第7話 やってしまったパート2
ロディと洞窟に戻ると、入り口付近に作られた即席の竈門の上の陣笠鍋に雑炊というか粥というか、ができていた。
食事……。
正直、気が重い。
私は食べることが好きである。
五十メートル先のコンビニか、五百メートル先のベーカリーならベーカリーを選ぶほど食べるものには執着がある。だから。
この状況の食事、絶対口に合わない。と思う。
だって、私が作中で彼らに持たせた荷物は、米と麦と、味噌と塩と、干し肉と、木の実とかでしょ。あと『日持ちのするもの』とかいう他の食材が入る余地のある書き方はしたけど、時代を考えても大したものないでしょ。
塩味のついた雑穀粥みたいなもんだよなあと思いながら近付くと、ラスクが、
「ん」
と腕を渡してきた。
「ありがと」
受け取って腰を下ろす。ご丁寧に匙をつけてくれている。こういう時って、その辺の枝を削って箸にするもんだと思うんだけど、ちゃんと腕と匙が(そしてラスクの手には木杓子が)あるあたり、身分のある人は野営でもお上品だ。
ああそうだ。この時代は『いただきます』とかは言わないんだっけ。そんなことを思いながら、覚悟を決めて粥を一口啜る。と、
「美味しい……」
思わず呟いていた。
えっ、うそ。美味しい。
猪肉だろうか、干し肉から出た出汁に、濃いめの味噌がよく合う。赤味噌だろうか。もちもちした食感は麦、ぷちぷちとしたのは粟か。お米も玄米だから、濃い味で炊いても負けていない。芯が残るか残らないかの食感もよい。しかし何より、全体を包み込むこのまろやかなコクは。
「これ、チーズ……?」
「お、分かるのか。美味いだろ、それ」
ラスクが彼にしてはテンション高めに食いついた。
「うん、コクがあって、いい出汁が出てて、すごく美味しい。お腹に優しい」
「お前、イケる口だな」
ドヤ顔のラスクと顔を見合わせて、そう言われて、気付く。
やってしまった!
ウィンにグルメ設定はない!ウィンは絶対食材当てたりしない!!
ていうか、この時代は食べるだけで精一杯だし、逃げてる中で大したもの持たせられないから、あんまり彼らの食の好みは細かく設定してなかったんだけど。そしてラスクが料理男子な設定なんかあったっけか??
あ、でもそっか。彼は忍びの勉強をしてたから、台所係として潜入したり料理で相手の懐に入り込んだりできるように、それなりに学んでるのか。それに、『姐さん』のお店で厨房に立つこともあったはずだ。
……じゃなくて。
ちらりとロディを見ると、こちらに目もくれず黙々と食事を摂っていた。
これ、意図的なスルーかもしれないなあ。。
ロディに限らず、食事をしながら談笑するような雰囲気はまだなく、セディアもフローラもシルヴィーも、黙々と匙を進めている。
私がロディを見て口を噤んだから、ラスクもそれ以上話しかけて来ない。
せっかく、美味しいもの食べてるのになあ。
と、残念に思ったその時である。
(じゃあ私と話しましょうか?)
頭の中に、声が響いた。