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落華紅椿  作者: 椏麗岬ヒルデ
2/2

弐話目

朱桜に連れられて軍の敷地内の居住区へと足を運ぶ。非番の陰陽師達がギョッとしたようにこちらに目線を送る。それはそうだろう、幽閉されている殺戮兵器が出歩いていれば。それに番号持ちが二人揃っているのも珍しいのだろう。

番号持ちの陰陽師は俺や朱桜を含めて十一人しかいない。俺を除いた朱桜以下十人全員が二つの魔属性を持ち、十名の英雄達_ディエスヘイト_と呼ばれている。国民全員の憧れ、そして救世主、正義の象徴なのだ。

第壱席次は朱桜、第弐席次の朽葉芍薬、第参席次が勝桔梗、第肆席次に錆梅、第伍席次蘇芳蓮華、第陸席次空撫子、第漆席次緋薔薇、第捌席次灰梔子、第玖席次珊瑚枝垂、第拾席次紺桃。滅多に集まることはなく、普段は各々地方での治安維持に精を出している。


「あれぇ、引きこもりの落椿クンだぁ。メズラシ~」


場違いに明るい掠れ声が飛び込んでくる。性別のわかりづらいその声の持ち主は、錆色をしたぼさぼさ髪の英雄だった。


「錆梅か……」


「久しぶりの同僚にそれはないでしょ~。お、朱桜センパイもどぉもぉ。昨日?一昨日?振りですねぇ」


「一昨日会っただろう錆梅。暇なら落椿の靴出してくれないか?忘れてしまって」


「はぁい~、センパイってばおっちょこですねぇ」


プツンと錆梅が髪を数本抜くとそれは形を変えて支給される軍靴になる。これが第肆席次錆梅の魔属性、自身の体の一部を使用して生き物以外の全てを作り出す《製造》。そしてそのデメリットを無効にする《超回復》。


「ありがとう」


「いいえ~。どういたしましてぇ。てか何しに行くの?誘拐?」


「違うねぇ。此奴の家行くんだよ。錆梅も行くかい?」


「お、行く~。ヒキコモリ君の新しい家いきたぁい」


「ヒキコモリヒキコモリ五月蠅いぞ、錆梅。朱桜、早く案内しろ、紅椿が寝た」


「嗚呼ごめん落椿。もうつくよ。」


眠ってしまった紅椿を起こさないように歩いて朱桜の案内に再び続く。言葉通り錆梅と出会った場所から歩いてすぐに目的地に到着した。立派な入口を抜け、石畳を進み、引き戸を開ける。


「寝室は奥行って右手な。先紅椿寝かしてきてやれよ。嫁さんが色々用意してくれたみたいだから」


「嗚呼。臙枇杷さんに礼を言っておいてくれるか」


「勿論」


靴を脱ぎ、家に上がって言われた通り寝室へ向かう。室内は薄桃色でまとめられていて家具は紅椿が使いやすいように少し小さめにそろえられている。

紅椿をそっとベッドにおろして、布団をかけ撫でてみれば小さくうめいた後控えめに擦り寄ってきた。


「まま…?」


「起こしたか」


「んーん…。あのね、まま。ほんとにぱぱむかえにきてくれたよ…」


「そうか」


「べにとおんなじおなまえでね、まっかなかみのけでね、やさしいかおでね」


「嗚呼」


「だっこしてくれてね…それ、で…」


「おやすみ、紅椿」


いくら魔力が膨大な量あろうと、普通なら大の大人一人搾り取れる出力の手枷に触れていて疲れてしまったのだろう。紅椿は穏やかに寝息を立ててシーツにくるまっている。頭を軽く一度撫でて部屋から出ていく。


「寝たか?」


「嗚呼。ぐっすりだ。」


「ほぉ。起こしちゃ悪いから居間で話すか」


部屋から出たところで朱桜が待ち受けていたようで、そのまま共に居間に向かう。それとなくいい加減手枷を外せとアピールをするが頑なに拒否をされてしまった。


「あ~、おかえり~」


「錆梅、お前暇なのか」


「いんやぁ?とてつもなく忙しいよ?」


居間に我が物顔でくつろぐ錆梅が悪戯小僧のように笑いかけてくる。対面の椅子に腰かければ、ギシリと軋んだ音を立てている。



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