12話 男と女のアラレも無い隠し味
「あ、あのさ、なんでこんな事になってんの?」
俺は山形次郎41歳。思い込みが激しいってのはダメなのか?ま、まぁそのせいで日本人だった頃は結構失敗もしたし、怒られたりもしたさ。呆れられたりも……あったな。
でも、それ自体はそんなに悪くないと思ってる。だからな、人間なるようにしかならねぇが、それ以前にどうにかなっちまえば、なるようにもならねぇ以前に、なるようにしかならねぇって事さ。
——あれ?俺は何を言いたかったんだっけ?
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「よかろう、それならば我がアレアリスの名を持って、クレアリスのダンジョン攻略を認める事とする」
「そ、そんな……」
がくッ
「だが、妾とてそこまで気が長い方ではないのでな。期限を設けるものとするが……よいな?」
「俺にどれだけ時間をくれるって言うんだい?」
「ふむ。1年間の猶予としよう。だが、その間にラメーンが出来なければ……また、仮に出来たとしても妾の舌を唸らせる事が出来なければ……妾を待たせた挙句に、がっかりさせた罰を受けてもらう事になる……わ」
「罰?し、死刑とか?」
「クレアリス、そなたは死にたいのか?」
「いやいや、俺は死にたくなんてねぇが、生命と引き換えにするなら、分が悪いって思っただけさ」
「なぁに、妾とて可愛い姪を簡単に殺したりはしないわ。だけど、罰は相応のモノを用意させてもらう事にしよう。そうだな……王位継承権の剥奪と、ケイルファートとの婚約破棄といった所か?」
「女王陛下ッ!それはあんまりでございます!」
「黙らっしゃい!」
「俺はそれで構わないぜ」
「クレアリス……それ程の覚悟があるのですね……。ならば、それだけの覚悟があるならば、褒美も考えなければなりませんね……。よし、こうしましょう!もしも、そのラメーンが妾の舌を唸らせる程の出来であったとしたなら、クレアリスを立太子させ、皇太女とします」
俺としては、「リッタイシさせて、コウタイジョにする」って事の意味が分からなかった。普段使わねぇ言葉言われても理解なんて出来ねぇよ……。
それだから勝手に解釈してみたんだが、要するに立体的に何かを見て交代する場所……。
そうだな……俺を総合的に判断して、俺が結婚相手を決めていいって事かな?要するにチェンジ機能ってヤツかッ!
俺は職場の連中と飲みに行ったりしなかったが、飲んだくれてたヤツらは大体次の日にチェンジした~とか言ってたから、まぁ、そーゆー事なんだろ?
それに何回も何回も何回も言ってるが、俺は他のムスコに興味は無ぇし、性欲もあまり無ぇ。だけど気持ち良いのは最近、悪くないと思うようになっていた。
コイツの身体もまんざらじゃ無ぇ……と言うかクレアがどんなヤツだったかは知らねぇけど、俺に変わらなかったら相当な、淫ら……いや知らねぇヤツを貶めるのはよくねぇな。
悪りぃ、会った事も無ぇクレア……。
それは兎も角コイツの身体は、豚骨の食欲に調教されてるってのが大きいかもしれねぇけど……。まぁ使ってる俺の感想は、男の身体より、段違いに気持ち良いのは確かだ。
こんな事、男もやってた俺くらいしか共感してもらえねぇと思うけどな。
だけどそうは言ってもな、結婚したら子作りはしなきゃなんねぇだろ?
でも例えばそいつが母豚みてぇな豚顔だったとしたら、そいつのムスコが俺の身体の中に挿入って来るって事になるよな?俺はハーフオークとして産まれた訳じゃねぇから、そこら辺はちょっと抵抗がある。別にイケメン好きって訳じゃねぇが、豚顔はちょっと……な。
いやいやいや、これは全豚に対する差別じゃねぇからなッ!勘違いすんなよッ!
ん?これだとイケメン相手なら俺が股開くみてぇに聞こえるけどよ、他の男のムスコに興味は無ぇから!そこは大事な所だからッ!
要するに……だ。結婚相手くれぇは自分で選びてぇ。どうせなら、結婚したとしてもヤらなくて済むヤツと結婚してぇってのが願いだ。だから極論で言えば女と結婚してもいいし、最悪の場合、他の男のムスコが見えなきゃどうでもいい気はするが……な。
だから俺は俺が自由に結婚相手を選べるなら、仮面夫婦を演じてくれる相手となら結婚してもいいと思う事にした。
気持ち良い事は、豚骨や白湯で充分だ。献身的に気持ち良くしてくれるし……って二人はただの食事だから俺から求めてる訳じゃねぇぞ!
珍しく考えちまったが、そんな訳で俺は、女王サマの提案に乗る事にしたんだ。
「分かった、それなら俺は一生懸命、女王サマの舌を唸らせるラーメンを作ってみせるぜ!」
「あわわわわわわわ」
「それならば、妾も楽しみにしているとしよう。所でなクレアリス、ものは1つ相談なのだが?」
「相談?」
「先程食させて貰った物を定期的に王宮に持って来てはもらえぬか?良ければ言い値で買い取らせて貰うが?」
「女王サマ、それは勘弁して欲しい。あれはダンジョンに入ってくれてるヤツのお弁当にしてるんだ。腹が減っては戦が出来ねぇって言うだろ?これは大事な食糧なんだよ。でも、これから先、俺もダンジョンに入って、たくさん余るようになったらでいいなら、考えなくもないぜ」
「うむ。それならば、余ったらで良い。ラメーンを完成させるのがなにより先決だからな」
「分かった。それなら、その時は王宮に運ばせてもらうとするよ」
「これで話しはまとまったな。それでは、後の事は任せました。それと……クレアリスへの協力は惜しみなくなさい」
「はっ!公爵家の威信にかけまして。所で、女王陛下?」
「何かしら?」
「本日は何故、この家に?それに、お供の方や妻はどこに?」
「え?あ……いや、うん、何でもありませんわ。ただ……うん!そうそう!ただ、なんとなく姪の姿がたまに見たくなっただけですわ、おほほはほ。そ、それじゃ、妾は帰ります。ご機嫌よう。それじゃクレアリス、吉報を待っていますわよ」
こうして、女王サマはそそくさと帰っていった。何でここに来たのかの答えは、ハッキリ言って嘘だろう。
だから何しに来たのかは不明なままだ。
それに、母豚がどこにいるのかも分からねぇままだったが、それはそれ、これはこれだ。
その頃……母豚は王宮で、姉である女王に全ての仕事を押し付けられ、「ぶひひひひひいぃぃぃぃぃん」と吠えていたってのは、後から聞いたホントかどうかよく分からねぇ話しだ。
要するに俺にとっちゃどうでもいいって事だな。
こうして俺は女王サマからダンジョンに入る許可を貰った。そしておっさんは、何故か妙に乗り気だった。
俺の婚約破棄の辺りで項垂れていたのが嘘のようだ。やっぱり、娘の結婚相手は娘に決めさせたかったんだろうな。
政略結婚なんてのは心の中ではダメだって思っててくれたみたいで、俺はホッとしたし、おっさんの事を少しは見直した気分になっていた。
「豚骨の装備はいいとして、問題は俺と白湯の装備なんだよな……あ、でも白湯は装備制限があるんだっけか?じゃあ、それは課長達を倒してからの話しだから課長頼みってヤツだな……。むしろ、いいモンくれたら部長でダメなモンくれたらガチョウって呼んでやろう」
俺はお宝が手に入るまでの繋ぎとして、自分の装備を自分で作ることにした。なんでかって?この街にはそもそも道具屋はあっても、武器屋も防具屋もなかったからさ。
ちゃんとした装備を持っているのは、冒険者ってヤツらか兵士くらいなモンだ。
ダンジョンで手に入れた冒険者の装備は本人限定ってヤツで、俺が譲ってもらっても装備すんのは無理だし、兵士から奪うのは可哀想だろ?
前に豚骨に着せてた胸当ては家にあったお古だったし、そもそも豚骨がダンジョンに捨ててきちまった。
他の装備はこの家の中を探せばあるかもしれねぇけど、探すのが何よりも面倒臭ぇ。
だから作る事にしたのさ。俺のAIYだかDYIだかの技術があれば、オチャノコサイサイヘノカッパってヤツだな。あれ?ヨユウノヨッチャンだっけか?ま、そんなのはどうでもいいや。
俺は先ず、取っ手が付いてる中華鍋を探した……が、そもそもの話しなんだが、中華鍋って事は中華を作る鍋の事だろ?要するにさ、この国には中華が無ぇから、そんな鍋はある訳もなかった。
で、次に探したのは底が深いフライパンだ。フライパンをなんでフライパンって呼ぶかは知らねぇが、家のキッチンにはちゃんとあったから無断で拝借しといた。でもあと1個欲しかったから、取っ手付きの丸鍋も拝借したぜ。
要するにな、そのフライパンと丸鍋で、胸当ての完成だ。コイツの身体はホルスタインな豚骨程じゃ無ぇが、出てる所はさり気なくちゃんと、はっきりくっきりと重量感を持って出てやがるから、ぺったんこな板っ切れじゃ胸が潰されちまうんだよ……。
だから、丸みをもったフライパンが最適だと思ったのさ。
それに前に日本人だった頃にどっかで誰かが、「フライパンに撃った弾丸を弾かれた」って言ってたから、フライパンって硬いって事だよな?
そいつがフライパンに弾丸撃った以前に、銃持ってた事には驚きだったけどさ、でもそうしたらこの世界に銃があっても、これで心配は無ぇって事だよな?
銃の弾丸を弾くんなら、剣とかモンスターの攻撃とかも弾くって事だよな?ほら、使えるじゃんかフライパン!
ま、片方は丸鍋だから弾かねぇかもしんねぇが、そっちが役に立たなかったら、街で新しいフライパンを探すだけさ。
こうやって俺は自分用の装備を作っていった。初めてダンジョンに入った時に拝借した、硬い木で出来てるお盆を腰当てに再び採用して、更に今回は金属製のトレーをすね当てに採用したぜ。
これで俺も一端の騎士ってヤツに見えるだろ?
だがここで問題は起こる。問題は俺の武器だ!
俺は剣全般を手に握ると高等魔術・自動戦闘ってヤツが殺気をきっかけに発動しちまう。
これはエド切れを起こすか、殺気が失くなるまで止まる事が無ぇらしいから、モンスターがいつ来るか分からねぇダンジョンじゃ不向きだよな?
それに豚骨がモンスターに向けた殺気にもその魔術は反応しちまうから、厄介と言えば厄介過ぎるんだよな……。
ところで、エド切れってなんだろうな?中華は無ぇけど、江戸はあんのな……それって凄くねぇか?
おっといつもみてぇに話しが脱線しちまったぜ。
要するにな俺はモンスターの数が減るか、死ぬ事覚悟で捨て身じゃなきゃ剣が握れねぇ。そこで考えたのが拳鍔だ!え?拳鍔って言わない?よ、要するに、グシケンだよグシケン!なんか違う……か?
よし、考えるな、感じろ。
俺は家の中にあった指輪やリングや硬そうな輪っかを集めてそれを繋ぎ合わせていった。こうしてお手製グシケンの完成だ。
俺はこう見えて、子供の頃にボクシングの漫画をよく読んでたのもあって、ボクシングが出来るからな。このお手製グシケンを使ってモンスターと闘おうと思ったのさ。
豚骨も最初はグーで殴ってたって言ってたから、そのグーよりも強いお手製グシケンに俺のボクシングが加われば最強だろ?俺のスシロールだか、デンプンロールだかみたいな技でモンスターをビシバシ殴って蹴散らしてやるさ。
「あ、あのさ、なんでこんな事になってんの?」
「えっ?ママと約束したよ?「とんこっつお姉ちゃんと協力してママを食べる」ならいいんでしょ?だからママ、ほら、ちゃんと力抜いて足を開いて。とんこっつお姉ちゃんは、先に上から?下から?」
「うちは上から」
「じゃあ、わちきが下からだね」
「まま」 / 「ママ」
「「それじゃ、いただきまぁす」」
その日、俺は寝ようとした矢先に全裸にさせられた。要するに豚骨と白湯の二人の食欲が俺を寝かせてくれなかったんだ。
いつもは朝の微睡んでる最中に食べてくるから、眠気と気持ち良さのタッグマッチでいい感じだったんだ。だけどさ、意識がはっきりとしている時に二人掛かりの協力プレイで同時に食べられたモンだから、刺激が強過ぎて何回イカされたか数えられないくらいに絶頂を味わった挙句……遂にはウド切れを起こして、理性も恥ずかしさもぶっ飛んで、そのまま色々なモノを色んな場所から垂れ流しながら失神するハメになっちまった。
女の身体の方が男の身体と比べて、思ってたより気持ちいいとか段違いに気持ちいいとか言ってたのは、どこのどいつだ!
女の身体の方が男の身体より段違い所か、頭がオカシクなっちまう程に気持ちいいじゃねぇか!まったく、ガセ情報言ってたのは……あっ、俺か?
ま、そんなこんなでそんな状態になっちまったから、枯渇したエドが回復する訳もなくて、結果として翌日の早朝からダンジョンに入る計画は、おじゃんになった訳さ……。
完全にイッちまった俺が起きたのは次の日の昼過ぎだった。俺が起きた時には豚骨は出掛けた後で、白湯も部屋にはいなかった。
俺は頭がクラクラしてたが、気合いと根性で立ち上がると、無残に散らかってた俺のパジャマを片付け、服に着替えて昨日作り終えた装備を身に着けていった。
まぁ、何て言うか模擬戦みたいな感じだな。俺が一人でも平気って事を証明する為に、意気揚々とダンジョンに行ってみる事にしたのさ。
だから、そんな深くまで行くつもりは無ぇし、作った装備の出来も確認したかったってだけだ。
「初めての時はちょっと武者震いしてたが、慣れればどうって事は無ぇな。うりゃッ」
ぱこんッ
「ま、一対一ならこんなモンか?おりゃッ」
ぱこんッ
「それにしても、これなら俺一人でなんとかなりそうだよな?」
俺は完全に慢心してたね。だって、超余裕でモンスターが倒せるんだから。
俺のデンプンロールが火を吹く事も無く、マジパンチもマジ殴りをする事無く、小突いたくらいでモンスターは呆気なく倒れてくれたからだった。
とは言っても一対一だし、こっから先も一対一で闘うなら超余裕って事は分かったぜ。まぁ、モンスターは茶目っ気がある姿なんだが、不意打ちされなきゃ平気かなって思いながら、俺は一人で先に進んで行った訳だ。
それにしても、茶目っ気ある割には鳴き声も殺気も凶悪だし、そんなギャップってどうなのかね?ま、殺気なんて分から無ぇから、相手の目付きで勝手に判断してるんだけどな。




