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リリーとダリアの双子にちょくちょく帰る事を約束し、ロザリアンヌ達一行は雪の大陸の封印の祠へと転移で戻った。
改めてユーリを冒険の旅に同行させる件はきっぱり断ると、日々の活動報告を約束させられ交換日誌じゃあるまいにとロザリアンヌは少し頭を抱えたが、それでも報告だけでいいならと気楽に考えることにして了承した。
「それでこれからどうするの?」
キラルはどこのダンジョンから攻略していくのかと聞いたのだろうとロザリアンヌは判断し答える。
「やっぱり近場のダンジョンからでいいんじゃないかな」
「あの要塞のような場所には立ち寄らないのか?」
レヴィアスはこの大陸に着いてすぐに見かけた団地のような場所のことを言っているのだろう。
「そうだよ、どこか立ち寄れる街も見ておいた方がいいんじゃないの」
「街に寄るのは私も勉強になって嬉しいです!」
テンダーの場合は本当に勉強になっているかどうかは疑わしいところだが、ロザリアンヌも初の雪と夜の大陸の街には興味もあった。
それにこの大陸のダンジョンの数は九つと分かっているので、数から言っても今さら攻略を急ぐ必要も無いと思われた。
「じゃぁあの団地みたいな要塞の街へ寄ってからダンジョンに行こうか」
ロザリアンヌ達はそう決めると街の近くまで転移で移動し、雪の積もった中を歩くようにして飛んで移動していく。
「近くで見ると結構大きいね~」
「大樹ほどではありませんが圧倒されます!」
離れた場所から見た時よりも近づくにつれ圧倒されるその要塞(?)にキラルもテンダーも興奮気味だった。
とても大きな岩山の山肌をかなり広い範囲で平らに削り、規則的な間隔で窓のような穴を開けてあるその作りを見てロザリアンヌは感動していた。
「これって絶対に魔法が使われてるよね。魔法でこんな事もできるなんてスゴいよね」
「そうだな」
人間の手では絶対に無理だろう事は推測できる。前世のように便利な機材があったとしても、これだけのことをするには大変な作業となるだろう。ロザリアンヌはいったいどんな魔法でどうやってと真剣に考え始める。
「でもどこからどうやって入るんだろう?」
明かり取りのような窓は沢山あるがあるが、けして人が通れるような大きさではなく、出入りできるような扉やそれらしい穴はどこにも見当たらない。
「隠し扉でもあるんですかねぇ」
テンダーは岩肌をペタペタと扉を探すように触り出す。
「中に向かって声をかけたら開けてくれるとか?」
キラルは暢気な声で「おーい」「こんにちは」「お願いします~」などと声をかけ始める。
レヴィアスは何かを考えているのか腕を組んだ体勢で固まっていた。
「まるで人の出入りを拒んでいるようだな」
「本当にこれが街なのですか?」
「どう考えてもちょっと変だね」
レヴィアス、テンダー、キラルが訝しみ始めた中、ロザリアンヌだけは思考の渦の中にいた。
(でもピラミッドも人の手によって作られてるんだし絶対に無理って事でもないのかな・・・。う~ん、魔法だとしたら土魔法の応用だと思うけど・・・・・・)
岩を溶かして形成し直すのだとしたらどうやって溶かすのだろうとか、土を掘り起こす要領で堅い岩も自在に形成できるのかなど、考えつく限りあれこれと思い浮かべていた。
「錬金術で土をレンガやブロックに形成できるなら土や砂に戻すのも可能なのかな?」
一度錬成した物を元の素材に戻すことが可能だとしたら、貴重な素材を使っての錬成も怖くなくなるし錬金の練習ももっとはかどるだろうと考えていた。
「ロザリーってば、それでどうするのか聞いてるのに!」
キラルに呼び戻されロザリアンヌは「あっ、はいはい」と曖昧な返事をして一歩足を踏み出した時だった。
足下に何やら大きな花のような形の魔方陣が展開される。
「えっ!」
一瞬思考が停止している間に展開された魔方陣は、花びらが閉じるようにロザリアンヌだけを包み込み消えたのだった。




