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誤字報告いつも本当にありがとうございます。
とても助かっております。
ロザリアンヌがダンジョンコアの部屋で難易度を変えると、リュージンが早くドワーフに一刻も早く知らせたいというので一度ダンジョンの外へと転移した。
「それじゃ私達は蜘蛛部屋に戻るわね」
「ああ、助かった。ありがとうなロザリー」
リュージンと別れ、ロザリアンヌ一行はその場で食事休憩を済ませ蜘蛛部屋へと転移した。
難易度が変わったとはいえ作戦自体に変更は無かったので、蜘蛛部屋に着くと同時にみんな一斉に駆け出していた。
ロザリアンヌはライトを浮遊させると同時に親蜘蛛に向かってシャイニングスピアを多数撃ち込み絶命させる。
最高難易度の親蜘蛛も難なく倒せたと安心していると、親蜘蛛が消滅する寸前腹の中から禍々しい赤黒いオーラを放つ蜘蛛が現れた。
子蜘蛛より少し大きくまるで甲冑を纏ったかのような銀色の蜘蛛だった。
進化種なのかレア種なのかロザリアンヌには分からなかったが、ここに居る子蜘蛛達とは比べ物にならない何かを感じた。
ロザリアンヌが驚いている一瞬の隙をついて動き出した蜘蛛の速さは目で追うのも大変だった。
あっという間にロザリアンヌに迫る蜘蛛に、ロザリアンヌは咄嗟に結界を張り屈み込む様にして防御する事しかできなかった。
カキーン!!
刃となった蜘蛛の足での攻撃に結界が派手な音を立てた。
多重結界の強化が無ければ結界も破られていたかも知れない恐ろしさに、ロザリアンヌは一瞬恐怖を覚えた。
その音が合図になったのか、キラルもレヴィアスもそしてジュードもロザリアンヌの元へと駆け付けてくる。
レヴィアスの放つ闇に包まれた蜘蛛にキラルが放つシャイニングスピアが撃ち込まれると、いち早く蜘蛛に迫っていたジュードのナックル手甲の鉤爪が炸裂した。
ロザリアンヌは蜘蛛に迫られた恐怖よりも、三人の素早い連携をすぐ目の前で目撃し圧倒されていた。
話し合っていた訳でもないだろに、躊躇も無く見事に連携できていた事に驚くというより感動していた。
「大丈夫でございますか」
禍々しいオーラを放っていた蜘蛛の消滅を確認すると、ジュードはしゃがみ込むロザリアンヌの肩に手を置き心配気に声を掛けて来た。
「大丈夫、ありがとう」
ロザリアンヌが顔を上げジュードに返事をすると「では」と安心した様な笑顔を投げかけ子蜘蛛討伐に戻っていく。
「ロザリーごめんね。僕油断してたよ」
「大丈夫よキラル。みんなのお陰でこうして無事よ」
「じゃあ僕も行くね」
キラルもロザリアンヌの無事を確認すると子蜘蛛討伐に戻った。
レヴィアスはロザリアンヌに声を掛けてくる事は無かったが、ロザリアンヌと一瞬目が合うと小さく頷きあまり離れない場所で子蜘蛛退治を始める。
ロザリアンヌはレヴィアスが警護をしてくれるつもりなのだと理解し、その場で魔法の熟練度上げの作業に入った。
さすがに最高難易度の魔物だけあって、使い慣れていないロザリアンヌの魔法で一撃という訳にはいかなかったが、同時発動のお陰もあって苦労する事も無く倒せ、魔法の熟練度がグングン上がっていく感覚をハッキリと感じ取っていた。
しかし攻略に時間が掛かるのは確かなので、蜘蛛部屋の攻略はこれを最後にしようと考えていた。
そして最後の子蜘蛛をジュードが倒すのを確認するとドロップ品の回収は三人に任せ、ロザリアンヌは鉱石の採取精錬に専念した。
この部屋というかこのダンジョンへはもう来る事も無いだろうと考えると、文字化け鉱石や貴重な鉱石を採取しないという選択肢は無かった。
そうしてすべてのドロップ品と鉱石の回収を終わらせてみたら、あの禍々しい蜘蛛の他にも貴重種やレア種がかなりいたらしく、珍しいドロップ品も多かったと報告を受けた。
蜘蛛のドロップ品といえば糸素材が多くその品質や性能に違いがあるだけでなく、毒袋や糸袋や牙といったものもあり、ロザリアンヌはそれらを使いこれからどんな物を錬成できるのか楽しみにした。
そうしてすべてを終わらせたが、誰の口からもドワーフが大丈夫なのか確認しに行こうという話は出ず、今回はそのままみんなで隠れ家へと転移した。
「何だか疲れたね」
体力的には余裕があったが、長時間の気を抜けない戦闘はやはり気力を使う。
「お陰でこの武器は私の身体の一部となりました。本当にありがとうございます」
ジュードが深々と頭を下げると、キラルも満足したのか軽く頷いていた。
「じゃあ今夜はご馳走でパーティーでもしようか?」
「賛成!」
いち早く返事をしたのはキラルだった。
「じゃあ久しぶりに料理は私に任せて」
ロザリアンヌはみんなに宣言し、祝賀会の様な気分でご馳走をテーブルに並べた。
「スゴイ!ご馳走がいっぱいだね」
「この料理は何というのですか?」
「ご馳走といったら私の子供の頃はこれだったのよ」
テーブルに並んだ唐揚げとお寿司と茶わん蒸しをジュードに説明する。
他にもローストビーフにサラダやスープも用意したが、ジュードはお寿司をことさら珍し気に喜んでいた。
「この寿司も悪くは無いが、食べ辛いのが難点だな。どうせ同じ材料なら私は海鮮丼の方が良いな」
珍しくというか初めてレヴィアスが料理に関して話したのを聞き、漸くレヴィアスも料理に関心を持つ様になったのだとロザリアンヌは内心で喜んでいた。
「海鮮丼も作る?」
「今は良い」
素っ気ない返事だったが、食べ辛いと言いながらも寿司をつまむレヴィアスを、ロザリアンヌはニコニコ顔で眺めてしまう。
「何を見ている」
「ううん、別に」
珍しく食事に積極的なレヴィアスと目が合い問われるが、レヴィアスが食事を楽しんでくれている様で満足なのとは言えず曖昧に誤魔化した。
「ロザリー、今日のから揚げも美味しいよ」
「いつもと味を変えてみたの。気に入ったのならこれからはその味にするよ」
「いつも同じより偶に違うのも楽しいからいい」
「コレ本当に美味しいです。また食べたいです」
ジュードは本当にお寿司を気に入っている様だった。
ロザリアンヌはみんなが満足気に食べる様子を眺めながら、やはりみんなで食べるのは楽しいと心から思っていた。




