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第77話 シモンズと薬草園2

 マリーが、薬草園で子ども達や内職チームのお姉様方と毎日の採取を終えた頃、子供たちが 「精霊さんがいる!」 と騒ぎ始め、マリーの後ろに向かって駆けて行く。


「「「精霊さん、おはよーーーー!!!」」」

「「せいれいさんーーーーー!!」」

「「「わあああーー!!おはよーーーー!!!」」


(ま、まさか、パワスポ効果がついに妖精とか精霊まで召喚しちゃったとか?! それって、めちゃくちゃレベル高くない?!)


 もしや、新たなパワスポ効果かとワクワクしながら振り返ってみると、そこには、白金の長い髪にビスクドールのような美しい顔立ちの精霊…ではなく、シモンズが立っていた。


(ち、違う! 精霊じゃないよ! あれはうちのお客様だよね!!)


 心の中で、盛大に突っ込むマリーである。

 がしかし、確かにマリーも最初にシモンズを見た時は、透けるような真っ白い肌に白金の髪、人間離れした美しい顔立ちに、妖精か精霊かと思ったので、子ども達がそう思うのも頷けるというものだ。

 子ども達はシモンズを取り囲んできゃっきゃと話しかけているが、肝心のシモンズはマリーの方を見たまま、呆然と立ち尽くしていた。


「シモンズさん!」


(あれ? シモンズさん、どうしたのかな? …はっ! も、もしかして、人間じゃないって言われてショックを受けたとか?! ど、どうしよう! お客様に失礼だよね!!)


 そう思ったマリーは、あわあわおろおろしながら、慌ててシモンズの元に走り寄った。


「シ、シモンズさん! おはようございます!! その…! こ、これは違うんです!!」


「マリーお姉ちゃん、精霊さん知ってるのーー?」

「せいれいさん、おなまえシモンズさんなのーー?」

「マリーおねえちゃん、せいれいさんとお友だち?」

「ルーも! ルーも精霊さんとお友だちになる!」


「シモンズさん、すみません!! み、みんな! シモンズさんは精霊さんじゃないよ!!」


「えーーーー? じゃあ、妖精さん?」


「よ、妖精さんでもないよ! シモンズさんは、人間だよ!!!」


「「「「えーーーーーーーーーーー???」」」」

「「「精霊さんだよ??」」」

「「妖精さんだよ!!」」

「「「なんでーー?? なんで精霊さんじゃないのーーー??」」」


『なんで?』 と、きょとんとした顔で子ども達に聞かれてマリーは困る。人間は人間だ。


「みんな! シモンズさんは、精霊さんでも妖精さんでもないよ! みんなと同じ人間だからね!」


 なかなか納得しない子ども達に、マリーが大慌てで必死に言い聞かせていたところ、ジェニーが助け舟を出しにやってきてくれた。


「ほらほら、 あなたたち! そろそろ薬草を運ぶわよ〜。 みんな、早くにお仕事終わらせて、お祭りに行きたくなあい?」


「「「「「「行きたいーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」

「「「「「行くーーーーーーー!!」」」」」


「じゃあ、作業場に行きましょう。さあ、ご挨拶してからよ!」


「「「「「はーーい!」」」」」

「「「「精霊のシモンズさん、またね!!!」」」」

「「「「「またねーーーー!」」」」」


 まるで小さな台風のように、ひとしきり賑やかにはしゃいだ子ども達は、ジェニーとお姉様方と作業場へ薬草を運んで行った。


「シモンズさん、すみませんでした!!!」




「おい、シモンズ! どうかしたのか?」


 マリーが改めて、ペコリと頭を下げながら謝っていたところ、シモンズの後ろから声がかかった。ダリルだ。

 固まったままのシモンズと、少し硬く聞こえるダリルの声の響きに、マリーはさらに申し訳ない気持ちになった。


「あの! すみません! 子ども達が、シモンズさんを見て、精霊だって騒ぎ出してしまって…っ!」


 マリーがそういうと、ダリルから硬い空気が解けて笑い出した。

 シモンズから遅れてやってきて、ここまでの様子を見ていなかったたダリルは、シモンズの女性嫌いのトラウマで、マリーと何かトラブルがあったのではないかと心配したのである。


「ははははは! 精霊だって?! まあ、確かに、そう言われてみればそう見えなくもないよな。でもそんなこと、全然気にする必要ないぞ! こいつ、この顔だから、血の通ってない人形だの氷の王子だの、散々言われてるからな。精霊なんて、可愛いもんだろ!」


「そうなんですか? 」


「ああ、そうだよ。だから気にしなくていいよ。 おい、シモンズ!何ぼーっとしてるんだ? お前、マリーちゃんに聞いたのか?」


 シモンズの肩を叩きながら、ダリルが声をかけると、シモンズがようやく二人を見た。


「…は……すまない…ちょっと考え事をしていたら、ぼーっとしてしまったみたいだ…ええと、なんだっけ?」


「マリーちゃんを山に誘うって言ってたろ? もう聞いたのか?」


「ああ、そうだったよ。マリーちゃん、僕たち、この間伝えた薬草の山に行こうと思ってるんだけど、よかったら一緒に行かない?」


「わあ! いいんですか? また行きたいと思ってたんです!! いつも宿で使う分はここの薬草園で採れるからいいんですけど、とっても綺麗なところだったからまた行きたくて! いつにします? せっかくなので、お弁当も持ってピクニックにしましょう!!」


「ふふふ。それはいいね!楽しみだな。マリーちゃんはいつなら大丈夫? 僕らは山に行くために来たから、いつでもいいんだ」


「そうなんですね! じゃあ、え〜〜〜っと、わたしはですねえ…」





 シモンズとマリーが日程の調整をする一方で、ダリルは先ほどのマリーの言葉に引っかかっていた。



「『ここの薬草園で採れる』って、どういうことだ?」


 そう思い、ふと庭の奥を見たダリルの目に信じられないものが映る。


「……は………?」


 広い庭に青々と茂る一角は、ダリルもよく知っている薬草たちではないか。

 どの薬草も大きくのびのびと葉や枝を伸ばし、花があるものは鮮やかに美しい花を咲かせ、風が吹くとゆるゆると揺れ、時折薬草の香りがこちらまで漂ってくる。それは紛れもない薬草たちで、手に取って見るまでもなく、ダリルがこれまでに見た中でも、極めて状態が良い薬草だとわかった。


「………え?……」


 さらに、そこに咲いている紫色の花は、昨夜シモンズと話した“女神の恵み”だろう。

 一体どういうことなのか? 思いもよらない光景に、ダリルは頭が良く働かないままに、ふらふらと薬草たちの方へと向買った。

 よくよく見回してみると、“女神の恵み”のように、一度摘み取られれば、元々あった場所以外では決して育つことのない貴重な薬草たちまで、ここにはしっかりと育っているではないか。

 その、あまりにも信じがたい光景に、ダリルの思考は完全にオーバーヒートだ。


「はあああ〜〜〜〜〜????」


 そしてついに、ダリルの声が薬草園に響き渡ったのだった。




 *




 シモンズは、ただただ驚いていた。

 外からマリーと子供達の声が聞こえてきたため、早速、聖女の山へ一緒に行かないかと声をかけようと、シモンズは庭に降りた。


 すると、昨夜は暗くてわからなかった庭に、自分がいつも見慣れた薬草たちが茂っていたのだ。

しかも、本来、採取された場所から一度摘み取られれば、それ以外の場所では決して育つことのない“女神の恵み”のように貴重な薬草たちまでが。

 驚きのあまり立ち止まっていると、さらに信じられないことが起きた。

 マリーが薬草全体にキラキラと輝く光を振り撒いたのである。


 あまりの美しさに息をするのも忘れるほどだったシモンズは、「精霊がいる!」と周りで賑やかにはしゃぎ回る子ども達の言葉も、マリーの言葉も、一切頭に入らなくなった。驚きのあまり、自分だけ時間が止まったように感じていたのである。

 そしてその光景を見ながら、シモンズの頭には、これまで何度も何度も繰り返し読んだ聖女の書物に記されていた一文、 「聖女が辺り一面に金色にきらめく雨を降らせる」 という記述が思い浮かんだのだった。


(あんな美しい景色、今まで見たことがない…。…まさか…まさかあれは………あれは、あの書物に記されていた、聖女の金色の雨なのか?!)


 光属性でも他の属性でも、金色のキラキラ輝く光の粒子が舞う魔法など有り得ない。

 シモンズの経験と徹底的に書物を読み込んだ聖女に関する知識を思い返しても、それ以外に当てはまりそうなものはなかった。

 それに、先ほど見た、キラキラと輝きながら舞う金色の光は、「聖女の金色の雨」に違いないと思わせるほど、あまりにも美しい景色だったのである。


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