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「ハハハハハ、金なんてどうにでもなるものか。考えてみればその通りじゃな。人間が欲するものを提供すれば良いんじゃな」
「そうだよ。僕なんてロザリーと一緒に居るだけで、こうして人の姿になって困った事なんて何も無いよ」
「ほほう、お主は良い人間と出会ったのじゃな」
「僕のロザリーは最高さ!絶対に離れないよ」
ドラゴパパとキラルは聞きようによってはヒモかジゴロの様な会話をしているので、ロザリアンヌは段々と呆れて来る。
「この国は戸籍が無くても冒険者登録できるよ。だからドラゴパパは冒険者登録してクエストをこなすか、魔物の素材でも売ったら良いんじゃない。キラルもそうして現金を得ているんだから」
キラルはまるでロザリーに養われている様な言い方をするが、実際は魔物の素材を売って得た現金は三人で均等に分けている。
もっとも管理はレヴィアスに任せがちではあるが…
だからドラゴパパも同じ様にすれば良いと助言したつもりだった。
「冒険者登録か、それも面白いかも知れんな。それじゃダンジョンへ送って行くついでにその冒険者登録とやらに付き合ってくれぬか」
「そのくらいなら別に構わないけど…」
ロザリアンヌは余計な事を提案し面倒事を増やしたかと少しだけ後悔したが、この先ドラゴパパが変わらずに人間世界を楽しめるのだと思えばそれも良いかと思っていた。
そうしてキラルとドラゴパパはオーラを消す練習の為に出かけ、ロザリアンヌは家の建て替えの練習を始めた。
家の練成は始めてみると思ったより簡単だった。
練成鍋での料理と一緒で、材料を揃え魔力を流しながらイメージして行く。ただそれだけだ。
しかしその材料が思った以上に必要で、何度もリサイクルできるとはいえ必要量を揃えるのが大変だった。
魔物の素材ならマジックポーチに山ほどあるが、家の材料となる素材はほとんど無く、一から集めなくてはならなかったので、キラルやレヴィアスと別行動をした事を後悔していた。
それでもここが大森林の中だったので、比較的素材を集め易かったのでどうにかなったが、そうでなければ途中で挫折していたかも知れない。
素材を揃え出来上がりをイメージして魔力を流して行くと、時間を早めた様にみるみる出来上がって行く様子は、昔見た魔法使いのドラマか映画のワンシーンの様でロザリアンヌは何だかとても楽しく気持ち良かった。
そのお陰か集中が切れる事も無く、多分それなりの時間がかかっているのだろうが、そんな事も気にする事無く作りあげられた。
練習のつもりで始めたが、既に初回でそれなりに満足のいくものを作る事ができたし、思った以上に魔力を使ったのか、引き続き家を作るだけの気力も魔力も残っていなかったので、これを完成にする事にし、ロザリアンヌは早速出来上がった家を大賢者様の収納袋に入れ、ジュードの家へと向かう。
「新しい家ができあがったから持って来たよ。設置場所はここで良いよね?」
「新しい家でございますか?」
マジックポーチの事は既に知っていてその便利さを理解している筈なのに、大賢者様の収納袋の容量を知らないジュード達は不思議そうに首を傾げる。
きっと家が入る筈も無いと考えているのだろう。
ロザリアンヌは元々あった家の側を闇魔法を応用し整地して、その場に練成した家を取り出す。
「そんなに大きな家は作れなかったけど、それ位あれば十分でしょう?」
振り向くとジュードだけでなくお爺ちゃんもお婆ちゃんもアリオスまであんぐりと大きな口を開けて驚いている。
なんで?と疑問に思うロザリアンヌ。
「このような家をロザリー様がお創りになったのですか?錬金術とやらでですか」
ジュードの言葉に他の三人が大きな音を立て唾を飲み込んでいる。
「そうよ。私もこの位は出来るようになったの、まだまだ大賢者様には及ばないけどね」
「私にはもう十分だと思えるのですが」
他の三人は大きく何度も頷いている。
「家なんて何の工夫も無いじゃない。私はもっとみんなが喜ぶものを作りたいの」
「みんなの喜ぶものですか。私はこの様な素晴らしい家を作っていただいて、これ程嬉しい事はありませんよ」
「そう言って貰えると私も嬉しいわ」
家の間取りやデザインに自信が無かったが、少なくともジュードが素晴らしいと言ってくれた事にロザリアンヌは素直に喜んだ。
それでも実際自分の錬金術の知識も腕前もまだまだだと思っていた。
どうせならもっと色々凄い機能や便利機能も付けた家も作れたかもしれない。
ロザリアンヌにそれを作るだけの気力と魔力と発想力があれば…
そうでなくちゃわざわざ錬金術を使い家を作った意味が無いだろう。
それにこの程度の大きさの家を作る位で魔力も気力も切れるのも納得がいかない所があった。
折角レベルが限界突破する事になったのだから、この際さらにレベルを上げステータスも魔力量も増やそうと改めて思うのだった。




