19
ピコッ、ザシュッ、ピコッ、ザシュッ、ピコッ、ピコッ、ピコッ
ロザリアンヌは自分専用の武器を錬金術で作り上げていた。
見た目はそのままただのピコピコハンマーだったが、その威力はかなりの物だった。
その武器は殴ったと同時に殴打の衝撃を与えるだけでなく、片面は猛毒・麻痺・睡眠のデバフを与え、もう片面は光魔法のシャイニングスピアが殴ったと同時に自動で発動する仕組みになっていた。
錬金術でデバフ効果や魔法の付与もできるようになったロザリアンヌは、攻撃力2倍の効果も勿論短剣から移し替える事に成功していた。
なので弱い魔物ならデバフ面だけでも討伐できたし、デバフが入らない敵には魔法攻撃面のシャイニングスピアでほぼ一撃だった。
何しろダンジョンの魔物は、たいがいが光魔法が弱点だった上にその効果が2倍となれば当然だろう。
そもそもロザリアンヌが使えない魔法は付与出来ないので、アンナにこんな魔法と言うリクエストをして開発を進めて貰っているが、アンナだってそう簡単には作れない様だった。
そして攻撃力2倍の効果は是非とも付けたかったロザリアンヌは、武器から武器に効果を移し替える事はできないかと考えて試行錯誤の末に如何にか成功した。
もっとも失敗の回数だけ攻撃力2倍の短剣を必要とし、何度薬草ダンジョン第1階層のボス部屋を周回したか分からない。
でもその苦労があって、ロザリアンヌはこの武器をとても気に入っていた。
それに何より攻撃した時の音が可愛い所が、ダンジョン攻略を進める上でテンションが上がり、とても良いと思っていた。
それからこのピコピコハンマーのさらに凄い所は、魔法補助の杖としての機能もちゃんとある所だった。
ピコピコハンマーを翳して魔法を使うと、その魔法の威力もきちんと2倍になって発動されるのだ。
ピコピコハンマーと言う名の杖を使うロザリアンヌは、知らない人から見るときっとジョブを特定しづらい事だろう。
それこそがロザリアンヌの考えた作戦だった。
魔法学校に通うロザリアンヌが見慣れない殴打武器を使うとなると、知らない人から見れば魔法の才能はそれ程無いと考えるだろう。
そしてピコピコハンマーは錬金術で作った武器だと言えば、ロザリアンヌを錬金術師として認知し納得してくれるだろう。
だからたとえ光魔法をロザリアンヌが使っても、間違っても聖女候補とされたり聖女として認定されたりする危険は無くなると考えていた。
後はキラルの存在を知られる事さえなければ、平穏な学校生活を送れるとロザリアンヌは思っていた。
何しろキラルもすっかりと成長し、ロザリアンヌの身体から抜け出ている時間が大分増えていた。
なのでロザリアンヌは精霊体になるのはロザリアンヌの部屋の中だけだと言い聞かせ、ダンジョンの中やアンナの所では妖精に似せて小さな光の球の姿で過ごして貰っている。
ひた隠しにしようとすればする程、バレる危険が付きまとう。
ならば誰に見られても誤魔化しがきく様にした方が良いだろうというアンナの助言からだった。
たとえ見つかり小さな光の球が肩に乗っていると誰かに問われても、ロザリアンヌが知らないと言い張ればどうにでもできるだろうと気楽に考えていた。
「今日でこのダンジョン塔も卒業ね」
「そうねロザリーはかなり頑張ったと思うわ」
ロザリアンヌは探検者見習いとして入れるダンジョン塔のすべてを既に攻略していた。
キラルもその姿を見ていたので、当然褒めるように声を掛けてくれる。
この先のダンジョン塔へは本来15歳になり、正式に探検者になってからでないと入れないが、魔法学校や騎士学校へ入学すると特例で許可されるのだ。
その特例の許可を貰う為には、探検者見習いとして入れるダンジョン塔の攻略を済ませなければならなかったが、ロザリアンヌはもう既にその攻略を終えていた。
勿論各階層のボス部屋の隠し宝箱も開け、中身はすべて入手済み。
魔法学校入学前にやれる事はすべてやったと、ロザリアンヌは満足していた。
ロザリアンヌのステータスもレベルもかなり高くなっているし、キラルの成長もかなり進み使える光魔法もかなり増えていた。
それにマジックポーチの売り上げも思った以上に有り、アンナからかなりの魔導書を購入して使える魔法も結構増えている。
魔法学校への入学を明日に控え、ロザリアンヌの計画はかなり順調だと言っても良いだろう。
ロザリアンヌはこの2年間の成果を実感しながら、明日からの新しい生活に少しばかりの緊張とワクワクした気持ちを抱くのだった。




