CDとは!夜眠れないのでアナログとデジタルとをぼんやりと考えてみたら迷走した(10)
●CDとは!夜眠れないのでアナログとデジタルとをぼんやりと考えてみたら迷走した(10)ー媒体4
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今回は、音楽のデジタルな媒体であるCDの中身の話です。
CDにはPCM録音された、デジタルな信号が記録されているはずですが、本当にデジタルに記録されているのか調べてみました。
...いえね、磁気記録が本当にアナログなのか調べていたら深みにハマってしまって(磁区の観察とか、バルクハウゼン効果とか)。ちょっと気分転換も兼ねて。
そんな話ですみません。
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レコードは、外側から内側に向かって渦巻き状の音溝があって、音溝に刻まれた凸凹がそのままに音の振動に相応します。なのでアナログです。
CDの場合は、(レコードとは逆に)内側から外側に向かって、渦巻き状にトラックがあります。トラックは円盤の裏面から見える側にあるのですが、細かくて肉眼では見えないですね。
トラックの間隔は 1.6±0.1μm です。1μm とは 0.001mm のことです。レコードの音溝は音圧により蛇行したり溝が深くなったりしますが、CDのトラックは一定間隔です。
トラック上には「ピット」と呼ばれる突起が並んでいて、ピットの長さと、ピットが無い部分(ランドと言う)の長さで信号を記録します。
ピットの幅は約 0.5μm、高さは約 0.1±0.01μm です(およその値らしいです)
トラックを横からみると、こんな感じで凸凹しているはずです。
┏━━━┓ 4T ┏━━━━━┓
━━━┛ 3T ┗━━━━┛ 5T ┗━━━・・・・
そして、ピットとランドの長さは「3T〜11T」と規定されています。「T」という単位があって、3Tはその3倍、11Tは11倍の長さです。Tについては後述しますね。
つまり、ピットとランドの長さは、3T、4T、5T、6T、7T、8T、9T、10T、11Tという離散的な9つの値があって、これらで信号を表すのです。これはデジタルですね。
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いきなり結論が出ましたが、あと少しだけ続けますね。基本、駄文ですからよろしくお願いします。
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ピットは穴(くぼみ、凹)ではないので、ご注意を!
CDの表面はラベルが印刷されている側で、裏面は銀色のキラキラしている側です。傾きによってレインボーな色が見えたりして面白いですね。
CDは表面から順に、ラベル印刷・保護層・アルミ反射膜・ポリカボネート樹脂の4層で構成されています。
全部で 1.2mm(CD規格では 1.1〜1.5mm)の厚さで、その大部分がポリカボネート樹脂(1.2±0.1mm)です。
アルミ反射膜は 0.1μm 位、保護膜は 10〜30μm 位、ラベル印刷も 20μm 位...、だいたいの値よ。
CDの断面のイメージです。
表面側
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・
┃ ラベル印刷(20μm)
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・
┃ 保護層(10〜30μm) ↓アルミ反射膜(0.1μm)
┣━━━┓ ┏━━━━━━━┓ ┏━━━━━━・・・
┃ ┗━━━┛ ┗━━━┛
┃ ↑トラック(幅0.5μm, 高さ0.1μm)
┃
┃ ↑ ↑
┃ +ーーーーーーーーーーー+ トラックの間隔(1.6±0.1μm)
┃
〜
〜
┃
┃ ポリカボネート樹脂(1.2±0.1mm)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・
裏面側
CDは、ポリカボネート樹脂が本体です。ポリカボネート樹脂は透明(光透過率87%以上とか)で、CDを裏面側から見たときにキラキラしているのは、アルミ反射膜です。
CDを製造する際には、溶かしたポリカボネート樹脂を高圧でスタンパーに流し当て、スタンパーの凸凹を転写しつつ、円盤状に成形します。このスタンパーはレコードの製造工程で出てきたスタンパー盤と同様なものです。
それから、アルミ反射膜を蒸着して、さらに保護膜(ラッカー樹脂)を塗布して紫外線で硬化させて、ラベルを印刷します。
それで、ですね...、表面側からポリカボネート樹脂を見たら、ピットは穴なのですが。
CDを再生する際には裏面側からレーザーを当てて、アルミ反射膜で反射した光でピットかランドかを検出します。レーザーはランドの高さに焦点を合わせてあって、ランドだと反射光が強く、ビットだと 0.1μm だけ手前で反射するため、干渉等により反射光が弱くなります。この反射光の強弱で検出するわけです。
なのでピットと言いながらも、CDのピットは突起(凸)と言うのです。
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高校とかの教科書ではCDの原理を解説していますよね。正しく説明しているか読み直して見ましょう! 結構間違った説明が(昔は?)あったそうです。
CDの表面からアルミ反射膜までは薄いと 30μm(つまり、0.03 ミリ)しかありません。CDのラベルにボールペン等で力強くメモ書きをしたら、アルミ反射膜が傷ついてしまいます。最悪、音楽が聴けなくなるかも。
逆にCDの裏面はポリカボネート樹脂が1ミリ以上あるため、浅いキズなら丁寧に研磨すれば回復できるらしいです。
取扱注意が必要なのは表面側って、意外なことですね。
「気になるモノにズームインTOP>CDには何が書き込まれているの?」(東海電子顕微鏡解析、2017年7月)というページを見つけました。CD(と言いながらCD-ROMですが)とCD-Rの記録面を電子顕微鏡で観察した画像が沢山あって楽しいです。電子顕微鏡って、うちにも欲しいなー
アルミではなく純金の反射膜で、ポリカボネートではなくてガラスで出来たCDも開発されているとか。1枚18万円ですって。音質が良いそうです。あははは。
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CDの直径は12cm(120±0.3mm)です。中央には直径 15.0mm の穴が空いていて、穴の周囲 9mm まではCDを保持するためのスペースです。
CDの中心から、23 〜 58.5mm が信号を記録できる範囲です。そのうち、23〜25mm は「リードイン」、58〜58.5mm は「リードアウト」という信号を記録する場所です。
音楽の部分は(最大で)25〜58mm の範囲です。リードアウトは音楽の直後に続くので、音楽の時間が短い場合いは 58mm より内側に記録されます。
リードインはTOC(目次)です。各曲の開始場所などが入っています。
リードアウトは1分 36 秒で音楽の終わりを示し、その後の 24 秒はマスター情報領域といって、CD製作用のCD-Rで使用するそうです。CUEシートの情報とかを格納するらしい。
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最近CDを何枚か買ってきて観察していたりします。そんなCDの裏面の写真を撮りました。それらしき模様がありますね。このCDには9曲あって、曲と曲の間に少しの隙間が見えます。
23〜25mm はリードインで、25〜49mm は音楽、49〜49.5mm はリードアウト。その後の 49.5〜56.5mm は無音かな。56.5〜58.7mm が黒いのは謎。58.7〜60.0mm は透明なポリカボネート樹脂です。
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レコードは 33 回転などと再生する場所によらず回転数は一定です。そのため、内側になるにつれて1回転分の長さが短くなり、音溝に刻まれる凸凹は窮屈になります。それで高音が厳しくなるのです。この方式を角速度一定(Constant Angular Velocity, CAV)と言います。
CDの場合は、線速度一定(Constant Linear Velocity, CLV)と言って、再生する場所によって回転数を変えて、線速度を一定にする方式です。CLVだと記録密度が一定になって、つまりピットやランドの長さ(3Tとか)を一定にできるのです。
具体的には、回転始めはピットが検出される時間の最大値(11Tの時間)を測定して、これが一定になるように回転速度を調整します。回転が安定した後はピットの長さをPLL回路に入力して1Tの長さを検出して、これが一定になるように調整します(製品によって制御方法は違うかも知れません)。
線速度は 1.20〜1.40m/s で、代表値は 1.25m/s らしいです...、ん? それと記録時の線速度の変位は ±0.01m/s です。
この値を元にCDの回転数(rpm)を求めると、内側は1周 2*3.14*25 = 157.0mm なので、線速度 1.20m/s なら 1.20*60/0.157 = 458rpm です。同様に計算すると、
内側(25mm): 458 〜 535 rpm
外側(58mm): 197 〜 230 rpm
となります。CDの回転数が 197 〜 230rpm などと幅があるのは何だか怪しい雰囲気ですね。CDはデジタルでは無いのかな?
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実は、線速度(1.2〜1.4m/s)はCD制作者が決めるパラメータなのです。調べていて、吃驚しました!
線速度が遅いとその分だけ音楽を長く記録できて、速いと短くなるのです。それで記録したい音楽の長さによって線速度を決めるのです。
線速度の設定はピットの長さを決める単位「T」で行うようです。11Tの検出時間で回転速度を調整するのですからね。線速度が 1.25m/s のとき、11Tは 3.18μm だそうです。
ピットの長さは、長い方が再生時に余裕ができるので、音楽が短いならピットは長くした方がよいのですね。
ただね。レコードの場合は回転が速いとそれに応じて音質が良くなると期待できますけど、CDの場合はピットの読み取り時のエラー率に影響する程度なので音質には影響しないですけどね...、原理的には。
CDプレーヤーによっては、エラー検出訂正の処理で雑音が入ることもあるそうです。それは残念な機種ですね。
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CDに記録できる時間は、最大74分43秒と言います。あるいは74分42秒とも。
CDの規格を決めるとき、ソニー社のえらい人がカラヤンさんのリクエストでベートーベンの「交響曲第9番」が入る時間にしよう、と主張して決まったそうです。これは有名な逸話ですね。本当かどうかは別として。
音楽は 25〜58mm の範囲、トラック間隔は 1.6μm として、単純にトラックの長さを計算すると、えーと、
tl=0.0; pi=3.14159265; rate=1000*1000
for r in range(25*rate,58*rate+1,1600):
tl += 2*pi*r
print tl/rate/1000,"m"
> 5378.274 m
5.378km です。線速度が 1.20m/s なら、5378.274/1.20 = 4481.89sec で74分41.89秒です(だいたいあっている?)。これが良く言われるCDの最大時間なのでしょう。
線速度が 1.40m/s なら64分1.62秒になります。
CDの音楽の時間は64分から74分の間で設定できるのですね。
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CDは、こんなんでもデジタルで良いのかと、...うーむ、と悩みましたが、デジタルで良いですよね。信号の記録の仕方に若干アナログっぽい雰囲気があるだけで、信号自体はデジタルだから。線速度はキャリア周波数のようなもの。
PCMはともかく、PWMはどうなのって、どこかの感想欄でコメントを下さった方、ありがとうございます。
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もう少しだけ続けます。
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日本レコード協会の「CD用CD−Rマスタ運用基準」(RIS105-1994)では、プログラム収録時間(標準)は74分43秒(最長)となっています。
ところが、CDプレス工場では、78分59秒までプレス可能だが再生保証は74分42秒までと案内しているところや、78分34秒や79分38秒まで再生保証と案内しているところもあります。
...大丈夫かな?
逆算するとトラック間隔が 1.5μm で、線速度が 1.20m/s のときに79分40.67秒でした。割と保守的でした。CDを名乗るなら当然か。
標準的な音楽用CDなら74分で、CD規格の許す範囲でトラック間隔を狭くすれば79分でも入らなくはない、という感じですかね。
CD規格ではトラック間隔を「1.6±0.1μm」と記述しているので 1.6μm が標準的として、1.5μm は一応規格内ではある(はずですよね)。けれどそんな音楽CDには賛否ありそう。CDの理解を更に深めないと。
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CD-Rには、650MB(74分相当)と700MB(80分相当)の2種類があります。
CDは1秒で75セクタあって、音楽用なら1セクタに 44100*2*2/75 = 2352 バイトが入りますが、データ用(CD-ROMで Mode1)の場合は、同期検出 16 バイトと誤り検出訂正 288 バイトが追加されて、格納できるデータは 2352 - (16+288) = 2048 バイトになります。本シリーズ(12)も見てね。
よって、650MBのCD-Rであれば、
(650*1024*1024) / (2048*75) / 60 = 73.955(73分57.33秒)
です。同様に700MBなら79分38.66秒となります。
推測ですが、650MBのCD-Rはトラック間隔が 1.6μm で、700MBは 1.5μm なのでしょう。
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レーザーポインターを使って回折格子によりCDのトラックピッチの測定実験ができるそうです。
木下正博「CD、DVDを用いた光の回折・干渉実験」2009年
(https : //www.toray-sf.or.jp/awards/education/pdf/h21_06.pdf)
三重大学工学部「レーザーポインターで測るCDの溝間隔」2016年10月11日
(https : //www.mirai-kougaku.jp/laboratory/pages/161011.php)
CDのトラックピッチは個体差があり 1.52〜1.65μm で、650MBのCD-Rは約 1.60μm、700MBだと約 1.50μm ですって。
凄く興味深いですね! 後でやってみよう。とりあえずCDにレーザーポインターを当てると反射光が3点できるのは観察できた。あとは測定精度。
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CDやCD-Rには80分以上の音楽が記録されたものがあります。
Wikiによると、ブルックナーの「交響曲第3番」が89分3秒ですって。こんなのどうなっているのでしょうか?
調べてみましたら、2003年4月に「High Capacity Recordable Disc Systems」という文書が作成されていて、
・トラック間隔: 1.28 〜 1.5 μm
・線速度 : 1.13 〜 1.20 m/s
と定義されました。ただしCD-R等と名乗る(CDのロゴマークを付ける)ことはできず、HC-R等と呼ぶそうです。
2003年頃には80分を超えたCD(あるいはCD-R)が出始めていて、その規格がバラバラだったので、この文書が作成されたそうです。1曲の音楽を1枚に出来るか、2枚に分割されるかは切実な感じ。
トラックの間隔が 1.28μm だと、トラックの長さは 6.722km に延びます。さらに線速度が 1.13m/s まで遅くなると、記録できる時間は99分9.28秒です。
これで大容量化!
トラックは渦巻き状の1本の線なので、CDの光ピックアップがトラックを追跡できる限りは、トラック間隔が 1.6μm より多少狭くなっても再生できるのでしょう。再生できない機種も(当時は)あったのでしょうけれど。
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元々のCD(1982年)は、トラック間隔は 1.6±0.1μm で、線速度は 1.20〜1.40m/s の範囲でした。
これが2003年頃には80分以上を記録できるCD-R等が出てきたために、トラック間隔は 1.28〜1.5 μm の範囲、線速度は 1.13〜1.20m/s の範囲とするHC-Rができました。
これは技術の進歩で、記録密度をあげることが可能になったからだと想像します。CDドライブでは48倍速とかあったし、DVDはもっと高密度ですし。
CDに記録されている信号は離散的な値で、エラーがなければ記録密度には関係なく全く同じ値を読み出すことができます。つまり音質に影響しません。レコードの音質は回転数の影響もあるのとは対照的ですね。
CDに記録されている信号はデジタルでよいでしょう、というのが今日の結論です。
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この後、リードインとか、1フレームは588チャネルビットとかの話に行くつもりだったのですが長くなったので、ここで(一旦)切ります。続きは本シリーズの(12)にあります。
タイトルには「CDを読もう」とありますが、タイトル詐欺でした! ごめんよー
今回のオチはどこか分からないって! オチ(結論)書いてみたよー
アナログはどこ行った? もう迷子だよー
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間違いの指摘とか疑問とか、ご意見・ご感想とかありましたら、どうぞ感想欄に!
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2024.5.19 誤字修正。内容に変更はほぼありません。
2024.5.20 オチを追加。微推敲。
2024.5.22 微推敲。
2024.10.26 推敲。
2024.11.17 推敲。
2024.11.26 推敲。
2025.4.29 微推敲。
2025.5.24 微推敲。