22話 宇宙の神秘はパンツから始まる
「大丈夫だ、問題無い」
俺の名前は山形次郎、41歳。そんなこんなのなんじゃねかんじゃねの、うんちゃらかんちゃらで今に至る。
人よりも多少、思い込みが激しいのは理解してる。理解してるが、三つ子の魂、百までって言うだろ?
俺は一人っ子だから三つ子じゃねぇが、それでも魂は永久不変っていうか、思い込んだら一気に駆け抜けるのが俺の生き方だ。
だから変わりたくてもやめたくても、やっぱりやめられねぇよ。
考え方は変われても、思い込みの激しさってどうやったら変われんのか、見当も付かねぇモンを直せる訳ねぇだろ?
ってのが俺の主張さ。
だから、俺はこれからも俺らしく今を生きて行くし、それはずっと変わらねぇと思う。
こっちの方が俺らしくてカッコいいだろ?惚れんなよ!
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「なぁ、オバサン誰?」
「おっ、オバ?!アテクシの事を忘れたと言うのですか?あんなに濃密な時間を過ごしたアテクシの事を?……アテクシの事は遊びだったのですか?」
「なぁ、もっかい聞くけどオバサン一体誰よ?俺は濃密でも三密でも蜂蜜でも壇蜜でも何でもいいが、サッパリ知らねぇんだわ。日本で会った事あったっけ?それとも、こっちに来てからか?まぁ、日本で会ったなら、この姿じゃねぇから分かるわきゃねぇとは思うんだけどよ?それに、俺は遊びじゃヤらねぇんだわ」
「はぁ……全く……それでこそ山形次郎と言うか、相変わらずですね。でも、もう少し付き合いが良くてもいいと思いますよ?まぁ、アテクシは暇なら遊びでも付き合いますけどね?」
「ん?俺の名前を知ってるって事は、日本で会ったのか?それだとしたら、よく俺だって分かったな?オバサンまさか、超能力者ってヤツか?目からビームとか出せんのか?」
「ふふふ。やっぱり山形次郎、貴方は面白いですね。それでこそ、山形次郎と言えます。まぁそれなので、オバサン呼ばわりはいつも通り許してあげます」
「いや、勝手に納得されても許されても意味が分からねぇよ……。で、俺になんか用なのか?とは言っても、俺は夢で見たり聞いたりした事は、起きたらサッパリ覚えてねぇから、今ここで何を言われても覚えてられねぇ自信しかねぇぞ?」
「えぇ、そうでしょうね。これまでと同じ遣り取りですから……はぁ。まぁ、それはさておき、貴方に何を話しても意味が無い事は熟知していますから、貴方に渡す物だけ渡して、アテクシはいなくなるとしましょう」
「渡す物?夢の中で貰っても、意味なんてなくねぇか?」
「それはただの夢ならそうでしょうけど、残念ながらこれはただの夢ではないのですよ。さ、これを受け取りなさい」
「おいおい、幼女のパンツなんていらねぇよ。それに俺には幼女趣味は無ぇんだ」
「流石、山形次郎ね。アテクシの想像の斜め上を行く珍回答に驚きを隠せません。ですが、貴方はこれが幼女のパンツだとしたら、履く事が出来るのですか?ほら、よく見てごらんなさい。脚を入れる穴が無いのに、パンツなワケがないでしょう?」
「確かに……。脚を入れられねぇパンツはパンツじゃねぇな。でも、飛べねぇ筈の豚が飛んでたんだから、穴が無ぇパンツだって履ける……わきゃねぇな。じゃあ、見た目が幼女のパンツそっくりなそりゃ一体何なんだ?」
「これは、アテクシが貴方の為に作った、貴方の為のご褒美です」
「俺へのご褒美が、穴なし幼女パンツだってのか?俺は……」
「幼女趣味は無いのでしょう?だから先ず、見た物を幼女パンツっていう思い込みをやめるべきでわ?」
「ぐっ、痛ぇ所を突かれたぜ」
「貴方は覚えてないでしょうけど、大体いつもこんな感じの遣り取りをやらせられれば、仕舞いには覚えてしまうものですよ」
「そ、そうなのか?なんか……」
「「申し訳無ぇ」でしょ?」
「よし、分かった。オバサンは俺に会った事があって、俺はそれを覚えて無ぇってのは、よおっく分かった。で、そしたらそのご褒美ってのは、一体何なんだ?」
「でも、言った所で、起きたら覚えてないのですから、教えてあげません。だけど、これはご褒美なので渡しておきます。有り難く受け取りなさい」
「わ、分かった。有り難いかどうかは置いといて、受け取っておくぜ」
「貴方には必要なモノなんですから、ちゃあんと有り難がってもいいのですよ?」
「じゃあ、何に使うモノなのか教えてくれたって……」
「教えません。それでは、そろそろ貴方は起きる時間みたいですから、また健やかにラーメン作りに邁進して下さいね。それでは、お元気で」
「うあ……あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ……んッ」
びくっびくっ
「ママ平気?」 / 「まま大丈夫?」 / 「大丈夫母さん?」 / 「お袋!しっかりしろ」
「あ……俺、一体……?みんな、おはよう」
俺はいつも通りみんなに食べられていたようで、全裸になっていた。意識は飛んで無ぇから、ソド切れは起こしてねぇみてぇだ。
だが激しくイカされたみたいで、色んな所から今も止まらず色んな体液が溢れて、滴っているのが見えなくても分かった。
俺はそれ以前に何か夢を見ていた気がするが、何も覚えていなかった。ま、いつもの事だ。日常ってヤツだな。朝から俺が全裸にさせられてるのも、激しい快楽と共に起こされるのもいつも通りだ。
他のヤツからしたら異常かもしれねぇが、これが俺の日常だ。大丈夫だ、問題無い。
「ママ、それどうしたの?」
「それ?それって何だ?ん?何か握り締めてるな……おわぁ!なんだこれ?幼女パンツか?」
「かあさん、それが幼女用のパンツなら、この中に履けるのは誰もいないけど、見た所それはパンツじゃないみたいだよ?」
「そうなのか?ん?確かに脚を入れる穴が無ぇな……。じゃ、なんだこれ?」
俺は全裸のまま、右手に握り締めていた幼女パンツみたいな布切れをまじまじと見詰めていた。ってかさ、この光景こそ普通に考えたら異常だよな?
部屋の中で全裸の俺を取り囲むように、半裸の3人と喋る蔓があって、俺は誰のモノか分からない幼女パンツを握り締めているんだから。
全裸の俺と半裸の三人は日常だから正常だが、問題は誰のか分からねぇ幼女パンツがあるって事だけが異常って事だぜ?
まぁ、誰にも見られる事がないダンジョン内の家の中だから……俺が誰のか分からねぇ幼女パンツを握り締めてても、問題は無ぇとは思うが……。
ん?俺は何か変な事を言ってるかな?
こんこん
「クレア!大丈夫かい?何か、凄い悲鳴が聞こえたけど?何かあったのかい?」
ガバッ
「ヤベぇ!」
って、違った。ここはダンジョン内の家じゃなくて、公爵家の俺の部屋だったんだった!
ヤバいヤバいヤバい!ヤベぇヤベぇヤベぇ!こんな状況をおっさんに見られでもしたら、激おこプンプン丸になるのは目に見えてる以前に、半裸の3人が、おっさんに見られるって事だよな?
流石にそれはマズい。
嫁入り前の娘達の半裸を、おっさんに見られる訳にはいかねぇだろ?まぁ、俺は全裸だけどな……ってそうじゃねぇ!俺の全裸を、おっさんに見られるのもアウトだよな?俺の現状が、家族だからセーフとか言えるレベルじゃねぇ!
それに俺自身はおっさんを家族と思ってすらいねぇ。いや、少しくらいは思ってるけどよ……。
でも流石に近親相姦はヤベぇって……いやだから、そうじゃない!そんな事を言いたい訳じゃねぇし、そもそも俺は男だ。いや、身体は女だけど、他のムスコに興味は無ぇ。
あぁ、なんか混乱しまくってるな。なんか今の言い方だと、扉の向こうに全裸のおっさんがいるみてぇだよな?
「大丈夫だ、パパさん。問題無ぇ。ちょっと寝呆けて叫んじまったんだ。だから開けるなよ?開けるなよ?絶対に開けるなよ!」
「クレア……何かを隠してるんじゃないかい?」
「いいか、もしもあの扉を開けようとしたら、遠慮はいらねぇ。気を失わせていいからな。殺さない程度に半殺しにしていいからな」
「「「「分かった」」」」
「この中じゃ、白湯が1番速いから、速攻で頼む。白湯が速攻したら、あとは3人でボコボコにな」
「あ、あの、クレア?何か聞こえるけど、中に誰かいるのかい?」
「大丈夫だ、問題無い」
「そうか……問題無いってそこまで言うなら、パパは戻るよ」
「行った……のか?」
「母さん、まだ扉の向こうにいるよ?様子を伺ってるみたい」
「流石、マシマシ。じゃあ、お前達は今のうちに服をちゃんと着ろ」
こうしてガサゴソと部屋の中で大運動会が始まったのさ。俺も必死に脱がされて、散らかされた服を着た訳だ。急いで着替えたモンだから、ちゃんと拭けてなかった俺の体液が服に色々付いてぬるぬるしたり、冷たかったり違和感が半端無ぇが、今は緊急事態だからそんな事にかまけてる暇は無ぇ。
溢れ出て来るのを止められねぇ以上は仕方がねぇしな。
こうして完全に準備が整った所で、まだ扉の向こうにおっさんがいるか確認したが、マシマシの返事は「No」だったから、おっさん的には命拾いした事になる。
ってかさ、なんで俺達がここに出戻っているのか不思議だろ?ダンジョン内の家がどうなったのか、不思議なんじゃねぇかって思ったから聞いてみたんだけど……。えっ?不思議じゃねぇの?……ならいいや。
「しっかしコレ、何なんだろうな?パンツにしちゃパンツっぽくねぇけど、凄げぇパンツぽいっちゃパンツっポイ。」
俺は両手でぐいーんと伸ばしながら、幼女パンツもどきを眺めていた。一応手触りは布っポイけど、俺が両手で引っ張るとゴムみてぇに意外と伸びるから、布じゃねぇのかもしんねぇ。
この世界に来てからこんな布は見た事がねぇから、布でもゴムでも無ぇんだろうな。そもそもゴムなんかあんのかな?
そして不思議なのはその中身だ……。ちなみに、部屋の中には俺一人しかいねぇ。豚骨達は庭の畑に、マシマシの手伝いをしに行ってるから、誰かに意見を聞きたくて呟いてた訳じゃねぇぞ。
要するに独り言ってヤツだ。
本来のパンツならお腹が包み込まれる辺り……要するにパンツの内側の部分が真っ黒なんだ。いや、パンツが黒いって話しじゃねぇ。
パンツ自体は白いんだ。外側は白くて中は黒い……色的には白黒はっきりしてるけど、何に使うのかはハッキリしてねぇ。そんな変なパンツだ。
でもって何て言えば伝わるか難しいんだけどよ、パンツの中に宇宙が広がってる……みたいな感じとでも言っておけば通じるかな?
パンツの中を覗き込むとお星様が輝いてるとか……いや、幼女パンツの中を覗き込むってどんな変態行為だよッ!
「宇宙パンツ……とでも名付けてみるか……。ってか本当にコレって何なんだろうな?」
俺は独り言を呟きながらパンツをまじまじと見詰めていた訳さ。傍から見たらやっぱり変態だよな?いや、一応俺の見た目は女だから通報される事はないだろうが、もしも日本で山形次郎の時にこんな事をやってたら、即通報間違い無しってヤツだ。
自分の娘のパンツだって、ここまでまじまじと見た事は無ぇ。いや、だから幼女趣味は無ぇからだよ?そこん所はちゃあんと分かってくれてるよな?
でもま、今の俺は本当に女だ。ムスコは無ぇし、大きめの胸もある。だから本当に女の身体だ……。まぁ見た目だけは……だけどな。中身はおっさんのままだから、中身と外見が合ってねぇのは認める。
それよりも何よりも俺がコイツの身体を奪ったのか、借りてるのかまだ分から無ぇが、この身体が本来の俺の身体じゃねぇのは当たり前の事だ。
だからもしも、コイツがこの世界で生きていて、俺を見たらどう思うんだろうな?
そんな事を考え始めていた俺は、宇宙パンツの中に何かが見えた気がした。何かが見えた以上は気になっちまうのが、俺の性ってヤツだ。
だから俺は、宇宙パンツの中に手を入れてみたんだ。
「何か……ある。何だこれ?意外と硬くて柔らかくて温かい……掴めるって事は引っ張り出せるのかな?」
ずりゅ
ぱっぱらぱっぱぱーっぱっぱーん♪
「おわッ!?何だこれ?」
俺が宇宙パンツの中で掴んで、引っ張り出したのは、小さいおっさんならぬ、小さな子供の頭だったのさ。だから、手っ取り早く言えば、パンツから生首が生えてるって言えるな。
簡単に言っちゃえば、ちょっとしたホラーでしかねぇよな?
鉢から生首も衝撃的だったが、パンツから生首も大概ってヤツだ。
ぼわんッ
「うわっ?!なんだなんだ!パンツが爆発した」
生首がパンツから生えた瞬間、ファンファーレみたいな音が聞こえた気がしたのは確かだ。昔テレビで見た、どっかの青狸が道具を取り出した時に鳴ってたような音みたいなヤツだったって言えば伝わるかな?
まぁ、そんなのはどうでもいいんだが、その音が鳴った後に、宇宙パンツは白い煙になって消えちまった。
そして煙が消えると、部屋の床には一人の子供が寝ていた。服は着てるから全裸じゃねぇ。子供だから男か女かは分からねぇが、服がヒラヒラしてるから女の子かもしれねぇ。
流石に寝てる子供の股間とか触る訳にはいかねぇから、完全に見た目で判断ってヤツだな。
でもって背中には羽が生えてるみたいだから、俺が知ってるどんな生物とも違うのは当たり前だった。
「う、うぅん……」
ゴロゴロゴロ
「どうやら生きてるみてぇだな。パンツから出て来たのが生首だけだったから焦ったけど、こうして見ると……なんなんだコレ?どっから来たんだ?」
「ううぅん」
ゴロゴロゴロ
「それにしても寝相悪いな、コイツ……。さっきからぐるぐるグルグル動き回ってやがる。これは寝返りってレベルじゃねぇぞ。ん?あれは苺……だよな?」
床に寝ている子供はゴロゴロと転がりながら、うなされているようにも見えた。そして、ゴロゴロと転がるモンだから、着ている服が捲れ上がって、苺柄のパンツが丸見えだった。
ってかさ、この世界に苺なんてなかったよな?少なくとも俺が日本で見た事のある食べ物なんて、一切無かった筈だ。でも履いてるのは苺柄……。通称イチゴパンツって呼ばれるんだっけか?
これは、謎……だな。
「まぁ、いつまでも床に寝かせておいても可哀想だし、ベッドに寝かせてやるか……。よっこらせっと」
ぱちッ
「「えっ?!」」
「何で、私がいるの?」
「おっ?目覚めたか?」
「えっ?やっぱり私……よね?」
「ん?どうした?俺の顔に何か付いてるか?」
「俺?私よね?いや、私の身体よね?アナタは誰?」
「私の身体?いやいやいや、そうかお前……まさかとは思うが、クレアなのか?」




