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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
2章 ロザリアンヌにお任せ!

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「ロザリアンヌではないか!」


見知らぬ国の初めて来た街の人混みの中で、まさか誰かに自分の名前を呼ばれるとは思っていなかった。

慌てて辺りを確認するとユーリが手を振っていた。


親し気な笑顔を浮かべ、ロザリアンヌに向けて手を振っているのだ!


あの(どの?)ユーリが誰かに手を振るなど考えてもいなかったロザリアンヌは瞬時に固まった。

それにロザリアンヌの事を知る人など居ないと思っていた異国で、自分の名を突然呼ばれるのも心から驚く出来事だった。


「随分と久しぶりだな。おまえもここに来ていたのか」


「お久しぶりです」


この大陸に来る前の記憶が蘇ったが、そんな事を気にしない様子のユーリに、ロザリアンヌも普通に挨拶を返す。


「何をしているのだ?」


「えっと、ダンジョンで得た物を少し売り払おうかと思いまして」


「聞き方が悪かったな。この国では何をしているのだ?また何か問題でも起こしているのではないのか。まぁそれよりも、もし時間があるのなら少しお茶にでも付き合わないか。色々と話が聞きたい」


面倒事に巻き込まれるのを避けて接触しないようにした筈で、こんな所で出会う事態が既に凄く意外な話なのに、まさかユーリにお茶に誘われるなど考えてもいなかった。


(まさかこれも何かの強制力が働いているのか?)


ロザリアンヌは思いっきり警戒するしかなかった。


「連れが居ますので遠慮します」


ロザリアンヌが至極冷たく答えると「ロザリー、僕達は少し街を廻ってくるよ。後で合流しよう」キラルはそう言うとジュードを連れてさっさと立ち去っていく。

レヴィアスは街に入ってすぐにいつもの様に別行動だった。


「ちょっと待ってよー」


キラル達の後を追おうとするロザリアンヌの腕を掴み、ユーリがニコリと微笑んでいる。


「少しお話しするだけですよ」


ロザリアンヌは諦めて仕方なくユーリとお茶をする事にした。


「…少しだけですよ」


「分かっています。私も約束を破る様な事はしません、安心してください」


学校に居た時とは何だか態度も言葉遣いも雰囲気も変わった気がして、ロザリアンヌは逆に居心地が悪かった。


そしてユーリに連れていかれた店は、大通りから少し外れた場所にある小さなバーの様な雰囲気のカウンター5席とボックス席が一つの小さな店で、シックで落ち着いた作りがどこか安心できた。

とは言え、あの(どの?)ユーリがこんな店を好むのかと少し不思議な気分だった。


「すまないコーヒーを頼む」


「コーヒーがあるんですか!」


ロザリアンヌはこの大陸にもコーヒーがあると知って驚いた。


「我が国が輸出し広めている所だ」


「栽培からこちらでやればこの国も潤い広まり易いし、輸出するより低価で売れ利益も得やすいんじゃないですか?」


何の気なしに返したロザリアンヌの言葉にユーリは腕を組み考え始めた。


「…確かに。問題も多いが可能ではあるな」


そう呟くと考え込んだままのユーリにロザリアンヌは少しイライラし始めた。

運ばれてきたコーヒーは一つだったので、改めてコーヒーを追加するとロザリアンヌはそのコーヒーを黙って飲み始める。


(これを飲み終わったら帰ろう)


内心でそう決めて、急ぐようにしかし久しぶりなので味わう様にコーヒーを飲んだ。

そもそも話を聞きたいと連れて来ておいて、こうして放って置くなんて考えられないとロザリアンヌは思っていた。


意外過ぎる状況でキラルが変な気を利かせるからつい付いて来てしまったが、時間を返せという気分でいっぱいだった。

そうしてロザリアンヌがコーヒーを飲み終わっても覚醒しないユーリを放って、ロザリアンヌはそっと席を立つとそのまま店を出た。


(ホント失礼しちゃう。でも逆に助かったのか?)


ユーリと話す事も無く面倒事に巻き込まれる事も無かったのだと思うと、あの場でユーリが固まってくれたのは有り難かったのだと気付き、そこからは気分も足取りも軽くキラル達の気配を探した。


オーラの色がそのまま探知できる様になっていたが、そもそもオーラに色を持つ存在はそうは居なくて、一般の人のオーラは大抵が白で偶に色を持った人が居ても微かにうっすらとしたものだった。


『キラルどこにいるの?』


『用は済んだ?もう良いの?』


『済んだ済んだ。合流しようよ』


『うん、でもここなんだか変なんだ。ロザリーは近づかない方が良いよ』


『何よそれ。もっと詳しく話してくれないと意味が分かんないよ』


念話とは言え、キラルの様子が変なのが伺えてロザリアンヌは途端に心配になる。

ましてや様子が変だからロザリアンヌに近づくなとはいったいどういう事だと、警戒心より不安が募る。


『はっきりとは言えないけれど、何か悪い病気が蔓延している感じだよ』


『それは大変!私にも何かできるかも知れないわ。すぐに行くから場所を教えて』


『でも…』


キラルが何を心配して近づくなと言っているのかロザリアンヌには想像がつかなかった。

しかしどんな病気が蔓延しているのか分からないが、ロザリアンヌは治せる手段を持っているかも知れないのに、ここで知らん振りなどできる訳がない。

ロザリアンヌに病気がうつる事を心配するのならキラルだって絶対に安全とは言えないし、キラルと一緒に居るジュードの事がもっと心配だ。


『レヴィアスも呼んで一緒に行くわ。それなら良いでしょう』


歯切れの悪いキラルにロザリアンヌは強く出る。


『じゃあ一度冒険者ギルドの前で合流しよう』


キラルはロザリアンヌの説得を諦めたのか漸く待ち合わせ場所を指定した。


『ギルドの前ね。急いで行くわ』


ロザリアンヌはギルドに向かって走り出しながらレヴィアスに念話を送る。


『レヴィアスお願い、冒険者ギルドの前に集合よ』


『了解した。しかしギルドも何やら騒がしい。目立たない方が良いだろう』


冒険者ギルドも騒がしいと聞いて、ロザリアンヌはいったいこの街に何が起こっているのか、言いようのない不安を抱えながら街中を急いだ。



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