お年寄りの食事介助
老人ホームの食事介助ってどんなイメージでしょう。
よく聞くのが『テンポよくやらないと終わらない』と怒られたとかそういう話ですね。
お年寄りが暮らす形態も色々あるし忙しさも施設によって違うのですが、実はこの考えは間違っていると思うんですよね。
『終わらない』って利用者目線じゃなくて『職員目線』なんです。
勿論業務である以上は時間の流れがあるので1ミリもわからないということではありません。
ただ、その発想で動くのはちょっと危険だと思っています。
ちなみにウチはほぼ特養化しているグループホームです。
グループホームだけど食事は湯煎してお出しする形です。昔は私も作ってましたけどね。
私が食事介助について指導する時に言うのは『お年寄りの様子を見ながら必要に応じて切り上げる』です。
というのも食事介助が必要な方って基本的に体力が弱っています。
リクライニング車椅子やらを使用していても長時間座っている事で減る体力は私達若い人より遥かに多いです。
疲れてくるとお尻が痛くなって身体をよじったり、それすらできない人だと圧迫した箇所に褥瘡なるものが出来たりします。
しかも身体は不調状態なので食も進まない。介助時間の増加、焦る、そしてむせる。
ちなみに私の親戚はそれで亡くなりました。
明らかに許容量を超えた大量のお粥が喉から出て来て警察沙汰でした。
ええ、ちょっと……嫌な感情が出てきました。収納します。
そもそもなんですが全量食べる必要性があるのでしょうか?
介助で全量食べる=出来る職員というイメージがあるようですがお年寄りはそもそも食べたいのかな?という疑問があります。
いや、誰だってお腹空くだろう?と思うかもしれません。
ですがそもそも活動量が少ないのに食事は3食、時間きっちりに出てきます。
『もうお昼?お腹空いてないけどなぁ』という方もいるでしょう。
まあ、逆もいるんですけどね。
ウチでは色々な事情で夕食は3割しか食べれなかったとかそういう人もちらほらいます。
あまりに食べる少ない方には家族様に持ってきていただいたお菓子を少しつまんでいただくとか、ハイカロリーゼリーを経費で買っているのでそれをお出ししたりします。
それでも食べない、もう食べられない時は……『水分だけ』でも摂ってもらっています。
『食べないという選択肢』もあっていいというスタンスです。
昔居た施設では『残したらダメ』とか『甘えてないで食べなさい』とか怒鳴る職員が居ました。
まあ、個々に色々事情はあるのですが嫌だなぁという気持ちでした。学校の先生かよと。
だって、何が悲しくてご飯で怒られないといけないんでしょう。
嫌いなものは嫌いでいいと思うんですよね。
今からどう成長するんでしょう?背が伸びたりしないですよ?
ちなみにウチでは月に2回ほど特別メニューを用意するのですがそういう時って普段食べない人も結構食べるんですよ。
そりゃ、普段の食事は栄養のバランスを考えて作られていますが明らかにえぐい味付けのものもあるんですよ。誰だよこのメニュー考えたのは!?って奴結構あるんです。
人間、好きなもの、美味しい物食べたいじゃないですか。
だから食事介助の時はスピードより『相手をよく見て』なんです。
明らかに食べる速度が低下するものとかあるんです。だいたい小鉢の野菜類や添え物になっているソテーとかですね。
わかりやすい人だと嫌だという意思を示してくれます。
それでも『休憩時間が』って焦る人が居ます。
そういう時は『お先にどうぞ』と休憩してもらいます。
その方がお互い気持ちよく過ごせますからね。私の休憩は大抵ローテーションの最後です。
綺麗ごとと思われるかもしれません。
でもほら、そんなご飯無理やり口に突っ込まれたり残したら怒られるとか刑務所みたいなところ、将来入りたくないじゃないですか。
20年、30年後の介護業界がどうなっているか知らないけどそんな暗い未来、嫌じゃないですか。
だから今日も私はお年寄りと笑いながらご飯を食べてもらっています。




