朝のルーティン
彼女__霧島麗華は戸惑っていた。
突然襲ってきた“霧”。得体の知れない狂気的な感覚。そして、彼__モルディギスでも知らないときた、彼女の未来。
全てが、彼女の人生にとって、この世界においてイレギュラーだからだ。
だからこそ、彼女は今を噛み締めている。
(嗚呼、終わりがあるから美しいってこう言うことなのかな。)
そんなことを考えながら。
白い家を出る。
瓦屋根の家を出る。
どちらも同じ家を指すのに、なんでこんなにも印象が違うのだろう。
そうして、真っ直ぐ進む。隅っこから解放される。
嗚呼、解放とは、いかに誤解を生む言い方なのだろうか。悲しい意味で使ったのに。後々考えれば喜ばしい。
家では、108日ぶり(ぶっちゃけ適当に言っただけだが。)に有難うと言った。
いや、「ありがとう」だったかもしれない。
ここまで歩いた歩数は50を超える。
すると、パン屋が見えてくる。
彼女は焼きたての匂いというけれど、私はパンの匂いと思う。
この辺では一つしかない楓の木を見て、西側にある森を見る。
正かk... 「ヤッホー、殴っていいよ!」
蹴った。
思いっきり蹴った。
可愛らしい声を出して彼女__穂村志保が受け身を取った。
怒られそうだが怒られない、この流れが朝のルーティーンになってたりするからだ。
初めの方は、覚えてないが、このおかげで彼女は柔道が強いらしい。(志穂談)
「ん、もしかして...」
一瞬どきりとした。
「近親相姦?」
蹴った。この可愛らしいいかれ野郎は、なぜこうも反省しないのだろう。前よりは良くなった気はするが。
「ちょっとー、怪我したらどうすんのよー。」
「別に私に何か起きるわけじゃないし。うざいし。」
ははは、ごめんごめん。
(言ってることと思ってること逆だぞ。)
「...え、」
「そういえばここはフィクションじゃないか。忘れてた。」
「つまり言ってることと、思ってること、逆のアレやろうとしてたの?」
「まあそういうこと。最近、謎生物に魔法少女になれと言われたし。」
「アナタツカレテルヨノ。」
「...うふふっ。」
心の中で同意した。それに、ぶっちゃけ電車の時間が間に合いそうにない。走れば間に合うけど。
「って、電車の時間やばいじゃん。急ぐよ!」
「はーい。」
言おうとしてたけど、あえて言わない。やっぱり、私優しい。
(自分で言っちゃダメだろ。)