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次の日ロザリアンヌ達は予定通り初代聖女様の生家を探して街中を歩き回っていた。
「結界の気配を察知すれば良いのよね?」
「しかし街中でその様な結界など感じないぞ」
「うん、全然感じないねー」
「じゃぁ街の外を探ってみるしかないか」
ロザリアンヌは仕方なしに街中での探索を諦め、街の外れや山間の村も探してみる事にする。
しかしそうなると方角やはっきりとした場所を限定できないので、かなり広大な範囲を捜索しなくてはならない。
「こんな時こそ飛んでも良いよね?」
ロザリアンヌは何となくお伺いを立てるようにレヴィアスの顔を見る。
「認識阻害は忘れるなよ」
「分かってるって、じゃあ行きましょう」
ロザリアンヌは街の外へと出て、目立たない場所を探し認識阻害を掛けると妖精の羽を装着した。
ダンジョンの外を初めて飛ぶロザリアンヌは、自然に吹き渡る風を感じ太陽の光を浴びて、どんな景色を見られるのかと思うと期待で胸をワクワクさせていた。
「高く飛んだ方が広く探索できるよね?」
「それだと結界のすぐ傍まで行かないと察知できないぞ」
「そっか、そうだよね」
ロザリアンヌはどうせなら少し高い場所を飛びたかったけれど、今回は諦める事にした。
そうして地上10m位の高さをあちこちと飛び回る。
『ねえ、見てみて。森って上から見るとこんな景色なんだね。あっちの方へ飛んだら海が見えるかしら』
ロザリアンヌは初代聖女様の生家を探している事などすっかり忘れ、景色を楽しみ飛ぶ事を楽しんでいた。
『ロザリーあっちの方に何か感じるよー』
キラルが指さす先を見ると、少し深い森が広がっているのが見えた。
近づいて行くと森の奥がまるまる結界に覆われているのを感じ、ロザリアンヌは心から驚いた。
『こんなに広い範囲に結界を張れるって、初代聖女様ってどれだけの力を持ってたの?』
『聖女の結界じゃ無いな、これは光の精霊の結界だろう』
キラルより先にレヴィアスが答えてくれた。
結界の傍へと降り立つとロザリアンヌは急に不安になる。
「この結界って多分誰も入れない様にしてるんだよね?だとしたら私達も入れないんじゃないの?」
「僕と一緒なら大丈夫だよ」
キラルの元気な返事に、ロザリアンヌは光の精霊が張った結界なら当然かと考えていた。
でも何故こんなに広い範囲で結界を張る必要があったのか、そこでいったい何を守っているのかロザリアンヌは想像もできなかった。
初代聖女様の子孫達が隠れ住んでいるにしても、エルフじゃあるまいし森の中だけの生活はきっと不便だろう。
それにそんなに長い年月を隠れていられるものだろうか?
そもそも初代聖女様の子孫がなんで隠れなくてはならないのか、ロザリアンヌにはまったく意味が分からなかった。
まさか亡くなった筈の初代聖女様を匿って暮らしていたとか?
そうだとしたら初代聖女様や光の精霊は、いったいどんな酷い仕打ちを受けたと言うのだろう。
ロザリアンヌが悶々と考えていると、キラルが「ねえ、早く入ろうよ」とロザリアンヌの手を取った。
どうやらキラルと手を繋いでいれば、結界の中に入れる様だ。
ロザリアンヌとレヴィアスはキラルを中央にして手を繋ぎ、早速結界へと歩みを進める。
すると驚いた事に、目の前に小高い山が突然現れた。
結界の外からは深い森に見えていたのに、結界の中には丘の様な緑豊かな山が佇んでいた。
ロザリアンヌ達は早速上空からその山を眺めると、人が住んでいる形跡などまるで無かった。
しかし頂上付近にとても綺麗な彩とりどりの花が咲き乱れる美しい場所を見つけた。
上空から見るとまるで一枚の絵画を見ている様で、その美しさに心から感動していた。
「綺麗・・・」
「綺麗だねー」
「ああとても美しい」
そしてよく見ると、花園の中央に小さな東屋の様な建物があるのを見つけ、ロザリアンヌ達はそこへ降り立った。
東屋の中央にはテーブルと椅子が置かれていて、この花園の景色を楽しめる場所なのだと言うのが分かった。
しかし良く考えてみたら春が近いとはいえ、今の季節は花とは無縁の時期だ。
温室の様に温度管理がされていないのに、なぜこんなに見事に花が咲き乱れているのか、ロザリアンヌはとても不思議だった。
そして東屋の周りを見回すと、すぐ傍にお墓が建っているのを見つけた。
ロザリアンヌはお墓の前まで行き大理石で作られている墓標を見ると、≪エリスここに眠る≫と書いてあった。
「エリスってもしかして」
「ああ、初代聖女の名だな」
「ってことは、このお墓もこの花園も光の精霊が作ったって事かな?」
「結界を張ったのが光の精霊なら、当然そういう事になるだろうな」
ロザリアンヌとレヴィアスが推察をしている間、キラルの様子が段々おかしくなって行く事に二人は気付いてはいなかった。




