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私は強くてニューゲーム~レア素材を求めて仲間たちと最強錬金旅はじめます~  作者: 橘可憐
2章 ロザリアンヌにお任せ!

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「儂はキラル殿の事を言ったつもりだったが、理解できんかった様じゃのぉ」


リュージンはロザリアンヌに意外な事を言った。


「キラルの事?」


「ロザリーよ、お主はキラル殿のうわべだけを見ようとしている様に思えるが違ったかの」


ロザリアンヌは思いもしなかった事を言われ反論しようとしたが、肝心の言葉が何一つ出て来なかった。

そう言われてみると、ロザリアンヌの中でキラルと言う存在が大きくなればなるほど、自分の中のイメージでしか見ていなかったかもしれないと気付いた。


まだ生まれて5年かそこらの光の精霊で、ロザリアンヌが守らなくてはならない小さな存在。

キラキラの浄化の笑顔を向けてくれる純粋無垢な少年の様なキラル。

いつも一緒に居て、ロザリアンヌを守ると頑張っている姿が微笑ましいキラル。


そう言えば初代聖女様のお墓で記憶も力も取り戻してからもその姿は以前のままだったが、あれから随分と色んな表情を見せる様になっていた。

それに別行動をする事も増えていた。


もしかしたら自分が考えているよりずっとキラルは光の精霊としても大きく成長し、既にロザリアンヌが思う様なキラルではなくなっているのかという思いに漸く至っていた。

今までずっとキラルの一面しか見ようとせずに、多分気付いてはいたが認めたくはなかったというのが正解だろうと思う。


「そうかも知れない…」


「ロザリー、僕はロザリーが望むキラルのままで居るよ。だからそんなに悩まないで」


キラルが慰めてくれるが、今はそれが返ってロザリアンヌの心を抉った。

ロザリアンヌが望んだ事でキラルを縛り付けていたのだと理解できてしまったから。


「今まで無理をさせていたんだね。ごめんなさいキラル」


ロザリアンヌは思わずキラルに抱き付いていた。


「だから無理なんかしていないってば。僕はこれが幸せなの。変な気を遣われる方が嫌だよ」


「ロザリー、リュージンは何もお前を追い詰めようとして言ったのではないと思うぞ。キラルはこれがキラルだ。ただそれをきちんと理解しておけと言いたかったんだろう」


レヴィアスがロザリアンヌを諭し慰めてくれていた。


「そうじゃぞ、何事も一面だけでは計り知れないという事じゃ」


「はい、しっかりと胸に留めておきます。キラル、私どんなキラルでもきちんと受け止めるから安心して」


「だから、これが僕なんだだってば。無理してないからね」


拗ねた様にするキラルはいつもと変わらないキラルに思えた。

しかしもうどんなキラルの表情を見ようとも、不安を感じたり見ない振りをするのは止めようと強く誓った。

これからはきちんとキラルを理解し、もっと分かり合える様にしなくてはと考えていた。


「分かってるって、私はキラルの事大好きだから大丈夫」


「それは僕のセリフだからね。僕はロザリーが大好きだから」


「まったく見てはおれんのぉ、この様な往来で何を言っているやら恥ずかし気も無く」


リュージンが大袈裟な溜息を吐くので、事の発端を作っておいて何を言っているのかとロザリアンヌは呆れ顔でリュージンを見るが、気付かせてくれた事には感謝していた。


「ありがとうリュージン」


「年長者の役目と言うところじゃ気にするな」


リュージンは照れたように頭を掻くので、ロザリアンヌは何か可笑しさを感じていた。


「取り合えず泊まれる所を先に探しますか」


ロザリアンヌはそう提案してみんなより先に歩き始める。

何となく今の自分の表情を誰かに見られるのが恥ずかしいと思っていた。

多分泣きそうなのに笑っている複雑な表情をしていると自分でも分かったからだ。


何かは良く分からなかったが、心に沁みたものがあった。

それを大切にしたいと思えたが、その良く分からないものが何なのかはいつか分かる時が来るのだろうかとロザリアンヌは考えていた。


「ドラゴが一緒に泊まれる宿があれば良いがな」


「それは問題じゃのぉ。ドラゴよおまえも早く人間に変化できる様になるのじゃな」


「クゥ~ン」


「ドラゴもそんな事ができるようになるの?」


ロザリアンヌは思わずリュージンに食い掛ってしまった。


「どうかのぉ、儂の息子なら可能性はあると思うがの。これからのドラゴ次第じゃ」


「クゥ~ンクゥ~ン」


ドラゴはまるで任せろと言っている様だった。


「どちらにしろ儂らは街の外れで野宿でもするしかないかのぉ」


「じゃあ僕達もそうしようよ。ねえ良いでしょうロザリー」


「キラルはこう言っているけどレヴィアスとジュードはどうする?」


「私は今夜は別行動する予定だ」


レヴィアスはいつもの様に情報収集にでも励むつもりらしい。


「分かった。あまり無理しないでね」


「私は勿論キラル殿とご一緒させていただきます」


「じゃあ宿探しは止めてご飯の準備だね」


「それは僕達に任せて。錬金鍋の練習もまだまだしたいし、良いでしょう?」


「それなら私も手伝うよ」


「では、皆でやるとしようかの」


ロザリアンヌ達は出かけて行くレヴィアスを見送ると、街の外れへ戻り早速みんなで料理を始めた。

いつの間にかキラルだけでなくリュージンまで錬金鍋を器用に使いこなしていて、ジュードも焚火を使って料理を始めていた。

そんなに作って食べきれるのかと思っていると、匂いにつられ集まった人々にも料理を振舞い出し、ロザリアンヌは作っても作っても足りない忙しさに追われていた。


キラルもリュージンもその為にここで料理をしようと言ったのだと途中で気付いたロザリアンヌは、マジックポーチに仕舞った食材が尽きてもまた補充すれば良いかと覚悟を決めていた。

辺りはいつの間にか臨時で商売を始める人まで出始め、まるでお祭りの様な騒ぎになっていた。


「楽しいのお」


リュージンは久しぶりに大勢の人々に囲まれているのが嬉しいのか、いつの間にか料理を止めお酒を飲み始めていて本当に楽しそうにしていた。

そしてその横ではドラゴが子供達の相手をしている。


キラルとジュードは集まった人々の相手をしていて、魔物も食べられるのだと教え聞いてくる人にはレシピを公開していた。

何故か錬金鍋に言及する人は誰もおらず、得体の知れない料理と拒否する人も居なかった。

ロザリアンヌはそれがとても不思議だったが、そんな事を深く考える余裕も無く一人で料理を作り続けていた。

とても賑やかで忙しい夜になったが、ロザリアンヌはきっと今日の事は忘れないだろうと思っていた。



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― 新着の感想 ―
前大陸の頃と比べると 角が取れて人として成長しているのだなあと 今回のほのぼのしたエピソードに思わずウルりときました
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