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第1話 異世界転移

拙著「夢幻の書」 https://ncode.syosetu.com/n6401gx/ のスピンオフというかパラレルワールドというか何というか、なお話です。

元のお話はクラシカルなファンタジーですが、こちらはメタ発言など、かなり遊んでいます。


主人公(夢主※)がオタクなので、オタク表現・オタク文化が出てきます。そして主人公はオタクな言動をします。

タイトルにもあるように、夢小説※感が凄いので、苦手な方はブラウザバックをどうぞ。

(オタク用語には上記のように※を入れています)


本編(一部)のネタバレを含みます。

本編(二部以降)のネタバレはしませんが、キャラが本編にない台詞を話す分、今後が予想しやすくなるかもしれません。

キャラクター心理や、その背景、設定の裏話など、作者視点で語ります。


上記ご理解の上、読んでやってもいいという方は本編へお進みください。

なお、二話三話はオタクな作者が狂ってるだけですが、四話からちゃんと小説になります。

 

「終わったあー!疲れたー!!」

 台詞の割にひそやかな声でそう言って伸びをする私に、夫がにやりと笑ってみせた。

「こっちも終わった」

「よし!」

「「寝れる!!」」

 実家のヘルプなし、三歳と一歳のわんぱく男児、夫婦共働き。そこへコロナ禍。

 想像のつかない方も多いだろうが、これはなかなか壮絶な条件である。

 今日も、宵っ張りの子どもたちを私が寝かしつけ、その裏で夫が食器を洗い洗濯を回して干し、そこから自分たちの身支度をし、日付が変わる頃に本日のタスク終了のハイタッチを交わしたという次第である。

 明日も早い。そしてハードだ。夜時間を楽しむ余裕はなく、我々は床につく。

 なぜそんな体勢になるのか分からない寝相アートな子どもたちの隙間にどうにか身を沈めると、どうやって察知するのか、二人ともがもぞもぞと寄ってくる。

 子どもの体温は高い。暑い。朝まで冷めない密着性のある湯たんぽをのせているようなものだ。

 それを想定して強めに設定してあるエアコンの送風音を聞きながら、私はとろとろと眠りについた。


 *


 背中に、しゃりしゃりと慣れない感触を覚えて薄く意識が浮上した。

 なんだろう、これ。

 ビーズクッションみたいな。噂のYogiboで寝たらこんな感じだろうか。

 しゃりしゃりして、暖かい。寝ているだけで、じんわりと身体が回復していくようだ。

 身体?

 そこで自分の身体に違和感を覚える。抱っこ疲れだねえ、と整体のおっちゃんに毎回言われる、バキバキに凝っていたはずの背中が軽い。その代わり、全身のだるさと、右脇腹にどんよりした痛みを感じた。

 脇腹の痛み。

 どこかで聞いた単語の羅列だ。聞いたというか、見たというか。


 思考がそこに至り、意識が急浮上した。薄く開けた目に飛び込んできたのは、見慣れた寝室の天井ではなく、薄暗い知らない景色だった。子どもたちの頭や腕の重みはなく、代わりにごわごわとした毛布のようなものが掛けられている。

 何これ。なに、これ。


 子どもを寝かしつけているときに一緒に寝落ちしてしまい、起きた時にテンパることがある。今どこで、何時で、何をすべきなのか咄嗟に分からなくて、自分を見失うのだ。

 それの上位互換のような混乱が、私を支配する。

 首を動かして周囲を確認しようとしたその時、視界の奥から人影が二つ、歩み寄ってきた。

 えっ、誰?こわい怖いこわい。

 恐怖と混乱に身を起こそうとした時である。

「気分はどうだ?」

 とても耳に心地よい低音が響いた。心配の滲んだ、優しい声音。その響きに、少しだけ混乱が落ち着く。悪い人ではないと、直感的に思った。

 そして、やはりどこかで聞いたことのある台詞である。

 私は、逆光で見えにくい二人の顔を凝視する。

「今は、坑道を出た、次の次の日よ。さっきまで大嵐だったのだけれど、今はしとしと雨が降ってるの」

 もう一人が、可愛い声でそう言った。

 この台詞。これは。

 私は、薄暗がりの中で二人をかわるがわる見つめる。

 紺碧の瞳にゆるふわウェーブの栗色の髪。質素な変装用の服では覆いきれないお嬢様オーラ。この世の愛らしさを詰め込んで私好みにアレンジしたような、可愛い可愛い女の子。


「フローラ……」

 女の子が、頷く。


 もう一人は、面長な整った輪郭に、切長の鳶色の瞳。知的でクールで、でも熱さと優しさを秘めた、そんな人二次元にしかいないだろうとツッコミたくなる美丈夫。


「ロディ……?」

 青年の口元が綻ぶ。


 じゃあ、じゃあ、私は?

「私は……」

 聞き慣れた自分の声より、幾分高く幼い声。目の前で手を握って開いてみる。

 使い慣れた手より一回り小さな、マメだらけ、傷だらけの手。

 間違いない。

 私は、ウィンだ。

 ここは、私の小説、『夢幻の書』の世界だ。

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