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すみません書き溜めが無くなりました。今日から一日一話午前一時の更新に戻ります。
念の為3日から5日分の予約投稿はしてありますが、毎日の更新を欠かさない様努力します。
「レヴィアスごめんね。大賢者様の事を公表する様にユーリと交渉してみたけど、上手く行くか分からないわ」
ロザリアンヌはユーリと学校で話した事を詳しく聞かせていた。
「良いのだ、実は私も迷っていた。私が抱いていた思いは誰にどうぶつけて良いのか、どうしたら晴れるのか考えても答えが出なかった。しかしこの証拠さえあれば教会が永遠の寄付を得ていた様に、いつか役に立つかと思う事で気を紛らしていた。いや、違うな。私はもう既にマスターの事は思い出にできているのかも知れない。おまえやキラルの存在の方が大事になっているといったところだろう」
レヴィアスは何やら自己分析の結果を話している様だった。
そしてロザリアンヌは、レヴィアスが正直な思いを聞かせてくれた事に少なからず驚いていた。
いつもなら何を考え何をしようとしているのか秘密にされているというか、ロザリアンヌに詳しく話してくれる事は無かった。
レヴィアスの初めての反応に、ロザリアンヌもどう返して良いのか迷う。
そして何より、今はロザリアンヌやキラルの存在を大事だと思っていてくれる事が本当に嬉しかった。
「何だかそんなにはっきりと大事だなんて言われると照れるわね」
ロザリアンヌは照れくささを隠し、少し戯けた調子でボケてみせる。
「愛の告白をした訳では無い。勘違いするなよ」
「わ、分かってるわよ、そんな事」
まさかの返しにロザリアンヌの方が動揺してしまう。
それにしてもレヴィアスの口から≪愛≫なんて言葉が出てくるとは本当に驚きだった。
精霊でも愛だの恋だのを考える事があるのだろうか?
いや、きっとあるのだろうが、何と言うか中性的な性別の無い存在だからそんな事には疎いとか関係ないと勝手に思っていた。
「だから自動翻訳機のお礼は別の物でたっぷり貰え」
「別の物って言われても、私にはなかなか思いつかないんだもん」
正直ロザリアンヌが今どうしても欲しい物などすぐには思いつかなかった。
自分が欲しいものは錬金術で錬成すればどうにかなると思っている。
敢えて言うならその為の素材とかレシピとか、そんな物になるだろうか。
お金だって正直言って今現在別段困る事も無いので、いくら欲しいと聞かれても困るし。
「おまえはそう言う所に欲が無いのが困りものだな」
レヴィアスは呆れたという顔ではなく、何故か嬉しそうに言う。
「どうせ私には交渉はできませんよ」
「まあいずれはできるようになる事だ、焦る事は無い。それよりも相手の出方でまた決めれば良いだろう。次は私も同席しよう」
レヴィアスが次の交渉は一緒に居てくれると言うので、ロザリアンヌは心からホッとしていた。
「うん、すべて全部任せるから。よろしくね」
「頼り過ぎると本当にできなくなるぞ」
今度はレヴィアスに呆れ顔を向けられ、ロザリアンヌはレヴィアスから言い出したくせにと納得がいかなかった。
それでもユーリに再度呼ばれた時は、本当に付いて来てくれた。それも認識阻害無しでだ。
「ジュリオと話してみた。私も正直驚いている。それでジュリオからの言伝を伝える」
ユーリはロザリアンヌとキラルとレヴィアスを前に神妙な面持ちで話し始める。
紹介もしていないレヴィアスが何者かのツッコミが無い所を見ると、ユーリにはまるで余裕が無いのが伺えた。
「闇の精霊に会えるのなら会わせて欲しい。自分の耳で事実を確かめたい。だそうだ」
ロザリアンヌは交渉の結果と言うか、取引に対しての答えが聞けるものだと思っていた。
それなのにジュリオからレヴィアスに会いたいと言われるとは考えてもいなかった。
まぁでも、実際にジュリオがロザリアンヌだったとしても同じ要望を出したかも知れない。
そう思うとそれが当然だろうなと思えた。
『レヴィアスどうする?』
『まあ当然だろうな』
『じゃあ良いって返事して良いの?』
『構わない』
「会わせる事は可能ですが、どこでどうお会いすれば良いのですか?」
「本物の精霊ならジュリオに接触するのは可能だろう。ジュリオはいつでも構わないと言っていた」
ロザリアンヌはユーリの返事にそうかと納得した。
レヴィアスが擬人化しているとはジュリオもユーリも思ってもいない。
なのでジュリオでは精霊に気付かず見えないかも知れないと。
だからレヴィアスの方から接触して来いと言っているのだろう。
(あの薄ぼんやりしていた王子様もなかなか考えるようになったじゃない)
ロザリアンヌは自分の事を棚に上げて、ジュリオの事を何か言っていた。
『レヴィアスどうする?』
『私もいつでも構わない。何ならこの足で向かっても良いぞ』
「分かりました。では今から王城に行ってみます」
「今から行くって、呼ばれているのはおまえじゃないぞ闇の精霊だ。それにおまえが行ってもそう簡単に王城に入れると思うな。何なら私が同行する」
「必要ありません、勿論私ではなく闇の精霊を向かわせますから」
明らかに動揺を隠せないであたふたするユーリに、ロザリアンヌは余裕の笑みを浮かべる。
そしていまだあたふたするユーリを他所に、ロザリアンヌ達はさっさと退出し王城へと向かった。




