21話 俺の考え
「それで、何か分かったか?」
俺の名前は山形次郎41歳。思い込みが激しい、ただの普通のおっさんだった訳だが、今では若くて普通に可愛いと思う女の子の身体の中にいるから、見た目はおっさんじゃねぇ。
ところでさ、俺は最近思うんだけどよ……コイツってどこにいるんだろうな?いや、俺がコイツの身体を使ってるから、コイツの身体はここにあるけど……とか、そう言う話しじゃねぇ。
俺が言いたいのは、コイツの中身の話しだ。
コイツからしたら、自分の身体を乗っ取られたって事になるだろ?だから、今でもこの世界のどこかにコイツが生きているなら、この身体は返さないとマズいよな?
だから、その時は謝らないといけないと思ってる。
「身体が開発済で尚且つ、経験済でスマン」
ってな。ま、当然怒られる気はするけど、そん時はそん時だ。
待ってろよクレア、誠心誠意謝り倒してやるぜ!
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「しっかしまぁ、何が駄目だったんだろうなぁ」
俺はラーメンを作れる気でいた。だが出来たのは、うどん……。見た目が関西風で味が薄い……関東人にはどこか物足りない、「うどん」としか言えないその麺料理じゃ、俺を納得させられる筈も無かった。
いやでもな、うどんが悪い訳じゃねぇ。うどんに罪は無ぇ。うどんが悪いみたいな事を言っちまうと、なんか後が怖そうだから一応フォローしとくぜ。要するに、俺の腕が全部悪いって事だ。うん、そうだ!その通りだ!
——こんなモンでいいかな?
「俺の記憶よ、あのテレビを思い出すんだ!何が足りない?何が必要だ?ハッ、——そうだッ!ラーメンスープに必要なのは、出汁、タレ、香味油とかって言ってた気がする」
記憶の底からひっくり返して思い出せた事から判明したのは、俺が作ったのは「うどんつゆ」だったって事さ。要するにスープを作る為に必要な3つの中で、出汁しか作ってなかった事に気付く事が出来た訳だ。
ってか、タレとか香味油なんて、作り方知らねぇよ。
そもそも、調味料からして日本と違い過ぎるし、それから作るとなると、女王サマとの約束の期間なんて足りないって事が頭に浮かんだ。
だって日本人の食の歴史を一年足らずで全て俺一人で再現なんて、無理な話しだろ?
だから1つ1つの課題をクリアするには、残り数カ月じゃ圧倒的に足りないのは目に見えてる。そもそも一年の猶予って言ってたけど、一年がそもそも365日なのかどうかは分からねぇから、そこんとこはどうしような?
かと言って、今更一年が365日であってるか?なんて聞くに聞けねぇよ……。
「よし、こうなったら、直談判だな」
そんな考えを呟きながらも俺は粘る事にした。やれる限りの事はやってみて……出来る限りの手を尽くして……それでも駄目なら、うどんを手土産に時間を稼ぐ算段にしたのさ。
女王サマは食欲で色んな事を判断するらしいから、うどんが気に入れば時間を稼げると思ったんだ。その為には、うどんを完成させて、その傍らに麺とタレと香味油……あれ?ラーメンって本当はラクじゃ無ぇんだな……。
スープだけ作れれば、ラーメン作れる気になってた俺に喝を入れてやりたくなったよ……。いや、そもそもスープが完成する気配も無ぇとか言わないでくれ。
ところで、色々な事に頭を悩ませていた俺だが、ダンジョンの方は……と言うとだな、今ではワンタンも参戦してくれている。
ワンタンは装備制限ってのが無かったらしく、王都からダンジョンの家に帰る途中に課長をぶっ飛ばしたら、ゴロゴロと装備が出て来たのさ。
しかしこれは試作1号を皆で食べる前の話しさ。ちなみに、マシマシは試作1号の時には御庭番の小屋にいた。だから、あの時普通に目の前にいて会話してた気がするなら、それは気のせいってヤツだ。俺達と会話してたのは蔓だからな?
まぁ、細かい事は気にすんなって事さ。
そんな訳だから俺は今、基本的には一人で家にいる。そこで色々と試しながら、地上にいるマシマシと色々な話しをしている訳だ。
俺が作りたいモノで、植物由来のモノはマシマシに言えばなんとかなる事が多い。完全に頼りきってる感じしかしねぇが、昔どっかで「立ってるモノは親でも使え」と教えられた気がすっからいいって事だ。
あれ?親でも使うなら、俺も使われるって事になるな……ま、まぁ、気にしない気にしない。
そうやって悪戦苦闘しながらも、より良いうどんを作る為に試行錯誤してたら遂に、鰹の切り身節は完成の日の目を見た。
どうやら、煮てから燻製にして干して、それを更に燻製にして干して……を繰り返してたらそれっぽくなったから、これでイケると俺は思ったね。
だけど、出来た切り身節を削るのも大変だって思うだろ?でも、それがそうでも無ぇのさ。何故なら、45階まで行った時に、俺の包丁も増えたからだ。
前に触れんなって言ったけど、実は今になってあの時の包丁だけは良かったと思ってる。だって、45階でゲットした包丁は剃刀だったからだ。
剃刀が包丁かよ?とか思った俺だが、意外と剃刀って使えるのな。カンナみたいに木で枠を作れば手に持ってる訳じゃ無ぇから自動戦闘にも引っ掛からねぇし、家の中で使ってても殺気に怯える事も無ぇ。
まぁ、俺しか家の中にいねぇから、そもそも自動戦闘を気にして無ぇけどな。
んでもって、お手製カンナになった剃刀は、その切れ味でスイスイと削り節を作ってくれる訳さ。
こうして、3つ目の出汁が取れた。同じ要領で鯖とかの青魚も切り身節が作れると俺は思ってるから、出汁の材料はこれで増えるだろう。
そうなると、後はタレと香味油って厄介な相手がいる事になる。
タレは実際どうしようも無ぇと諦めてた訳だが、俺は1つ思い出していた。そう……豚カツソースの出て来る実だ。
アレを実際に使ってみようと画策した俺だが、切り身節から取った出汁と混ぜて、あぁでもねぇこぉでもねぇを繰り返したらなんとびっくり、スープっぽいモノが完成したのさ。
香味油はマシマシ謹製の植物からニンニクネギ油を作ってみた。日本にいた時に、「マー油」って名前の油を聞いた事があるけど、それに近付けられた……と俺は思ってる。
ところで、マー油のマーってなんだろうな?マーさんが作った油だったりするのかな?
まぁそんな事は、どうでもいいか。
で、出来たスープはまだ改良の余地があるが、ラーメンスープとしてはいい感じと自画自賛した訳だ。まぁ、豚カツソース使ってるから、ソースラーメンスープって事になるかもしんねぇけど、ソースラーメンって実際にあんのかね?
まぁ、日本じゃ今や色んなラーメンがあるから、あっても可怪しくは無ぇと思うし、そもそも焼きそばってソースだったよな?なら、中華麺にも合うのは当たり前だ。
まぁ、俺の手元にあるのはうどん麺だが……。いや、待てよ?うどん麺にソース掛けて炒めたら、焼きうどんになるよな?それはそれでいいかもしれねぇな……とか、思ってもみたりした。
でも、それは当たり前だがラーメンじゃあねぇ。
「なぁ、マシマシ?小麦って俺の記憶の中に一種類しかなかったか?」
「どうしたの、母さん?コムギってアレでしょ?一番広い畑で作ってる……小さな実を付ける植物」
「あぁ、それだ。それの種類って一種類だけだったか?」
「一番広い畑で作ってるコムギじゃない、コムギかぁ。そうしたら、母さんの記憶をもう一回見てもいい?」
こうして俺は二つ返事で了解した訳だが、了承した途端に蔓が俺の履いてるショーツの隙間から身体の中に入って来た訳だ。前もって準備でもしてたのかって言うくらい正確無比に一点を付いて……だ。
前にも多分言ったと思うが、挿入って来る場所は絶対に気にするな!
案の定、俺の中に入って来た蔓に因って、脳天を突き破るような快感に見舞われた俺は、足がガクガクと産まれたばかりの仔鹿のように震えて立っていられなくなった。
そんでもって、俺は盛大に喘ぎ声を上げた後で、特に下半身から体液の大洪水を起こして、その場にへたり込む事になったってのは、言わなくても分かるよな?
本当にダンジョン内の家だから出来る、快楽の耽り方だと思うぜ。周りを気にせず、声を出せるってのはストレスなくて気持ちいいよな?
でも今回は、失神する程イカされた訳じゃないから、腰がガクガクするだけだ。へたり込んで床に付いてるケツが濡れて冷たい気がするけど、それは気にしなければいいだけの話しだからな。
ダンジョンから帰って来る三人にバレないように、後で掃除をする必要があるとは思うが……。
「それで、何か分かったか?」
「母さんが食べた事ある物の記憶から、植物由来の情報を得てみたら、これかなって言うのがあったよ。見た目はコムギなんだけど、品種って言うのが違うのがあったから、こっちで作ってみる。あと、他にも栽培出来そうなのも作っておくから、収穫したら送るね」
「本当か?助かるぜ、マシマシ」
俺は小麦の品種なんて知らなかったから、マシマシには本当に助けられてばっかりだと思う。それにしても、小麦粉ってナントカ力粉ってのは三種類くらいだと思ってたから、小麦の品種もそれくらいだと思ってたんだが、違うのかな?
でもこれで、麺に関してもどうにかなるなんて思っちゃいねぇ。なにせ、カンスイが分からねぇからだ。最悪の場合はラーメンスープに、うどん麺の組み合わせで女王サマに食べさせるしかないけどな。
それこそ、シン・ラーメンってヤツだ。




