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ロザリアンヌがポーションを錬成すると聖女の魔力が作用するのかどうしても効果が高くなってしまうので、ソフィアとテンダーに協力を仰ぎ植物成長促進剤を錬成してもらった。
どのみち商品化する為にはレシピを売り、他の錬金術師に錬成させる事になるのでソフィアとテンダーの作った物の効果も知っておきたかったというのもある。
そうして試行錯誤を繰り返し、成長速度は少し早め程度だけれど高品質の花や作物が収穫できる植物成長促進剤ポーションのレシピを完成させた。
植物成長促進剤ポーションはある程度までの水量なら薄めてもその効果はあまり変わらないという結果が先に出ていたので、噴霧器に似た散水機も合わせて開発し商品化する事になった。
所謂一つの肥料みたいなものだったが、この世界にはまだ肥料に関しての知識や研究は進んでいなかったので農業界に革命を起こしたと言えた。
それにこの植物成長促進剤ポーションの本当に凄いところは土壌の活性化までしてしまうので、畑を休ませたり土を入れ替える必要がないという事と、そしてどんな植物農作物にも効果があるというところだった。
「これは凄いね。これを使って薬草畑を作ったらポーションの効果も高くなりそうだ」
「それはいい考えです! 私の里に是非薬草畑を作って欲しいです」
ソフィアもテンダーも植物成長促進剤ポーションの効果に興奮していた。
「薬草畑は自分たちで作れ。コレのレシピはいつでも売ってやるぞ」
「本当ですか~!!」
すでにテンダーは植物成長促進剤ポーションを作りそのレシピを知っているはずなのに、レヴィアスに抱きつく勢いで迫っている。
「それより師匠。私こんなポーションも作ってみたんですが誰か試してくれる方はいませんかね?」
ロザリアンヌはソフィアとテンダーが植物成長促進剤ポーションを錬成している間、自分でも改良に改良を重ね増毛剤を完成させていた。
かなり効果を抑えたので多分ホラーになる事はないと思うが、薄毛にちゃんとした効果があるかどうかは実際に確認できていなかった。
「どんな効果のあるポーションなんだい?」
「薄毛に悩む人の髪を復活させるポーションです」
「なんだって!!」
ロザリアンヌの話を聞いたソフィアは目を剥き体を乗り出し、普段のソフィアからは想像もできない大声を出した。
ソフィアの異常なほどのその驚き方にロザリアンヌの方が驚き呆気にとられる。
「師匠落ち着いてください。いったいどうしたんですか?」
「まったくお前は。はぁ・・・」
ソフィアは深く溜息を吐くとじっとロザリアンヌの目を覗き込み、自分をも落ち着かせるようにゆっくりと口を開いた。
「このポーションは実は私もさる方から頼まれてずっと研究していたのだが、いまだに完成できずにいたものだ。私の長年の研究をロザリーお前はあっけなく成し遂げたんだよ。それが驚かずにいられるものかね。ああ、試したいという方は居るよ。長年待たせているんだ。すぐにでもその効果のほどを確認してくるから楽しみにしているといい。それじゃぁコレは貰っていくよ」
ソフィアは言いたい事だけを言うと増毛剤ポーションを握りしめ、あっという間に店を出て行ってしまった。
「・・・・・・」
「ソフィアに喜んで貰えて良かったな」
レヴィアスが呆気にとられ固まっていたロザリアンヌの頭をポンポンと叩くと、漸く我に返ったロザリアンヌはハハハと乾いた笑いを漏らした。
ソフィアは何でもできて偉大な錬金術師だと思っていたのに、そんなソフィアでも今でも研究を続けていたのだと知り、錬金術に終わりはないのだと知った。
そしてソフィアでもたどり着けなかった増毛剤ポーションを作れた事で、錬金術師としてまた少し成長できたような気がして素直に嬉しかった。
(やっぱり増毛剤の需要はあったんだね。これで少しは誰かに喜んで貰えるんだ)
ロザリアンヌはそう思うと何か大きな事を成し遂げたような気分になれた。
そうして結果を早く知りたい気持ちを抑えソワソワと待つロザリアンヌを余所に、ソフィアは夜遅くなってから戻ってきた。
飛び出すように迎えに出たロザリアンヌを見たソフィアはご機嫌な様子でロザリアンヌに抱きついた。
「ロザリー、あれは凄い効果だったぞ。何時間も待たずに若い頃の頭髪に戻り、当の本人も大喜びしておった。あのまま髪が伸び続けるのかと心配にもなったが、ある程度の長さになるとそのまま落ち着いた。あとはあの状態がいったいどのくらい持つかだが、明日もう一度様子を見に行く事になっている。でもあの様子ならきっと大丈夫だろう」
ロザリアンヌは増毛剤ポーションの効果を聞きホッと胸を撫で下ろした。
そしてソフィアの言うとおり効果がどのくらい持つかの確認は必要だと思いながら、もしかしたらまだまだ改良の余地はあるのかと考えていた。




