第3話 夢女を語る
言っておくが、転生前の生活で夫婦仲が悪かったわけではない。そりゃまあ慌ただしい生活の中、すれ違いや勘違い、喧嘩もしたが、浮気しようなんて考えたこともないし、浮気の心配をしたこともない。
それはそれとして、私には二次元に推しがいた。
自由時間がほぼない生活の中、ちょっとした隙間時間にスマホで見る推しが私を癒してくれた。アクキー(※)をこっそり仕事鞄に忍ばせ、いざという時に握りしめた。
そして見るだけでは飽き足らず、推しと、自分を模したキャラの恋愛を妄想したり、それを小説にしたりしていた。三十秒あれば推しにアクセスできる、スマホ時代万歳。
……改めて文章にするとなかなかだが、それがいわゆる夢女、中でも自己投影夢女というやつである。
一次創作も二次創作もする、エレベーター待ちに一分の時間があれば小説を書く、そんなオタクである。
それはそれとして、私がこれまで『夢幻の書』のキャラクターに夢女としての性質を発揮していたかというと、答えはかなり否に近い。
『否に近い』という曖昧な表現をする理由は二つある。
第一に、私はウィンに自己投影をしている節がないわけではない。
生い立ちも、性格も、見た目も、一致はしていないけれど、部分的に似ているところはかなりある。
一方で、私はウィンとよくおしゃべりしているから、私自身とは思っていない。
でも、フローラやシルヴィーほど、客観的な相手でもないのだ。彼女らは完全に私とは切り離された存在だ。
ウィンとは……育ち方の違う双子みたいな感じだろうか。あるいは、精神的な親友みたいなものだろうか。
だから、ウィンがメインキャラの『夢幻』は、夢小説のつもりはないけれど、自己投影がゼロではないということになる。
第二に、セディアに自分の夢をのせまくっていることがある。
主人公を決めてお話を作ったわけではなく、結果的にウィンとセディアのダブル主人公のようになったこの物語だが、第一部でウィンとセディアがああいう展開なることは最初から決まっていた。というか、ウィンとセディアの関係から膨らんでこの話全体ができたと言っても過言ではない。そして、話を作る間にメインを張る彼に私の理想を詰め込みつつ、感情移入もしていった。
つまり、『自分を一部反映+でも私自身ではない』なウィン、『その相手がこうだったらいいな+感情移入』なセディアなのである。
まあ以上のように、自他境界が曖昧で、彼らは私の分身のような親友のような理想の恋人のような存在なので、自分の小説にそれ以上ダイレクトに自己投影することは、今まではあまりなかったのである。
それなのにこの話を書き始めたきっかけは、今流行りの『異世界転生・転移もの』を『夢幻の書』でやったらどうなるかなと思ったことだ。他作品を読ませていただいて、ふとそんな思いを持ってしまったのである。
そして、思いついたが最後、天性の妄想癖と生まれつきの夢女としての性が一瞬で絡み合い、自分がそのまま小説の世界にダイブしているストーリーが始まった。
そして一度始まってしまったら、オチがつくまでその妄想から離れられないのが私だ。
ちょっとちょっと、今まだ本編書いてるからそっちのこと考えたいんですけど。
その変なパラレルワールドやめてもらっていいっすか。
セルフツッコミをするも、妄想は止まらず。
本編が終わったらこの自己満足の妙なお話を形にしようと決めたのでした。
自分の夢女としての性の説明で一話が終わってしまったぞ。次回はちゃんとストーリーが進みます。次回の途中から、本当にちゃんとしたお話になります。