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祠にあったすべての扉の先を攻略し八つのダンジョンを解放するのに思った以上に時間がかかっていた。
八つそれぞれの聖域がそれぞれに特徴があり広さもまちまちだったことと、それぞれの聖獣の出す課題も様々だったからだ。
薄紫の扉の先は朝日がとても眩しい聖域で、大海原を泳ぐシャチよりも大きなイルカのような聖獣との追いかけっこはなかなかに楽しめた。
しかし水中を高速で移動できる方法も考えなくてはとロザリアンヌは思い知らされた。
黒い扉の先は蜃気楼が経つ砂漠が広がる聖域で、フェニックスと呼ばれる聖獣の火の鳥は広大な砂漠の中から卵を探せという難解な課題を出してきた。
何しろその卵は気配察知では探知できなかった上に、もしかしたら砂に埋もれているかもしれなかったからだ。
しかしロザリアンヌ達は諦めず探し回りながら邪魔な魔物を倒していたら、ジャイアントワームという魔物のドロップ品と一緒に出てきた時には思わず叫ばずにはいられなかった。
赤い扉の先はとても神秘的な湖がある聖域で、ユニコーンという角がある白い馬の聖獣が自分に触れてみろという課題を出してきた。
追いかけっこかと思っていたら短距離とは言え瞬間転移を使い移動しどこに現れるかも予測できずこれもちょっとだけ厄介な課題ではあった。
しかしデバフが入ってしまえば動けなくなると気づいてからはデバフ魔法を罠のようにそこら中に待機させ達成させた。
オレンジ色の扉の先は黄昏時の山岳地帯の聖域で、空を飛ぶ聖獣青龍が戦いを挑んできた。
しかしすでに全員が飛べるロザリアンヌ達には足場の悪さなど関係なくやはりフルボッコだった。
黄色い扉の先はスーパームーンかという感じの桜色の大きな月が特徴的な夜の聖域で、フクロウのような白い鳥の聖獣に知識戦を挑まれた。
しかしなぞなぞのようなその問答にレヴィアスだけでなく意外にもテンダーも活躍しロザリアンヌを驚かせた。
そして最後緑の扉の先は荒野と岩山が続く聖域で、山よりも大きな亀の聖獣がぐっすりと眠りこけていたのでまずは起こすのに一苦労した。
何しろ山というよりちょっとした島のような大きさの亀にはどんな物理攻撃もなかなか利かず、以前ダンジョンで同じような魔物を倒した経験を生かそうとしても魔法は悉く弾かれるように無効化されてしまう。
仕方なく途中で作戦タイムがてら休憩を設け料理を作っていたらその匂いで目を覚ました。
そして聖獣が起きてくれた事で封印は簡単に解除されたのでめでたしめでたしではあったが、戦闘となった場合倒せる気がしないのはロザリアンヌ達の大きな課題となった。
それからどの聖域も貴重な素材が多く、ロザリアンヌとテンダーのコンビが採取に時間をかけた事もあり、全部を終わらせてみるとかなりの時間が経過していた。
「次はダンジョン攻略だね」
「でもその前に食材も乏しくなってきたし街も散策してみたいな」
「私も街の散策は是非お願いしたいところです」
「え~っ、ロザリーが街の散策するなら僕もそっちの方がいいよ!」
「私はそろそろ新しい情報を仕入れたい。少し別行動をしてもいいだろうか」
「じゃあ、合流できる街をこの辺で探す? それとも一度メイアンにでも戻る?」
多分だがレヴィアスはあちこちの街を回る気でいるのだろう。ロザリアンヌもなんだかんだいって調味料など食材が豊富なメイアンで買い物をしたいと考えていた。
「それじゃ用事が済んだらメイアンで合流しよう」
「じゃあそれまで自由行動で冒険はお休みだね!」
メイアンと聞いてキラルは何故か目を輝かせている。多分すでにあちこち食べ歩く予定を立てたのだろう。
「私も久しぶりに師匠に会って新しいポーションのレシピでも相談してみるよ」
テンダーのお陰で新たな薬効のある素材を色々と手に入れているので、新作ポーションのレシピをあれこれ試してみたいと考えていた。
「私はどうしたらいいのでしょう?」
テンダーは全員が別行動をすると考えたのか不安げに聞いてくる。
「そうだ、レヴィアスの部屋を一時的にテンダーに貸してもいい?」
ロザリアンヌは師匠の店に滞在する気だったのもありレヴィアスに了解を求めた。
店は狭くテンダーを泊める余裕がないので断られたら宿を取るしかないと考えていた。
「ああ、かまわない」
「じゃぁレヴィアスが戻るまでは使わせて貰うね。戻ったらみんなでホテルに泊ろう」
「あの豪華な食事が食べられる所?」
キラルはさらに目を輝かせる。
「そうだ、どうせなら師匠も誘ってまたあそこでご飯食べようか」
「賛成~」
こうしてロザリアンヌ達は一度メイアンに戻る事を決めたのだった。




