろと思っていた。

そして次に焼き上がった魚をレヴィアスと食べ始めて驚いた。


「ホント、とっても美味しい!」


ここの魚は強い匂いもなく、淡泊というよりさっぱりとした味わいと甘さを含んだ旨味を感じさせた。


「「おかわり! 」ある? 」


「自分で焼いて!」


キラルとテンダーの要求にロザリアンヌはぞんざいに答えたが、思い直し焚き火の準備をし魚を串刺しにしていく。

七輪擬きで二匹ずつ焼いていたのでは間に合わないだろうと判断したのだ。主にフードファイターのテンダーが。


その判断は間違いではなかったようで、結局ロザリアンヌは二匹、レヴィアスは一匹、キラルは三匹で済ませたのに、なんとテンダーは三十一匹も食べお腹をパンパンにさせていた。


「もうお腹いっぱいです!」


「そりゃぁそれだけ食べれば当然だよね」


「僕、他の料理を作ろうかって言わなくて正解だったね」


「えっ、他にも何か作るんですか!?」


「この魚はきっと何か他の料理にも使えそうだし、ドロップ品の鶏肉の味も気になるよね」


「確かに・・・」


「食べたいです! 是非作ってください!!」


「それ以上食べたらお腹がはち切れるよ。また夜にでも考えよう」


「えぇーーー・・・」


ロザリアンヌが七輪擬きを回収し焚き火後の始末をしている間も、テンダーはキラルにどんな料理を作るのかと追い回していた。

テンダーはすでに食べることが生きがいになったのじゃないかと思うほどの執念だった。


「僕がここの食材を使って今までにないとっても美味しい料理をテンダーに振る舞ったらテンダーは僕を何と呼んでくれる?」


しつこく絡むテンダーに痺れを切らしたというより、キラルはどこか真剣さを滲ませ突き刺すようにテンダーに尋ねた。


多分だがキラルはテンダーがロザリアンヌを師匠と認めロザリー様と呼び、レヴィアスを闇魔法の一件以来リリスとダリアが呼ぶのと同じく先生と呼ぶようになったのに、キラルだけはいまだにキラルと呼び捨てなのが面白くないのだろう。


「・・・・・・」


「テンダーってどこか僕を軽く見てるよね。別に僕はそれでもかまわないんだけど、ちょっと面白くないって思うのは仕方ないだろ。それに僕は基本ロザリーの頼みしか聞かないよ。テンダーもそうなんでしょう?」


キラルは自分の心の中にあったわだかまりを吐き出したようだった。


「ぐぬぬ・・・」


「ぷっ、ははははぁ~」


ロザリアンヌはリアルぐぬぬを聞いて思わず吹き出してしまった。


「ごめんごめん。多分ね、テンダーはキラルのその見た目で判断しちゃうんだよ。キラルをただの子供だと思っていたいんじゃない。だから一度キラルの本来の姿を披露してあげてはどう」


突然吹き出したロザリアンヌを不審顔で見るキラルとテンダーに、ロザリアンヌの考えを話して聞かせる。


テンダーは森の里で若手を長年育てていた立場から、どうしても子供の姿のキラルを自分より上と認めることができないのだろうと常々感じていた。

それでもキラルの実力を知れば解決するだろうと思っていたのだが、テンダーに認める気がないのだから始めから無理な話だったのだ。


「本来の姿ですか?」


「そうよ。キラルはね私の事を考えて敢えて子供の姿でいてくれてるの。本来の精霊の姿にも成人した人間体の姿にもなれるけど両方確認してみる? 言っておくけどテンダーじゃ絶対に敵わないって悟ることになるわよ」


ロザリアンヌが言い終わると同時にキラルは成人した人間対へと変貌しテンダーに威圧を放つ。

キラルの威圧はロザリアンヌも初めてだったので正直驚いたが、テンダーは驚きより恐れを感じているようで尻餅をつき震えだしている。


そして次にゆっくりと精霊体へと姿を変えるとそのまま子供の姿のキラルへと戻り、ニッコリと余裕を窺わせるいつものキラキラ笑顔を浮かべた。


「どう。納得してくれた?」


今回のキラルの笑顔にはテンダーにも癒やしの効果があったのか、テンダーはすっかり元気を取り戻しスッキリした表情を浮かべている。


「すみませんでしたー!」


テンダーはいとも簡単にキラルにひれ伏し謝りだす。


「分かってくれればいいんだ」


「でも何でまた子供の姿に?」


「僕はロザリーを癒やすのを最優先としているからさ」


「なるほど。ではキラル様、これからはキラル様をシェフとお呼びしてもいいでしょうか? 是非私を弟子にしてください!」


「なんでよ!?」


思わずツッコんだのはロザリアンヌだった。


そもそもテンダーはシェフなんて呼び方どこで覚えたのか。それにその呼び名じゃキラルに調理意外に価値がないみたいに聞こえちゃうじゃないかと心配し、キラルの顔をそっと窺った。


「どうして僕がシェフなの?」


「シェフの料理にはいつも感動させられます。私もシェフのように料理で感動や癒やしを与えられる料理人になりたいと思います!」


驚きだった。食べることにしか興味がないと思っていたテンダーは料理にも目覚めたようだ。


「料理で癒やしと感動か・・・。それいいね。僕と新たな感動の料理を開発していこう」


ロザリアンヌはキラルが何故か納得し、テンダーとのわだかまりも払拭できたのだと感じ嬉しかった。

しかし納得いかないところも若干ある。


確かに最近のキラルはロザリアンヌより正確に一度食べた物の味を再現させ料理を完璧に作り上げるし、ロザリアンヌの曖昧な説明の前世での記憶にある調理も再現させてしまう才能を見せ始めている。


しかしそれもこれもロザリアンヌが錬成した錬成鍋や錬成オーブンがあってのことだ。それなのにシェフを名乗ってそれで本当にいいのかと疑問が湧く。

まぁ、もっとも、同じ錬成鍋を使いながら同じ味を出せない時点でロザリアンヌはキラルに負けていると言っても間違いではないのだが・・・。


そう、今はそんなことが問題なんじゃない、やはり仲間内でギスギスするのは避けたい。なのでキラルもテンダーもそれで納得するのなら別にいいかとロザリアンヌも認めることにした。


「もう喧嘩するのもへんに張り合うのも止めてよね」


「当然じゃないか」「当然です! 」


二人の息もピッタリと合っている様子にロザリアンヌは心から安堵していた。



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