晩餐会
遅れたー
暗いし食卓にて、奴らはいた。
それは、琥珀の中に生きる細長い、しかし明らかにミミズではない。数多の眼球が、黄金の輝きを見せ。幾何学的模様がその目を強調させていた。
それは、焔であり、苔である。しかしながら、翠の色の中に、明らかな知性を感じさせていた。
それは、人の影のようだが、そこにいる。その蛆のような体の模様は、精神的な憎悪を強く感じさせる。
それは、タコの脚を持つ、恐ろしいほど美しい少女のような姿をしており。ひと目見ただけで、その気品さ、華麗さが伝わり、畏怖するであろう。
その歪みの名は、シュラメル。
その歪みの名は、トゥールステ。
その歪みの名は、イタカァ。
その歪みの名は、クティルラ。
奴らは、モルディギスの同胞にして、“晩餐会“の会員である。
「ところで〜れいちゃんのことは〜どうするの〜?」
「...トゥールステ、空気を読みなさい。」
クティルラの応答に、他の二柱も同意する。とはいえ、この堅苦しい雰囲気に全員悩んでいたのは事実だ。
「まあ、私たちの目的を考えた場合、なんとも言えないからね。」
晩餐会の目的...それは、人になること。人としての自分を感じている、奴らだからこその目的。
とはいえ、流石に歪みとしての在り方は変えられないだろうから、人の姿を持って、人に紛れて暮らすことが、手段として選ばれているが。
「そうだ。彼女が、あいつと一体化したら、どんな感じになるかわからん。シュラメル、君ならわかるかね。」
「...なんともいえないね。私が一体化した時は、向こうの意思が消え失せた。でもそれは、相手が意志の弱い歪みだったからね。麗華さんは、意志の強い人間。だから、どうなるかわからない。」
「一応、シューのようになったとしたら、人になったと言えるけれど、もし、彼女の意思が残ったとしたら...その場合は、晩餐会として迎え入れましょうか。」
「まあ、そうだな。モルディギス君も、彼女のことはいろんな意味で気に入ってるみたいだ。そのこと踏まえると、そのような結論になるのだろう。」
奴らは歪み、本来、この世界に存在しないもの。故に、その性格は、容姿は、存在は、狂気としか、言いようがない。
ちなみに、今回のメニューはレトルトカレーである。
__モルディギスしか料理ができるのはいないので、早く戻ってきてほしいと、奴らは強く願うのだった。