13話 簡単クッキングの隠し切れない隠し味
「俺はまだ開けてねぇ。これから開けるさ」
俺は山形次郎41歳。なんか大分勘違いが進んでると思うんだが、俺に幼女趣味は無ぇからな?そこん所だけは、宜しく頼むぜ!
でもまぁ、この世界でコイツの身体ん中で目覚めてからもうちょっとで半年が経っちまう。そう考えると人生あっという間だよな。
ところでさ、俺……ラーメンって作った事無ぇんだけど、本当に大丈夫だよな?
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結局俺は、2階止まりだった。なんでかって?2階で囲まれたからだ。
俺は一対一のタイマンならイケるんだけど、囲まれたらダメだ、ボクシングはタイマンって決まってるだろ?
読んだ漫画で一対多数の時にどうすればいいかなんて描かれてなかったしさ……。だからリンチは流石に辛い。
それに卑怯だと思わないか?男なら正々堂々とタイマンだろ?でも、モンスターがオスかメスか知らねぇし、見分けもつかねぇけどよ……。えっ?あっ!その前に俺は女だったな……。
ってな訳で早々に退散した俺だが、あの茶目っ気のあるモンスターって攻撃食らうと結構痛いのな。最初、背中からドンッて来た時、金属バットで殴られたかと思ったよ。
まぁ、金属バットで殴られた事なんて今まで無ぇけどな。それに背中は装備がなくてガラ空きだったから、装備の性能を確かめる事も出来なかったぜ。参っちまうよな……。
んでもって、帰って来たら二度目のビックリさ。
なんと、着てた服の背中の部分が失くなってやがった。布がボロボロになってる感じって言うか、溶かされた……みたいな?
ブラジャーとかしてたら服と一緒に溶かされたのかな?それとも、ブラジャーを見せながら帰って来る事になったのか分から無ぇけど、そうしたら露出狂だと思われちまうよな?
だから、この世界にブラジャーってモンが無くて良かったと思ったぜ。
男だった俺からすれば、ちゃんと着けられるか分から無ぇ下着だしな。でもま、そのせいかは知らねぇけど、乳首か擦れて痛気持ちい……いや、なんでもねぇ。気にすんな!
まぁ、話しが逸れちまったがそんな訳で、俺の模擬戦はそこで終了だった訳だ。
「諦めたらそこで試合終了」とか誰かが言ってた気がすっけど、諦めずに生命奪られたらそれこそ試合どころか人生終了だからな。生命あってのモノダネってヤツだ。
結果として遅ればせながら一人では無理だと悟ったので、豚骨の帰りを待つ事にしたのさ。
その日は二人を説得して、なんとか俺を食べるのを我慢……してくれたら良かったんだが、我慢してくれない二人に結局食べられる事になった。だがまぁ、昨日よりはイカされる回数も少なかったから、「三者一両損」ってヤツだな?
二人がちょっとずつ我慢してくれた事で次の日は、多少フラつきながらも朝からダンジョンに入れるくらいの体調だった。
ってな訳で、今度こそ俺達は三人でダンジョンに行く事が出来たって訳だ。
先頭は勿論豚骨で、戦闘係。俺は真ん中で、白湯が最後。俺はどっちかって言うと、白湯のお守りってヤツだ。
お守りなら最後だろって?いやいや、白湯は野生の勘ってヤツで、モンスターが来ると分かるから後方に向けての目って役目だぜ。
だから先頭で豚骨が闘ってる時に後ろからモンスターが来たら、俺がソイツと闘って……って感じだった。白湯は素手だと攻撃しても意味が無ぇし、毒吐かれると下手したら俺まで巻き添え受けちまうから、毒を使うのは最後の手段だ。
ま、俺一人より豚骨がいてくれたお陰で大分楽勝だったぜ?なんなく5階の課長まで辿り付く事が出来たしな。
「へぇ、これが課長か?普通のモンスターより少し大きいくらいか?」
「カチョウってなぁに?それよりも、まま……。コイツは速いから気を付けてね。攻撃力はそこまで無いけど、うちの攻撃が避けられたら、ままの所に行っちゃうかも」
「大丈夫だ、問題無い。豚骨はいつも通り頼むぜ。俺達の所に来たら、そん時はそん時だ」
こうして初めての共同作業的な感じで課長戦が始まった訳さ。まぁ、豚骨が一人で闘うよりは大変だったと思う。俺達は多分……足手まといだったからな。
それでも、俺はちゃんと闘えてたと思うぜ?デンプンロールで頭をガードしながら攻撃して一回は殴れたし……まぁ、一回殴る間に三回くらいは貰っちまったけど、昨日の模擬戦の甲斐があって背中に貰う事は無かった。だから露出狂にならずに済んだぜ!
でもやっぱり攻撃を貰うと、金属バットで殴られたような衝撃はあるんだけど、どうやらフライパンや木のお盆は服みたいにボロボロには出来無ぇ様子だった。弾丸を弾くフライパンは無傷で、木のお盆が多少欠けたくらいだな。
で、結局は俺が一発殴ってよろめいた課長に、豚骨が強烈な一撃を入れて倒したって訳だ。
それにしても、白湯は攻撃自体に意味は無ぇけど、速さはあんのな?課長の素早い攻撃をちゃんと避けてやがった。
「まま、大丈夫?何回か敵の攻撃受けてたでしょ?」
「大丈夫だ、ありがとな豚骨」
「大丈夫ならいいけど……それよりもそうだ!まま、お宝が出たよ!ちゃんと、ぱいたんの分もあるよッ」
多少痛い思いはしたが、これで俺も装備が充実していくと思うと自然と痛みは引いてったね。
それで、ドキドキわくわくのお宝御開帳ってヤツだ。
「ママ?これなぁに?」
「うーん……下駄……かな?」
「ゲタってなぁに?」
「足に履く靴みたいなモンだ」
先ずは白湯がゲットしたお宝は、下駄だった。ま、まぁ、鳥足な白湯の足に合う靴は無かったから今まで裸足だったんだが、それはそれで危険だしな。いいとしよう。
それが歩きやすいかどうかは別として……な。
だが、バレェダンサーが下駄履いてるようにしか見えない絵面ってどうなのさ?斬新と言えば斬新で、滑稽と言えば滑稽で、シュールと言えばシュールなんだが、和洋折衷ってヤツだから、まぁいいか。
で、次はお待ちかねの俺の番だ。
「これって三徳包丁……だっけか?しかも片刃……で、見た感じこれって左利き用……だよな?」
「ままの包丁格好いい!お宝でそれが出て来たって事は、まま専用包丁だねッ」
俺の専用装備は包丁だった。しかも左利き……。クレアは左利きなのかな?そんな事を気にした事もなかったが、俺は右利きだ。だからそれだと使い勝手が悪過ぎる!まぁ、俺が刃物を持つと危険だから使うかは分からねぇけど……。
とは言え、これが専用装備認定されてるって事は、包丁持ってるだけで、自動戦闘しちまうってのは本当だったんだなって改めて思い知らされたよ。
家で包丁握らなくて本当に良かったさ。使用人の惨殺とかしたくねぇもんな……。
「外れ引いちまったから、アイツはガチョウだったんだな……くそっガチョウめ!」
「がちょう?何それ美味しいの?」
「それは気にするな豚骨。じゃあ、気を取り直して次に行くとするか。って、白湯下駄の履き心地はどうだ?」
「ちょっと歩きにくい。でも、わちき専用だから慣れてちゃんと使いこなせるようにするッ!」
「そっか。じゃあ転ばないように気を付けるんだぞ」
「うん!頑張るッ!」
こうして俺達は更に階下を目指して行く事にした。そこから先は特に何か起きた訳じゃない。ただ、出て来るモンスターの数が階を増やす毎に多くなっていくだけだ。
俺もなんとか闘い方が分かった気がしていたし、白湯は専用下駄を使った攻撃方法を模索してる様子だった。
そんな中で白湯は、素早い動きで敵を撹乱して、蹴りを中心とする闘い方を覚えた様子だったんだが……。その姿を見ている内に俺は、大事な事を思い出したね。
そう!帰ったら白湯の下着を用意しなきゃいけない事を……だ。
そう言えば、白湯に今までずっと下着を履かせてなかったなって、今更になって思い出した訳なんだ……。モンスターを蹴るたんびに下半身露出してる幼女って何なんだよ……やってらんねぇよな。
親の教育を疑われっちまうぜ。
それに俺は幼女をノーパンでいさせるような、そんな趣味は無ぇし、当の本人がそれを当たり前だと思い込んでたら大変だもんな。
だからダンジョンを出たら帰りがけに買おうと思った訳さ。どうせなら、豚骨ホルスタインの成長も落ち着いたようだから、いつも頑張ってる豚骨に服の一着でも買ってやるのも悪く無ぇかもな。
「よし、なんとか倒せた……。それにしても、その下駄蹴りなかなかいいな白湯」
「えへへ、ママありがとう」
「まま、うちは?うちは?」
「豚骨もよく頑張ってる、俺も助けられてばっかりだ。よしよし」
「えへへへへ。やったッ」
階を重ねる内に白湯の蹴りは、精度と威力を上げた様子だった。まぁ、その度にスカートの中身が俺の視界に入るから、俺は周りで誰かが見てないかヤキモキしたし、そのせいでお手製グシケンを握る力も強くなっていた。
でもそれを除けば、白湯も戦力としては充分なのかもしれねぇ。
って事は、一番弱いのは俺……だったりするのか?
「ママ、これなぁに?」
「ん?カチューシャ?あれ?カチューシャって、そんなひらひら付いてたっけか?」
「かちょしゃってなぁに?」
「それは頭に着けるモンさ。髪留めってヤツだな。貸してみろ、俺が付けてや……れないな。専用装備だもんな」
すちゃ
「こんな感じ?」
「そうそう、そんな感じだ。それなら速く動いても髪の毛が邪魔にならないだろ?」
「うん。これでもっと速く動ける!」
しゃしゃしゃッ
こうして俺達はその日の内に10階の課長も倒す事が出来た。で、お宝を無事にゲット出来た訳だが、確か豚骨はこの階で下半身用の装備を手に入れたって言ってた筈だ。
だが、白湯はカチューシャ……なんだこの違いは?!
あれ?ところで白湯……さっきより速くなってねぇか?髪留め着けただけで、そんなに速く動けるの?でもこれなら、スカートの中身を目で追いたくても追えないな……。
って、俺はスカートの中身に興味がある訳じゃないから勘違いすんなよ!そういうヤツがいると困ると思っただけだ!それ故の感想ってヤツだからな。
「ままのお宝はなんだったの?」
「俺はまだ開けてねぇ。これから開けるさ」
俺は二人に急かされたのもあったが、ドキワクしながら10階の課長を倒したお宝箱を開ける事にした。
やっぱり、トリだと最後になんか凄げぇのを期待するしな。まぁ、「鳥は白湯だろ」とかって、オヤジギャグを言うつもりは無ぇから安心してくれ。
「えっと……出刃包丁……だな。今度は右利き用みてぇだが……ってそうじゃねぇだろ」
「わぁ!ママの包丁さっきのもカッコ良かったけど、今度のもカッコいい!!」
確かに今回の出刃包丁には刃紋がしっかりと付いていて……ってそうじゃない。そうじゃないんだよ。俺が欲しいのはコレじゃない。
なんでこうなったんだろ……やっぱりガチョウなのか?ガチョウが悪いんだよな?そうだよな、うん。そうに決まってる!
要するに俺は二刀流になった訳なんだが、包丁の二刀流ってどうなの?そもそも俺は刃物類持っちゃいけないんじゃなかったっけ?
だから俺は次の15階のお宝に、一縷の望みを掛ける事にしたんだよ……。




