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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
2章 ロザリアンヌにお任せ!

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相変わらずカーンカーンという採掘音が聞こえていた。


「な、なんとここは…」


一瞬で移動してきたことが信じられないのか、ドワーフは驚くというより呆気に取られた様子でいる。


「急ぐぞ」


ロザリアンヌは立ち止まるドワーフを無視して、相変わらず大股で先を歩くレヴィアスの後を慌てて追った。

採掘音が段々と大きくなりいよいよその場所へ辿りつと、8人のドワーフ達が無言で採掘を続けている。


「交代の時間じゃ」


後ろから付いて来ていたドワーフがロザリアンヌの隣で大声をあげると、壁に向かい採掘を続けていたドワーフ達は一斉に動きを止め振り返る。

誰一人として怪我をしているドワーフが居ない事にロザリアンヌは胸を撫でおろしていた。

きっとダンジョンの難易度が変わった事にも気づかずに採掘を続けていたのだろうと思われた。


「おお、マッツォ。これを見てくれ」


壁に並んでいたドワーフの一人が興奮気に足元にあった鉱石を手に駆け寄って来た。


「これは!?」


「驚いただろう。こんな鉱石見た事も無い。俺が掘り当てたんだ!!」


マッツォと呼ばれたドワーフは、鉱石を手に駆け寄って来たドワーフからその鉱石を受け取ると、暫く矯めつ眇めつ眺め唸り声をあげていた。


「これは驚いた、ミスリルより魔力の通りが良く、オリハルコンより耐性に強く、アダマンタイトの黒より黒く、ヒヒイロカネより硬そうだ。まだこんな鉱石がこのダンジョンに存在するとはな…」


「これを使えば伝説級の武器の製作も夢ではないと思わぬか?」


「この量ではたいした武器は作れまい。かと言ってそう簡単に手に入るとは思えん…」


「しかしこの場から出たのは確かだ。ここを掘り尽くせば必ずもっと見つかる筈だ」


文字化け鉱石を手にロザリアンヌ達をも無視して白熱する会話に、ロザリアンヌはどうして良いか迷っていた。

その鉱石が出たのは多分、このダンジョンの難易度を最高難易度に変えていた間の事だろう。

かなりの低い確率の中この場所で掘り当てたドワーフも凄いが、難易度を元に戻してしまった今となっては、この場をどれだけ掘り続けようと文字化け鉱石が出る事は無い。


それを話そうと思ってもロザリアンヌに口を挟む猶予も無く、興奮しながら話す二人にどう説明しようかと考える一方、このまま様子を見て成り行きに任せた方が良いのかとも思う。

ダンジョンの秘密を知らないでいるらしいドワーフ達に、ダンジョンコアの話やダンジョン設定の事を話すのはドワーフ達を戸惑わせるだけかも知れないと考えていた。

もっとも話したとして信じるかどうかも分からないのだが…


「取り合えず村に持ち帰り話し合ってみる必要があるだろう」


「そうだな」


漸く話し合いが落ち着いたかと思っていると、ロザリアンヌ達に気付いたドワーフ達が驚きの大声をあげた。


「マッツォおまえ一人か?」


「どうしてこの場に人間どもが?」


「交代要員はどうした?」


「他の奴らはいったい何処にいる?」


「交代はせんのか?」


「なぜ人間が一緒に居るんだ?」


「他の奴らはどこへ行った?」


「どういう事だぞい」


「ええい、煩い黙れ!!」


一斉に喋り出したドワーフにマッツォがまたも大声で怒鳴った。

ロザリアンヌは一度経験していたので咄嗟に耳を塞いだが、それでも十分大声は耳の奥まで届き少し頭が痺れた。

ロザリアンヌは耳抜きする様に頭を振ると、声や音による攻撃に備えるべく何か手段を考えようと決めた。


「原初様のお供の方々じゃ。今宵はみなでお迎えする予定じゃ。分かったら大人しく村へ帰るぞ」


「原初様?」


リュージンの事を知らないらしいドワーフがマッツォにそう尋ねた。


「この世界が産まれた時より存在しているとされるドラゴン様じゃ。昔儂らが人間どもと諍いになった時に儂らに生きる術を与えてくれた方じゃ。お主は聞いてはおらんのか?」


「聞いた覚えはあるがあれはおとぎ話だと思っていたよ」


「実在するぞ。今頃は村で休んでおられるだろう」


「では、儂らも早く帰るとしようぞい」


ドワーフ達は一斉に帰り支度を始めた。


「それで帰りもここへ来た時同様に頼んでも良いのかの?」


マッツォが当然の様に聞いて来るのでロザリアンヌはここへ来て初めて口を開いた。


「一度に全員は無理ですよ」


実際やってみればできるのかも知れないが、同時に転移させる人数として13人は軽くいつもの倍の人数なので、ロザリアンヌは慎重になっていた。

多分2・3回に分ければ無理も無くなんて事も無いのだろうが、当然と言わんばかりの態度がロザリアンヌには何か心に引っ掛かるものがあった。


まるでロザリアンヌをただ利用しようとしか考えていない様な態度に、面白くないと思ってしまったからだろう。

それにドワーフ達のロザリアンヌを見る目が、女だと軽視している事を物語っているようにも感じていた。


「存外役に立たぬ能力じゃったの」


転移して来た時には驚いていた筈なのに、簡単に役立たず呼ばわりされた事にロザリアンヌはがっかりして思わず溜息を吐いた。

するとその瞬間だった、レヴィアスの闇の力がロザリアンヌとキラルとジュードを包んだかと思うとダンジョンの外へと転移していた。


「レヴィアス?」


ロザリアンヌはレヴィアスの行動に驚いていた。


「リュージンも言っていただろう、奴らは人間の女を攫うと。奴らが攫った女達をどうしているかなど想像がつくだろう。その様な目でロザリーを見る奴らに何を協力する必要も無い」


珍しく感情を露わに吐き捨てるように言うレヴィアスに、ロザリアンヌは心から驚いていた。

と同時に、ロザリアンヌの事を考えてくれ庇ってくれたのだと思うと嬉しくて仕方なかった。


「ありがとう、レヴィアス。でもこれからどうする気?」


「別にどうもしない。リュージンはドワーフの村で何かしたい事でもあるのだろう、だとしたら別行動をするまでだ。そうだろう?」


ロザリアンヌの髪の先を一掴み指先に絡め、心の奥まで覗き込むかのようなレヴィアスの漆黒の瞳が、ロザリアンヌをじっと見詰める。

レヴィアスとの近すぎるその距離と今までにないレヴィアスの行動に、ロザリアンヌの心臓はドキドキと鼓動を速めていた。


「ここでの用事が済んだんなら次のダンジョンに行こうよ」


キラルがロザリアンヌの背を元気づける様に叩いて来るので、ロザリアンヌは軽く息を吐きドキドキを落ち着かせ考える。


二人に言われてみれば、ここでドワーフに関わるも関わらないもロザリアンヌが決めて良いのだと気が付いた。

そしてロザリアンヌを人間の女という目でしか見ない彼らと、無理に自分から関わる必要など無いのだと自然に思えた。


初コンタクトはリュージンのお陰で争いもいざこざも無く済んだ。

少々強引に去って来てしまったが、レヴィアスはきっとロザリアンヌの感情を汲み取ってくれたのだろう。

それに実はロザリアンヌも同じ事をしたいと考えていたと思う。


リュージンはリュージンのしたい事をすれば良いし、ロザリアンヌも自分のすべきことをするただそれだけだ。

ここで別れたからといってリュージンとの繋がりが無くなる訳じゃないと、ロザリアンヌは自分を納得させる。


「そうだね、次のダンジョンに急ごうか」


ロザリアンヌはドワーフ達の事はリュージンに任せ、自分達の目的を果たす事を優先する事にしたのだった。



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