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「レヴィアスってばどこで何をしているんだろう?」


ギルドと交渉をしてみると言って出かけてから何の連絡も無く随分と時間が経っていて、いつもの事と思いながらもロザリアンヌはさすがに心配になっていた。


「連絡してみれば良いじゃないか」


「だって念話ってどこまで届くのか分からないし、邪魔になったら悪いじゃない」


「念話の届く距離は絆の深さだと思えば良いよ」


「えっ…」


「だから僕とロザリーはどこに居てもどんなに離れていても届く筈だよ」


キラルはウインクをして笑って見せるが、ロザリアンヌは本当なのかと半信半疑というよりあまり自信が無かった。


「分かったわ、試してみる」


ロザリアンヌは念話の通じる距離が絆の深さだというのなら、レヴィアスとどの位の深さで繋がっているのか試したくなった。

出会った時から何となく信頼関係があり何でも話してくれるキラルとは違い、レヴィアスとは実際どの位理解し信頼関係ができているのか自信が無かったので、ロザリアンヌは恐る恐る念話を送る。


『レヴィアス』


……ロザリアンヌは祈る様に返事を待った。


『何かあったか?』


レヴィアスの問いかけにロザリアンヌはおもいきりホッとする。


『連絡が無いからちょっと心配になっただけ』


『心配ないもうすぐ帰る。頼みたい事ができたから忙しくなると思っていてくれ』


『頼み事って何?忙しくなるってどうして?』


『帰ったら詳しく話す』


ロザリアンヌは久しぶりに聞いたレヴィアスの声に安心するより、聞きたい事が山ほどできているというのに、レヴィアスは一方的に念話を遮断した。


「良かったね」


一方的に念話を遮断された事で、何だか拒絶されたように感じ悲しくなるロザリアンヌに、キラルはキラキラの笑顔を向ける。


「…」


「どこに居るか分からないけれど念話が通じたんでしょう。レヴィアスとちゃんと繋がってるって事だよね」


キラルに慰められ、ロザリアンヌの気持ちはだいぶ落ち着いて行く。


「そうだよね。ここで信じなくちゃ信頼関係って言えないよね」


「それでレヴィアスは何だって?」


「忙しくなるって言ってた」


「忙しくなるのかぁ…。じゃあできる準備はしておこうか」


「うん」


ロザリアンヌはキラルの提案に素直に頷き、取り敢えずどんな風に忙しくなっても良いようにと、マジックポーチの整理を始める。

そもそも仕入れたい物もあったが、ドロップ品を整理し売り払う気でこの街に来た事を忘れていた。


「マジックポーチの中の物を少し整理して売り払おうと思うの。キラルはどうする?」


「僕もリュックにあるのを売り払っちゃおうかな。ジュードもそうしなよ」


「はい、お供致します」


三人は連れ立ってまずは冒険者ギルドへと足を運んだ。


「ドロップ品を売りに来たのですが、どの位買い取って貰えますか?」


ロザリアンヌが窓口の職員に声を掛けると、職員はロザリアンヌを値踏みする様に上から下まで視線を這わせる。


「ドロップ品だと!ダンジョンの物だと言うのだな?すべて買い取るよ。勿論適正価格でね」


ロザリアンヌがたいした荷物を持たないと判断してか、職員は半ば馬鹿にするような態度で返事をした。


「ここに出して行けば良いですか?」


「ここの他にどこに出す気だ?」


ロザリアンヌは明らかに態度が悪くなって行く職員に少しムッとして、マジックポーチの中のドロップ品の内、練成の為に取って置きたい分を残し次々と出して行く。


忽ち山になっていくカウンターを呆然と眺める職員に「置ききれないんですけど」と声を掛けると、職員は顔を青くした。


その様子を見ていた隣の受付カウンターの職員が慌てて駆けつけて来ると「失礼いたしました。少々お待ちください。どうぞこちらへ」そう言い、応接室の様な個室へと案内してくれた。

ロザリアンヌがソファーに座るのを確認してから職員が尋ねてくる。


「失礼ですが売却品は後どの位お持ちなのでしょう?」


「さっきのはほんの一部なので何とも言えませんが、多分アレの100倍以上はあるかな」


どの位と聞かれてもはっきりと把握できていないロザリアンヌは曖昧に答える。


「アレはダンジョンのドロップ品ですよね?それもかなり珍しい物が多かったようですが、となると当然魔石もお持ちなのですよね?」


「魔石ですか?ありますよ。でも私は売る気はありません」


「何故ですか!」


魔石は錬金術で結構使うので、あまり売る気は無いロザリアンヌにギルド職員は凄い形相で食い掛る。


「錬金術にも魔石は必要なんです」


「錬金術ですか?」


「私は錬金術師なので!」


ロザリアンヌはギルド職員に向けて胸を張り大きく頷いて見せた。


「錬金に魔石が必要だなんて聞いた事がありません。それにこれから我が国は魔道具の製造に力を入れる事になり、今は魔石を一つでも多く求めているのです。どうか売ってはくれませんか!」


錬金術の何を知っているのか知らないが、錬金術を何か少し馬鹿にされた様に感じ、ロザリアンヌに縋るようにする職員に辟易とし返事はしなかった。


「ねえロザリー、僕やジュードが持っている分なら売っても構わないよね?」


キラルがどちらに助け舟を出したのか分からないが、キラルの言葉を聞きギルド職員が途端に目を輝かせた。


「売っていただけるのですね!!」


「ジュードも良いよね?」


「はい!」


キラルに突然話を振られたジュードは、なぜか勢い良く立ち上がり直立不動の態勢で返事をする。


「お礼に少し色を付けて買い取らせていただきます」


ギルド職員はそう言うと部屋を退出して行った。


ロザリアンヌ達が不思議に思っていると「ここにお願いします」とあまり大きくも無い麻袋を差し出して来た。


「全部買い取ってくれるんでしょう?じゃあこの袋を後500個は持って来てよ」


平然と言うキラルにギルド職員は唖然とし、ロザリアンヌも驚いた。


「そんなにあるの?」


「だってロザリー、あの蜘蛛部屋で何匹蜘蛛を倒したと思ってるの?多分ジュードはもっと持ってるよ」


ジュードはキラルの隣で大きく頷いている。

思い出してみればあの蜘蛛部屋の蜘蛛の数は確かに凄かった。

それを3回も周回し、ドロップ品の回収もロザリアンヌ以外の3人に殆ど任せたので当然かと思い至る。


「貴重そうな魔石は取って置いてくれないかしら?何だったら私が買い取るわ」


基本ドロップ品を売って得た収入はレヴィアスが管理しているが、自分の管理している分は自分の収入にしても構わない事にもなっている。

だからロザリアンヌは自分が買い取る発言をしたのだが、キラルとジュードに窘められた。


「ロザリーったら何を言ってるの?」


「そうです、私がロザリー様からお金を頂くなどあり得ません」


二人の勢いの凄さにロザリアンヌは小さくなり「はい」としか返事ができなかった。


結局初めに出したロザリアンヌのドロップ品と、キラルとジュードが出した魔石をギルドが買い取れる分だけを買い取って貰った。


「急いで現金を用意します。また明日にでも売却にお出でいただけませんか」


相変わらず縋り付くようなギルド職員に、キラルは「いいよ~」と気軽に返事をしていた。

しかしその後ロザリアンヌの発案で、転移できる街を一つずつ回りドロップ品を売り歩いた。

どこの街も似たような反応で売るのにも時間が掛かり、結局すべてを整理する前に転移できる街が無くなった。


「久しぶりにメイアンに戻ってみる?」


「でもまた来てって言ってたところもあったじゃない。約束だからそこを廻ってからにしようよ」


「それもそうね、どうせ戻るならレヴィアスも一緒の方が良いしね」


ロザリアンヌはメイアンに戻る事を考えた事で、ユーリの事を思い出した。

そしてそう言えばと転送文箱を確認しようと蓋を開けると、中から手紙が溢れ出る。

ロザリアンヌはそれを見て、やはり手紙が届いたのが分かる様な何かが必要だと頭を抱えた。



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