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第38話 ラベンダーの美容アイテム2


(今になって思えば、オリバー支配人が薬草の名前を伏せておくようにアドバイスくれたことは正解だったわね。もしかして、オリバー支配人はマリーちゃんのこと、何か知ってるのかしら?……っ!!も…もしかして、セルジュさんがいつも言ってる『僕のマリーは天使で聖女』って…まさか本当のことだったの?!)


そんなジェニーの動揺は誰にも気づかれないまま、相変わらず会議の面々は和気藹々だ。



「ふふふ、実はですね、この形の瓶は価格が少し高めなんですけど、もう一つ、かなり価格を抑えめにしたシンプルな形の瓶も用意してるんですよ!だから、買ってくださる方の懐事情に合わせて選んでいただけるかなと!

それに使い終わった瓶ですけど、次の購入の際に使用済みの瓶を持ってきてくれた方は、瓶代を値引きしたらどうかと思ってるんです!」


「なるほど、それはいいアイデアだ!」


「いいですね。ご自身でご来店できない遠方の方も仲介する商会経由で可能だと思います。商会は大抵どこもマジックバックを持っているのでそれほど手間にも負担にもならないでしょうから」


「この瓶ならデザインがとても美しいから、使い終わっても飾っておきたい女性もいるかもしれないね」


「ええ、確かにそうね!いくつか揃えて並べたくなるわ!」


「あ、それなら!エマさん、例えば瓶の色を何種類か用意して、選べるようにするのはどうでしょう?好みの色の瓶を選んだりできたら嬉しくないですかね?」


「それ、いいと思うわ!!」


「それは私も、いい考えだと思います」


隣国の大きな商会で長年商売をしてきたオリバー支配人からものお墨付きだ。


「ジェニーさん!」


そんな様子を眺めながらぼーっと考え込んでしまっていたジェニーは、マリーの呼び声にふと我に返った。


「マリーちゃん、なあに?」


「ジェニーさんのお知り合いのこの瓶を作ってくれた工房に、色付きの瓶を何種類か作れないか相談してみたいです!」


「ええ、大丈夫だと思うわ。じゃあ早速、この後行ってみる?わりと近くだし」


「わあ!嬉しいです!宜しくお願いします!」


無邪気に喜ぶマリーを見て、ジェニーは思う。


(こうして話していると、ごく普通の女の子なのよね)


若干年寄り臭いと感じる振る舞いや言動は多々あるし、子供とは思えないほどしっかりしていることもあるけれども、マリーは両親の愛情を受けて真っ直ぐに育った普通の女の子だ。

それに、こういうところを見ると、年相応な女の子なんだな、とジェニーは思う。


(まあ…わからないことを考えても無駄なだけよね)


研究者の性か気になることは納得するまで調べて分析したくなる。

薬草に関する数々の信じられないようなことや、さっき思いついてしまった衝撃の可能性など、気にはなるけれど、これ以上は想像で考えていても解決しないことは分かりきっている。時間の無駄だ。

それより、ようやく完成したラベンダーの美容アイテムだけでなく、マリーの薬草園にはまだまだ他にもたくさんの種類の薬草がある。それらの研究だってジェニーは今すぐにでもしたいのだ。


「わかったわ。これが終わったら、一緒に行きましょう!」


ジェニーは気持ちを切り替えて、そう答えた。





「ということは、やどり木亭からは、サンドイッチ3種類、レモングラスのアイスティー、ラベンダーのサシェとラベンダー水とラベンダーの美容液、スリッパを販売する、ということですね」


オリバー支配人が話をまとめる


「はい!」

「「そうですね!」」

「そうよ!」「そうね!」



「美容アイテムはまずは瓶の製作を工房に依頼するとして、ラベンダー水や美容液を瓶に詰める人手も必要ですよね」


「そうですね。そもそも、薬草関係のものは今後注文が増えることは想像に難くありません。今は祭りに向けて臨時で雇うだけにするにしても、近い将来、なんらかの形で人を雇う必要がありますね」


「それなら、今は孤児院の子供達に手間賃という形でお給料を支払っていますが、子供達の中で成人に近い子から雇えたら嬉しいです。それ以外は職業柄ギルドからの採用で異存はありません!」


「じゃあ早速、孤児院長に今後の採用についての話をしてこよう」


「パパ、ありがとう!」


もう一つ、マリーが気になっていることがある。美容アイテムの工房だ。


「ジェニーさん、ラベンダー水と美容液の瓶詰などの製造工房は、研究室の隣の部屋でも良いですか?」


「ええ、私は問題ないわよ。今は一部屋しか使ってないもの」


瓶類だから2階だと持ち運びが大変かなと心配するマリーだったが、よく考えれば寮のアパルトマンは昇降機もあるのだから問題ないだろうと考え直した。


「じゃあ、トーマス料理長、マジックバックお預けしておきますね!作り置き始めますよね?使ってください」


「ありがとう。サンドイッチは何食分くらい用意しておくかい?」


「んー、どれくらい必要だと思いますか?オリバー支配人」


「そうですね…今回は初めての出店ですから、1日につき1種類100食分でどうでしょう?」


「僕もそれでいいと思うよ。トーマス、よろしく頼む!」


お祭りの出店内容はほぼ決まった。

前世で会った学校の文化祭の準備を思い出すようで懐かしい気持ちになり、なんだかワクワクが止まらないマリーだった。




「嬢ちゃん、瓶の色を変えてぇのかい?」


「はい!何種類か変えられたら嬉しいです!」


マリーはやどり木亭での出店会議を終えて、ジェニーと二人でジェニーの知り合いの工房にやってきた。

ラベンダー水と美容液のボトルの注文と、瓶の色について相談するためだ。


「おー、いいぞ。どうにでもなるからな!作る段階で色を加えるんだ。どんな色がいいんだ?」


「はい!この3種類なんですけど、」


マリーが用意してきたのは、ラベンダーの花と同じ紫、それからピンク、黄色の色見本となるものである。


「紫、ピンク、黄色です。色自体はこの見本のものよりもっと薄く、うっすらと瓶が色づくぐらいがいいんです」


「こんな感じかい?」


工房長がささっと材料を混ぜて試しに作ってくれる。


「おお!そうです!わぁ、イメージ通り!!ジェニーさん、どうですか?」


「ええ、とても綺麗ね!これなら気にいる人も多そうだわ」


「工房長、それでは、この3色と、何も色をつけない無色の4種類をお願いできますか?」


「おうよ!個数はどうする?」


「1色につき300個ずつお願いします。それから、こっちのシンプルな形の瓶も300お願いします。

あとこの小さい瓶ですが、こちらも同様に、4色展開で、1種類につき200個ずつと、シンプルな形の瓶を200個お願いしたいです。納期ってどれくらいかかります?実は、今度の祭りに出店したいと思っているんですけど」


「ああ、なるほどな。300っつーと4色で1200と300、それに小さい方が4色で800と200…そうだな、今祭り前で製造が重なってるから、どうしても少し時間かかっちまうんだが、10日あればなんとかなるだろ。あれか?1種類の色ごとに作る予定だから、できた色の分ずつ納品でいいかい?」


「はい、その方が助かります!あ、そうだ。この一番小さい瓶も念のため作っておきたいんですけど、一緒に注文してもいいですか?これは200個欲しいです」


「おー、もちろんいいぞ。その分は、さっきの注文の後でいいか?色はどうする?」


「この小瓶は紫だけでいいです。色は先ほどの紫よりずっと濃い色で…この見本の色にもう少し近い感じでお願いできますか?」


「これくらいか?」


「あ、とてもいいです!じゃあ、それでお願いします!後で注文書を書いてお持ちしますね!!宜しくお願いします!!」


「おお、任せとけ!注文ありがとうよ!嬢ちゃん、ジェニー」


「じゃあ宜しくね」



そう言って工房をあとにする。直接工房に来てよかった。実際にその場で即見本を見せてもらえるとは思わなかったため、大満足のマリーだ。これで思い通りの瓶ができそうで嬉しくてホクホク顔である。


「あんなにあっという間に試作ができるなんて驚きました!」


「そうなのよ。ふふ、マリーちゃん嬉しそうね!」


「はい!ジェニーさんも嬉しそうです!」


「ふふ!当たりじゃない!それに、なんだか久しぶりにワクワクしてるの。こういうの、いいわね」


「私もです!ワクワクして楽しくて嬉しくてたまりません!」


「帰ったら、工房の製造部屋も整えないといけないわね!」


「はい、やることたくさんですね!」


「さっさと片付けて、研究続けるわよ〜〜〜!」


「あははは!そうですね!思う存分お願いします!」


やどり木亭へ戻る道すがら、二人の賑やかな声が響いた。


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