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「ただいま~」


とは言ってみたが、別大陸へ行くと言ってこの家を出てからまだ1年と経っていない。

目的を果たすまでは帰らないつもりでいたのに、予想外の展開だった。


「ロザリー様は王女様でしたか!」


何一つ変わった様子の無いロザリアンヌの部屋を見てジュードは目を丸くしていた。


「そんな訳ないじゃない」


ロザリアンヌは呆れた様に呟いた。

普通のベットと机とクローゼットしかない、ロザリアンヌからしたらどこにでもあるありふれた部屋だ。

王女様の部屋と間違える程広くも無ければ、寧ろ他の子の部屋に比べたら質素な方だろう。


「これはいったいなんですか?」


明かりを灯す魔道具に驚き、布団のフカフカ具合に感激し、ベッドカバーにまで感動し、部屋にある物にいちいち興味を示していた。

自分の部屋に転移したのは間違いだったかと少し反省していた。


「女の子の部屋をそんなにじろじろ見ないの」


キラルに窘められ、ジュードはシュンとなって肩を落とす。

騒ぎを聞きつけたのか急いでいたのか、騒がしい足音を立てやって来たのはソフィアだった。


「ロザリー帰ったのかい」


「師匠に取り急ぎ報告があり戻ってきました」


「元気そうで何よりだね。お茶を入れるから降りておいで」


ロザリアンヌの顔を見て安心したのか、ソフィアはダイニングに急ぐ様に部屋を出る。

ロザリアンヌ達も1階へと降りて行くと、カトリーヌが出迎えてくれた。


「お帰りなさいロザリー」


カトリーヌが錬金術店の店番を手伝っていると聞いてはいたが、この家でカトリーヌの姿を見るのは不思議な感じがした。

リリーとダリアはロザリアンヌを真似て午前中はダンジョン、午後は錬金術の修行をしているそうで、今は留守にしていた。


「ロザリーの妹だと知って、探検者さん達がとても良く面倒を見てくれているそうなのよ」


「そうなんだ」


ロザリアンヌをいつも応援してくれて、いつでも温かく接してくれていた探検者さん達を思い出していた。

ついこの間の事の様でもあり、とても懐かし話の様にも感じていた。


「すみませ~ん」


店からお客の呼ぶ声が聞こえると「あらあら、大変」とカトリーヌが店へと戻っていく。

ロザリアンヌ達は店番に戻るカトリーヌを見送り、ダイニングテーブルに陣取ると、ソフィアの淹れてくれたお茶を飲んだ。


「そうだ、戻ったついでにポーションを少し練成してくれないかね。どうしてもおまえのじゃなきゃダメだと言う人も居てね、在庫も切れそうなんだよ」


ロザリアンヌは今でも時間があればポーションの練成はしていたので、何なら新作のポーションも出せると考えていた。


「任せて!それと新作のポーションもあるので後で鑑定してください」


「どんなポーションか楽しみだね」


「その前に大事な話がるんです」


ロザリアンヌはソフィアの目の前で転送文箱を錬成する。

勿論指輪型腕輪型キーホルダー型もそれぞれ対にして作っていく。

そしてジュリオにレシピを売る事になった経緯を詳しく話し、交渉や管理を任せると言ってロザリアンヌはソフィアに頭を下げた。


「それは構わないが、ロザリーはそろそろ自分の資産をどう使うか考える必要があるだろう。私もいつまでも預かってはいられないよ」


ソフィアはそう言うとロザリアンヌの銀行口座にある預金額を見せてくれた。

一瞬では数えきれない数字が並んでいて、念を入れて数えてみると11桁もあった。


「これ…」


「ああ全部ロザリーが稼いだロザリーの資産だ。ロザリーの好きに使うと良いよ」


いきなり見せられた思ってもいない大金に、ロザリアンヌは現実とは思えなかった。

そんな大金をいきなり使えと言われても、別に今のところ欲しい物も無ければしたい事も無かった。


しいて言えば、今の大陸では調味料や食材が揃わない事が多いので、メイアンに戻って来たついでに調味料と食材は豪勢に揃えておきたいと思うくらいだ。

それだってこの口座にあるお金を必要とはしないだろう。


「土地でも購入してみてはどうだ」


思い悩むロザリアンヌにレヴィアスが助言をしてくれる。


「土地を?」


「そうだ。拠点にしても良いし、この先ロザリーが何かをしたくなった時にできる事の選択肢も増えるだろう」


ロザリアンヌは土地を購入しろと言われ、真っ先に頭に浮かんだのはキラルと出会った東の森の泉の事だった。

あの泉は人の出入りがある場所なので、できるなら今のまま荒らされて欲しくない。

あのまま永遠に美しい場所としてあって欲しいと思った。


「東の森の泉がある一帯の土地って買えるのかしら?」


「あの場所を選んでくれるの!」


嬉しそうに声を上げたのはキラルだった。


「買えるのならね」


「あの場所は多分国が保有する場所だ、ならば交渉は可能だ任せておけ」


レヴィアスは自信ありげにニヤリと笑う。

あっという間に決まっていく話にロザリアンヌは「うん、お願いね」と現実味も無く返事をしていた。


そして話が纏まると、ロザリアンヌはソフィアともいつでも連絡が取れる様に転送キーホルダーを作り渡した。

そして錬金術店での用事をすべて済ませ、ジュードもいるので今夜は宿に泊まる事にして、メイアンで一番高級なホテルに部屋を取った。

勿論夜は家族みんなも加えた全員で食事を楽しみ、近況を教え合った。

ひと時の事とは言え、ロザリアンヌは久しぶりにとても賑やかな時間過ごし癒されていく。


「これから急ぎの仕事が待っているが、明日はゆっくりしても良いだろう」


レヴィアスの判断で一日好きにして良いと言われ、ロザリアンヌは久しぶりにアンナに会いに行く事を決めていた。



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