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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
3章 雪と夜の国

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この要塞のような街は大陸中から送られた犯罪者ばかりのいわば監獄のような場所だった。

犯罪者と言っても極悪非道な者から税を払えずに廃棄されるように送られて来た者といろいろで、その無法地帯となり得るここを牛耳っている牢名主的存在がこの偉そうな男ペナパルポだと自慢気に説明された。


そもそもこの大陸は一年中が夜で雪が降り続く気候の為食材や資材に乏しく、世の中に貢献できない者には人権を与えられずその上税を払えないとなると犯罪者とされるらしい。

それは子供であっても例外ではなく、親の庇護を受けられない子供や貧しさから捨てられた子供もだそうだ。


ロザリアンヌはペナパルポの話を聞き信じられない思いでいっぱいだった。

まぁ、その国独自の考えや風習など色々あるだろうが、それでも憤りを感じずにはいられなかった。


「ここの規律は俺が守っている。俺が法律だ」


「規律でも法律でもいいけど、どうやってここの人達を養ってるの?」


ロザリアンヌは国から捨てられ国の保護も援助もない人々が、食材も資材もない極寒の地でどうやって生き延びているのか不思議だった。


「その疑問は当然だな。以前はこの地に送られることは当然死を意味していた。今は俺のお陰で少しは改善できているが完全ではない。そこが問題だ」


「私が聞きたいのはそういう事じゃないよ」


ロザリアンヌは微妙に食い違う話の内容にイラッとしながら、どうもペナパルポは自分の自慢がしたいのだと理解し始めていた。


「俺はこの地に自分から望んできたのだ。何故かって。それはこの地に送られた者たちを助ける為にだ」


「・・・・・・」


ロザリアンヌと話をする気がないのか、それとも自分の話したいことを話し終わるまで無視する気なのか、ペナパルポは話を変える気はないらしい。


(仕方ないもうちょっとだけ聞いてやるか・・・)


ロザリアンヌは話をするのを諦め溜息を吐いた。


「それは子供の頃から天才と称されたこの俺にしかできない使命だと思っている」


「ふ~ん」


「お前は俺の言うことを信じてないな!」


ロザリアンヌの気のない返事に不満を持ったのか、ペナパルポは怒鳴るように怒りを露わにする。


「信じてない訳じゃなくて、どんな天才なのかちょっと考えてたんだよ」


「そ、そうか。そんなに知りたいなら教えてやらんでもない」


今怒りだした筈のペナパルポが途端に顔を綻ばせるのを見て、単純というかなんというか感情の忙しい人だと少しばかり呆れていた。


そしてその後ペナパルポが語った話を要約すると、彼は子供の頃から頭の回転が速く一つ聞くと三つの疑問を持ち誰彼かまわず何故どうして攻撃を繰り返していたそうだ。

そして魔法使いが多い中で誰も考えつかないような魔法を次々と編み出していく。それは魔物と戦う魔法ではなく生活を豊かに便利にする魔法だった。


しかし大人になるにつれ自分を利用しようとする者たちとの軋轢に辟易し、だんだんとこの国のあり方に疑問を持っていく。特に弱く力のないものを排除しようとする犯罪者制度。

そして自分がすべきことはこの地に送られた者たちを守り助ける事なのだと考えるようになり、自ら犯罪者となりこの地に送られることを選んだのだそうだ。


「それでどんな犯罪を犯したの?」


「奴らは少々の犯罪は揉み消す事で俺を自分の手駒にしようとしてきたからな、食糧倉庫に忍び込みこの地へと転送してやった。さすがに食料の窃盗となれば重罪だ。奴らでも揉み消すこともできず、こうして俺の考え通りになった訳だ」


「それって折角食料を送っても奪い返されたんじゃないの?」


「奴らは俺が転送魔法を使えるとは知らないからな。食料は燃やした事にしたから大丈夫だった」


「転送魔法って私をここへ連れてきたあの魔方陣の事よね?」


「そうだ。転送魔法を使えると国で貴族扱いの好待遇を受けられるんだぞ。俺はそれをあえて隠していたがな」


ペナパルポはどうだ凄いだろうとばかりに胸を張る。


「好待遇を蹴ってでもここで王のように君臨したかったって事だね」


「違うわ! 善人面して搾取する側に甘んじたくはなかったんだ。利用されるのではなくもっと建設的に魔法を使い人々を助けたいと思ったんだ。悪いか」


ロザリアンヌはペナパルポの性格に少々難はあるが、意外にもちゃんとした考えを持つ人なのだと少し感心していた。


「ところでさ、ここで私に何をさせる気だったのか聞いてもいい?」


ロザリアンヌはペナパルポの独り語りのような話を聞いていて、返事次第でこれから先本当に協力するかどうか決めようと思っていた。


ペナパルポはけして悪い人ではないのだろうが、いかんせん出会い方からどうも信用しきれないと感じていたからだ。

騙されているとは思いたくはないが、この先協力し合うのだとしたらちゃんと確認しておきたい事だった。


「そんなの子守に決まってるだろうが。ここの子供達はどうも男には懐かないヤツが多くて困る。きっと腹が減ってるせいだとは思うが、子供に泣かれるのはさすがに辛い」


ペナパルポの口から発せられた答えはロザリアンヌには意外すぎるものだった。

しかしその風貌を見れば怖がられるのだろうとなんとなく納得できた。

そして子供を大事にできる人なら信用できると素直に思えた。


「それじゃぁまずはここの人たちが飢えずに済む方法からだね」


どこのどんな国だろうと、やはり子供が飢えていると聞くと放ってはおけなくなる。

ロザリアンヌは自動翻訳機の事より食糧問題を優先すべきだと決意を持って自然とそう答えていた。


(まぁ、テンダーには少し不便をかけるけどきっと大丈夫だろう。テンダーだしね)



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