第14話 ラストバトル
「くそッ!このまま街にいてもドラゴンに襲われる。ならば!逃げるぞ! 全速力で街から脱出だ!」
俺のキャラクター盗賊ショウは、全力疾走で街から逃げ出した。
戦って勝てない相手なら、逃げるしか方法はない。
しかし、それを予想していたかのように、黒川詩音はニヤリと笑った。
「ふふふ。残念ね。ゴールドドラゴンは、あなたの前に舞い降りるわ。どこに逃げても無駄よ!」
「チッ! 狙いはあくまで俺って訳か……」
最初のターン。ゴールドドラゴンは、俺を睨みつけるだけで何もしてこない。
「ふふふ。あなたのターンよ」
「ええい! 戦わずに逃げるぞ! こうなりゃあ、とことん逃げの一手だ!」
盗賊ショウは、ドラゴンに背を向けて逃げ出した。
戦っても勝てないのだ。銃も通じない。ならば、やはり逃げるしかない。
逃げ続ければ、何か他に道が開けるかもしれない。
しかし、黒川詩音はクスクスと笑う。
「うふふふ。馬鹿な子。素早さは、ゴールドドラゴンの方が高いと言ったでしょう! 逃げられると思ってるの?」
ゴールドドラゴンは羽根を広げて飛び立つと、低空飛行で盗賊ショウを追いかけた。
そして、あっという間に追いつくと。その鋭い爪で盗賊ショウを切り裂いた。
もちろん、即死である。
「ふふふ。あはは。あーはっはっは! また、あたしの勝ちよ! さあ、服を一枚脱ぎなさい!」
本日2回目のゲームオーバー。
俺は、悔しさに顔を歪ませながら上着のパーカーを脱ぎ捨てた。
「ふふふ。どうかしら? あたしのゴールドドラゴンは! お得意のスキル『盗む』を使ってもいいのよ? もちろん無駄だけど。あはははは!」
勝ち誇ったように笑う黒川詩音。
その後もゲームは続く。
逃げても無駄。隠れても無駄だった。
ゴールドドラゴンは、親の仇のように執拗に俺を追い詰める。
なぜドラゴンが襲ってくるのか、理由も分からないまま。俺のキャラクター、盗賊ショウはドラゴンに殺され続けた。
そして、ついに俺はパンツ一丁の姿になってしまった。
黒川詩音は、いやらしい目つきでジロジロと俺の体を見る。
「灰谷ってさー。けっこう、いい体してるよね。楽しみだわ。そのパンツを脱がせるのが。うふふふ」
その言葉にゾクリとした。
間違いない。この女は、本気で俺を全裸にさせる気だ。
いや、最初からそれが目的だったのか?
だが、このまま負ける訳にはいかない。
沸々と俺の中に、反骨心というかロックな気持ちが湧いてきた。
「なあ、黒川。次が最後の挑戦だ。その前にお願いがあるんだが……」
俺がそう言うと。黒川詩音は目を細める。
「何かしら? またキャラクターを作り直したいとでも言うつもり? そんなことしても無駄よ!」
前回のことがあってか、彼女はやや警戒しているようだ。
俺は、リュックから2つダイスを取り出した。
いつもお守り代わりに持ち歩いている。昔、友達にもらったダイスだ。
「いや、キャラクターはこのままでいいよ。ただ、このダイスを使わせて欲しいんだ」
「随分とそのダイスにこだわるのね。ダイスなんてどれを使っても同じだと思うけど……」
黒川詩音は、俺のダイスを見て言った。
「いや、それは…… 思い入れっていうのかな。ジンクスみたいなものさ」
「ふうん。まあ、いいわ。そのダイスを使うことを許可してあげる」
しめしめ、上手くいったぞ。
黒川詩音は、俺が自分のダイスを使用することを受け入れたのだ。
「さあ、ゲームを続けるわよ。あなたが酒場にいるところからゲームは再開されるわ」
いよいよ最後の挑戦だ。
これに負けると全裸になってしまう。絶対に負けられない。
「よし。盗賊ショウは、酒場を出てドラゴンを待ち受ける! さあ、かかってこい!」
「あら? ついに、あきらめたのかしら。あなたの前に、ゴールドドラゴンが空から舞い降りるわ。最初のターンは、何もしてこない」
余裕たっぷりの笑みを浮かべる黒川詩音。
俺は、そんな彼女に向かって言った。
「なあ、黒川? 何で、ゴールドドラゴンは最初から攻撃して来ないんだ?」
「決まってるじゃない! その方が楽しいからよ。あなたが無駄な抵抗をする無様な姿を見て楽しんでるのよ! うふふふ」
黒川詩音の目は狂気に満ちていた。
俺は、吐き捨てるように言った。
「悪趣味な女だな…… 黒川。お前の敗因は、その悪趣味な態度だよ」
それを聞いて、彼女から笑みが消えた。
「敗因ですって!? あなた何を言ってるの? まさか、あたしのゴールドドラゴンに勝てるとでも?」
「勝てるさ。お前は油断しすぎた。俺に自分のダイスを使うことを認めた。そして、最初に攻撃してこなかった。その油断に足元をすくわれるのさ」
黒川詩音の顔は、ひきつった醜い笑みになる。
「何を馬鹿なことを言っているのかしら? そんな冗談は、ゴールドドラゴンを倒してから言いなさい! 倒せるものならね!」
「OK。じゃあ、俺のターンからだったな。盗賊ショウは、短剣でゴールドドラゴンを攻撃するぜ!」
俺は、攻撃を宣言する。
前回の冒険で手に入れたスナイパーライフルや拳銃は使わない。
盗賊の初期装備である短剣を使用して、攻撃することを宣言したのだった。




