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チグハグメイズ  作者: 赤ずきん
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魅惑のチグハ

私は赤ずきんと申します。この度は、『チグハグメイズ』という作品を手に取っていただき、ありがとうございます。この作品は完成する可能性が低いため、途中までしか書くことができませんでしたが、どうしても供養したいという思いから、ここに公開することにしました。

転勤。それはいきなりだった。

地元から家族で都会へ引っ越そう、なんて言われた時は猛反対してしまった。

そりゃ、当然だろう。今まで一緒に遊んでた友人や、近所の八百屋のおばちゃん。そして、恋人。

すべてに別れを告げなくちゃいけない。でも、親父も悪気があった訳じゃ無いだろう。許してやろう。新しい所でも友達を作れば良いだけの話だ。

正直、かなり難しいと思っているが、何とかなるだろう。僕は未来に目を瞑るんだ。未来は明るいんだ!そう、自分に言い聞かせて、今日は眠るんだ。明日は学校だ。早く眠ろう。


ガタンゴトンガタンゴトン……


 久しぶりに電車に乗るものだから酔ってきてしまった。

降りたら、薬局に行こう。近くにあったはずだ。にしても、都会はすごいな。沢山の人でひしめきあっている。

 今日は運よく座れたが、そう毎日は座れないだろう。まだ到着までに時間がありそうだな。持参した、ラノベでも読もう。

 この趣味は流石に受け入れてもらえないだろう。無難に自己紹介して、無難な友達を作って、いじめられないように、立ち回ろう。せめて、友達を一人作ろう。


「次は冠宿~冠宿~。降り口は右側です」


もう着いたようだ。急いで薬局へ向かおう。


「いらっしゃいませ~。どうされましたか?」

「すみません、酔い止めに効く薬おいてませんか?」

「少々お待ちください」

店員は足早に薬を探しに行ったようだ。感じのいい店員だったな。


 バス停の場所が分からない。一体どうすべきか。

もう時間が迫ってきている。急がないといけない。駅員に聞いてみるか。

少し走るか。


突如、目の前に制服を着た女性が現れた。突然だったので避けきれなかった。


「キャッ!」


僕はその衝撃で転んだ。膝を擦りむいて痛い。そんな事より、相手が心配だ。


「あの!大丈夫ですか!?」

「う、うん。大丈夫よ」


どこも怪我してないか。とても心配だ。


「怪我してませんか?」

「大丈夫だから」


申し訳無い事をしてしまった。


「本当にすみません」

「謝らないで。どこも怪我してないから」

「良かったです」

「あら……これ」


女性は、僕のバッグから落ちたラノベを見ていた。凄く恥ずかしい。


「すみません、落としちゃったみたいで……」

「クライム&パニッシュメント……王様に貰ったスキルは鑑定でした……?」


クソー!こんな大勢のが居る中でタイトル読み上げやがった。

酷すぎる。絶対わざとだ。僕にはわかる。どれだけ読んでたラノベを馬鹿にされたか。

この女には知る由もないか。


「これ、君の……?」

「そ……そうです」


何か言いたいことが有るんだろ?早く言ってくれよ。


「これラノベ?」

「……はい」


女性が顔を近づけてくる。


「ッ……!」

「君、良い趣味してるね」

「チ……近い……」

「あれ?君……ドキドキしてるね?」


なんだろう、この女性は。謎の魅力を感じる。


「どうしたのかな?顔、赤いよ?」

「あの……本、返してもらえませんか?」

「ごめんね」


ドキドキした。底が見えない瞳に

このまま顔を近づけていると、顔が真っ赤になって大変なことになって居たと思う。


「君、冠校の生徒?1年生?」

「あ、いや転校してきたんです。二年っす」

「へー、同い年……」


そういえば、バス停の場所分かんないんだった。


「それじゃ」

「あの!」

「ん?どーしたの?」

「バス停の場所、分かんなくて……」


彼女は、長い髪の毛を耳に掛けている。その姿に僕は見惚れていた。


「私と一緒だったね。一緒に行こう?そろそろ時間だよ?」


とても綺麗だ。


「ん?ねぇ聞いてる?」


……好きだ


「ん?どうしたの?」

「はっ、はい!?」

「ねぇ、行くよ。遅れちゃうよ?」


慌ててバスに乗った。


これは完全に一目惚れだ。

僕は今まで幼馴染と付き合って来たけど、転校するから、最後に別れの言葉を告げた。


バスが止まる。


「じゃあね」


その一言を聞いてなんだかほっとした。

一目惚れの相手が隣に居てずっと、ドキドキしていた。

ここが、僕が通う高校。冠高等学校。

僕の新しい生活が始まる。


キーンコーンカーンコーン


「転校生だ。ほら自己紹介しろ」


何だこの感じ悪い教師は……この担任とは仲良く出来なさそうだな。


「糾州から来ました。蒼空メイズと言います。趣味は……読書です。よろしくお願いします」


クラスの皆は拍手をした。

パッと見、皆優しそうだ。とりあえず友達を作る事が目標だな。頑張ろう。


「えー、メイズくんは……1番後ろの空いてる席だ。早く座れ」


この担任に腹が立ってきた。


「メイズくんココ!」


この女性は誰だろう?気安く話しかけてくれている。


「どうも、メイズです。よろしくお願いします」

「私の名前は高梨アスカって言うんだ!これからよろしくね!」


妙に親切に話しかけてくれるな。


「教科書って持ってる?」


その言葉に気付いたのか担任の先生がこちらへ来る。


「あぁ、メイズくん。教科書まだ、貰って無いと思うけど、前の学校で使ってた教科書は持ってきたか?」

「はい、一応」

「数学Aと体育の教科書だけは2年生で変わる。だからその分、徴収するから明日持ってくるように」


封筒を貰った。とても息が臭かった。近くで話さないで欲しい。


「持ってない教科書は見せてあげるね!」

「ありがとうございます」


キーンコーンカーンコーン


漸く放課後になった。

今朝、出会った女性にお礼を言い忘れて居た。

少し校内を探索がてらに、探してみるとするか。


『サッカー部、見学していきませんかー?』


『水泳部、見ていきませんか?』


『射撃部、体験入部如何ですか?』


『アニメ制作部、募集やってます』


『騒動部、部員募集中です!』


1年生の部活の勧誘をやってるのだろうか?

僕も何か部活に入らないとな。


「サッカー部に入りませんか?」


突如声を掛けられてビックリする。


「ッ……サッカー部?」

「1年生ですか?」

「あ、いや2年です。今日転校してきました」

「転校生なら、まだ部活は入ってませんよね?どうです?サッカー部」


サッカーは嫌いだ。というかスポーツが苦手なので自動的にサッカーも嫌いというわけだ。


「サッカー苦手なので……いいです」

「サッカー出来なくて良いんです!皆、初めてなんです!仮入部だけでも!」


執拗い。入らないって言ってるだろ。

なんて言ったら引いてくれるのだろう。


「だから、サッカーは嫌いなので入部はしません!」

「そっか、じゃあチラシだけでも」


本当に執拗い。


「チラシ?」

「冠高の部活動一覧が書いたチラシだよ。是非参考にしてね」


僕にチラシを渡すと足早に去っていった。


何か面白そうな部活は無いだろうか?

文化部が良いな。運動部は運動が苦手だから辞めておこう。


何?アニメ制作部?どんな部活だろうか?まぁ僕は絵を描けないただの陰キャなんだが、少し気になった。短編アニメでも作っているのかな。全く、学生の青春をアニメ制作に使うなんて……僕みたいな陰キャが集まって制作してるんじゃ無いかと疑いたくなる。

すごく差別発言してるように聞こえるのは気の所為だろうか。今まで差別されて来たから、其れに慣れてしまったのだろう。

良くないな。考え方も変える必要が居るかもしれない。


ここがアニメ制作部か?絵は描けないけどどうしようか。


絵が描けないのに、

『なんでアニメ制作部に来たの?絵、描けないんでしょ?出ていって!』

なんて言われたら、心に深いキズを負ってしまいそうだ。

僕は普通の部活にしようかな。文芸部とか、写真部とか、良いと思う。


「もしかして見学しに来たの!?入りなさい!」


いきなりドアが空いたと思ったら、見学しに来たと勘違いされた。


「いや、気になってたんですけど、絵とか、全く描けなくて……だから失礼しました」

「待ちなさい!良いから入りなさいよ!」

「ちょ、待てよ!」


なんだコイツ。ほぼ強制じゃないか?これ。


「まぁまぁ座って!」


入ってすぐにソファがあったので、遠慮なく座らせてもらう。


「ここは、アニメ研究部よ!うちの名前はサララ!松田サララ。よろしく!」


意外と広い部室のようだ。こういうニッチな部活はあまり広い部屋を使わせて貰えないとか思ったけど、そんな事も無いようだ。


「よろしくお願いします!蒼空メイズと言います!」


後ろからドアの空いた音がした。

僕は軽く会釈をした。


「あ、どうも」


見覚えのある顔だった。

そう、今朝出会った女性だった。


「その声は……朝の?」

「朝?」


するとサララが疑問に思ったようだ。


「朝な、色々あって」

「そう、この子、私にぶつかって来てね」

「怪しいねぇ」


サララさん。初対面だが、あまり良い印象が持てない。


「何もしてないんだけど」


そうだそうだ。言ってやれ!

ところで、この女性の名前聞いてなかったな。


「変な勘違いさせるような発言して悪かったね」

「いえ、大丈夫です」


彼女は、長い髪の毛を耳に掛けている。この動きにくぎ付けになってしまいそうだ。


「ところで、君の名前まだ聞いてないね」

「あ、僕の名前はメイズです!蒼空メイズ」


彼女の目はとても綺麗だ。何にも汚されない、そんな瞳を持っている。


「私は、風見チグハ。よろしくね。メイズくん」

「は、はい!」


ひとつ疑問がある。

何故、チグハさんは、僕の目を見てくれないのだろう?


「ところで、君は部活を見学しにきたのかな?」


チグハさんは、僕を見つめながら言う。


「まぁ、そんな所ですね」

「何する部活か知ってるの?」


チグハさんはさらに顔を近づけてくる。


「ち、近いです……」

「知らないで来たの?」

「はい……」


チグハさんは、僕から顔を遠ざける。僕は凄くドキドキしている。素直に拒否できるような勇気は、僕にはない。


「ねぇ、部長ちゃん」

「どうしたの?サララ」

「メイズに教えようよ!せっかく見学にきたんだしさ!」

「そうだね……いいよ。メイズくん」


綺麗な瞳で僕を見ている。そう、僕の目を見てくれてはいない。


「はい?」

「メイズくん。アニメは好きかな?」

「……はい。人並みには?」

「そう。だったら、一緒にアニメ作らない?」


沈黙が続く。いきなり問われ、頭の中で整理ができない。アニメを作るには、絵が描けないといけないだろう。

僕は、絵を描くことは出来ない。どんなに頑張ろうとも、棒人間しか描けないだろう。


「答えて」


チグハさんは、再び僕の前まで来て、顔を近づけた。


「あのっ!僕、絵、描けません」

「……私もよ。察してるのかもしれないけどね、私、目が見えないの」

「目が見えない……?」


違和感の正体は解決した。初めて会った時から今にかけて、僕の目を見てくれなかった。どこを見ているか分からなかった。しかし、更に違和感を感じている。目が見えなくても何不自由なく生活できているようだ。普通は介護をされているだろう。僕の正確な位置の把握、まっすぐな歩行。どこかがおかしいと思う。


「ねぇ、私ってね、結構恥ずかし屋さんなんだ。それなのにこんなに顔を近づけられる。目が見えないからなんだ」

「ち、近いです!」

「また、君の心臓、ドキドキいってるね」

「ちがっ!この音は……」

「私には分かるの。自分にウソ吐いちゃダメだよ」


チグハさんの息が顔に掛かる。良いにおいがする。


「私の息匂っちゃダメだよ」

「メイズの変態ヤロー!」

「いいよ。男の子なんだから。そのくらいの方が男らしい」


……好きだ


「実は私、すごく耳がいいんだ」

「だから心臓の音とか聞こえるんですね」

「そう。男の子の近く歩くだけで、ドクンドクン聞こえる」


チグハさんに心臓を鷲掴みにされた気分がする。


「で、さっきの答えどうするのかな?まだ出ないみたいだね」

「部長ちゃん!ヤローに私たちが作ったアニメ見せよう?」

「良い案だね。サララ」


自主制作アニメか。チグハさんが作ったアニメ。凄く気になる。


「興味あります!見せてください!」

「興味シンシンだね。凄く良いと思うよ。メイズくん」


サララが一枚のDVDディスクを持ってくる。


「メイズ!このDVDのタイトルを読み上げなさい!」


サララさんは随分と強引だな。僕は少し苦手だ。


「えっーと……イッちゃった娘の……ってこれ!AVじゃねーかよ!」

「メイズくん、えっちなビデオでドキドキしてるね」


チグハさんに恥ずかしい所を見られてしまった。


「サララさん、こういうのやめてください!」


ダメだ。この部活に入れない。早く出よう。


「もう帰ります!」

「ごめんごめん!メイズ!次はちゃんとしたやつだから!」


サララさんは新しいDVDを持ってきた。


「次はちゃんとしたDVDですか?

「そうだよ!《東京エンドストーリー》ってアニメ」

「どんな作品なんですか?」

「とりあえず見てもらえばわかる!早く見ろ!」


「どうだった?メイズくん」

「わっ!」


アニメを見終わった瞬間、耳元で吐息を吹くチグハさんに驚いた。


「感想くれ!メイズ!」


感想と言われても思いつかない。このアニメを見て思ったことは一つ。『つまらない』

世界観が陳腐で、シナリオに深みがない。でも、音楽と作画が素晴らしかった。音楽で心を惹き、作画で深みを出す。クオリティが高い。


「あんまり面白くないですね」


自然とこの言葉を吐いてしまった。


「は?なんだって?」

「メイズくん。何がそんなに面白く無かったのかな?」


もしかして僕、怒られてる?


「えっと、あの、ストーリーです!僕は本をよく読むんですけど、ストーリーが微妙かなって。あまり本を読まない方がシナリオ書いたのかなって!」

「ふーん。メイズくんはいい目を持ってるんだね」

「え?」

「シナリオは部員皆で考えたんだけど、シナリオが得意な子がいないの」

「メイズくんは絵を描けないっていってたよね?」

「はい」

「アニメは絵が描けるだけじゃ作れないんだよ。音楽とシナリオ」

「シナリオ……」


僕は本を読むのが好きだ。小説を書いたりしたこともある。

シナリオが描けるだけでも、アニメを作れる。それにチグハさんの事が好きだ。一目惚れだった。

付き合いたい……


「メイズくん、改めて聞くけど、一緒にアニメ作らない?」

「……わかりました。一緒にアニメ、作りましょう!」


サララが体を回転させながら近づいてくる。


「やったね!部員確保だ!」

「メイズくん、部員が4人しかいなくて廃部寸前だったんだ。ありがとう」


チグハさんに感謝された。僕はアニメ制作部に入部することになった。一目惚れしたチグハさんと一緒の部活に入る事ができた。いつか、告白をしたいと思う。待っていて、僕の青春。そして、チグハさん。


「メイズくん、またドキドキしてるね」

この作品をお読みいただき、ありがとうございました。この小説は完成する可能性が低くなってしまったため、こちらに供養するために投稿しました。続きは残り1話のみとなってしまいましたが、引き続きご愛読いただければ幸いです。

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