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第12話 2回目の冒険

 それから、5日後――――


 もうここには二度と来ることはないだろうと思っていたが……


 相変わらず10代の女の子の部屋とは思えない黒川詩音の部屋。大きなモニターのデスクトップパソコンと、漫画とラノベがギッシリ詰まった本棚。


 部屋の中央にある小さなテーブルに、俺と黒川詩音は向かい合って座っていた。テーブルの上には、ノートや筆記用具、ジュースやお菓子などが並べられている。


「さあ、前回の続きをするわよ!」


 黒川詩音の言葉に、俺はうんざりして深いため息をついた。


「はぁー。まだ、やる気だったのか? あんなクソみたいなシナリオを作っておいて……」


 それを聞くと、黒川詩音は意外にもシュンとした顔になった。そして、しおらしい声で言う。


「ごめんなさい…… こないだは悪かったわ……」


「えッ!?」


 俺は、思わず聞き返した。あの黒川からそのような言葉が出るとは、夢にも思わなかった。それは、あまりにも予想外の反応だった。


「あたし、反省しているの。オリジナル要素と称して、ファンタージーの世界にスナイパーライフルや拳銃を存在させた。今思うと無茶苦茶なシナリオだったわ」


 少しうつむいて寂しそうな表情をする黒川詩音。学校では見た事ない表情だ。いつもは周囲にいるギャルたちと明るく騒いでいるからだ。


「あのね…… あたし、すごく嬉しかったの。ずっとTRPGをやりたいって思っていたから。だから、嬉しくてつい調子に乗っちゃたの。ハイになってたのね。自分でも恥ずかしいわ……」


「じゃ、じゃあ…… 今日は?」


「今日は、普通にTRPGをしたいと思うの。余計なオリジナル要素はないわ。本来の『ウォーリアー&ウィザード』のルールに従ってゲームをしましょう」


 それなら悪くない提案だ。俺も別にゲーム自体が嫌いなわけではない。それに、少し黒川のことを誤解していたのかもしれない。


「しかし、前回の続きから始めるとなると。俺のキャラクター盗賊のショウは、ゴブリンを倒して拳銃とスナイパーライフルを手に入れてしまっているんだが?」


 そう、前回の冒険で戦利品としてゴブリンが持っていた銃火器を入手している。今さらオリジナル要素を無くすとなると矛盾が生じてしまう。


 しかし、黒川詩音は優しく微笑んで言った。


「あなたは、銃を使ってもいいわ。これは、あたしに対するいましめよ。もちろん、弾数には制限があるから。銃弾が無くなったらおしまいだけど」


 そうか。弾薬には限りがある。それなら、ゲームバランスを大きく壊す要因にはならない。


「分かったよ。そこまで言うなら、もう一度やるよ」


「ありがとう! 灰谷」


 嬉しそうな顔でニコっと笑う黒川詩音。その笑顔に、俺は思わずドキリとした。


 ほんの一瞬だが、可愛いと思ってしまった。


 普段は、ギャルの中のギャル。派手ないで立ちの黒川詩音だが。今は、部屋着なのか上下灰色のスウェットに、シンプルに束ねただけの髪型。


 でも、校内一の美少女と呼ばれているだけあって。大きな目に整った綺麗な顔立ちをしている。


 そんな美少女と部屋で2人きりでいるのだ。今までボッチの俺には耐性が無さすぎる。いや、俺には白崎麗奈がいる。いや、しかし……


「それじゃあ、ゲームを始めましょう」


「えッ!? あ、ああ。始めよう!」


 黒川詩音の言葉に、ハッとなって我に返る。危うく妄想状態に突入するところだった。



 俺と黒川詩音は、再びTRPGを始めた。前回の続きからなので、俺のキャラクターは引き続き盗賊のショウである。


「まずは、前回クリアした冒険の経験点と報酬が手に入るわ」


 経験値を得て、盗賊ショウはレベルアップした。能力値も少し上昇する。


 名前:ショウ

 種族:人間

 年齢:16

 職業:盗賊

 レベル:2

 HP:19

 MP: 0

 腕力:10

 敏捷:28

 器用:25

 知力:11

 幸運:20


 しかし、まだHPや腕力は低いままだ。戦闘向きのキャラクターではない。


 黒川詩音が、ゲームの中にもう銃は登場させないと言うならば。途端に弱体化してしまう。まあ、それは仕方ない。


「レベルアップが終わったわね。あなたが街の酒場にいる所から冒険が始まるわ。ゲーム内では、前回の冒険から一週間後の設定よ」


 ゲームマスターである黒川詩音が説明する。俺のキャラクター、盗賊ショウの2回目の冒険が始まった。


「じゃあ、さっそく酒場の主人に次の仕事がないか聞いてみよう」


 俺は、キャラクターの行動を宣言した。冒険者は酒場から仕事の依頼を受ける。これが、この世界のスタンダードである。大きい街には冒険者ギルドなんかもあるが。小さな街では、だいたいそういう設定だ。


「酒場の主人は首を横に振るわ。今は、特に仕事は無いそうよ」


 おや? 意外な返事だ。


「えッ!? じゃ、じゃあどうすればいいんだ?」


「TRPGの良いところよ。あなたは自由に行動していいわよ」


 これが原初のRPGであるTRPGの所以である。プレイヤーもゲームマスターも人間だからこそ、会話によって無限の可能性が生まれるのだ。


「じゃあ、街でも少し散歩してみようか……」


 俺のキャラクター、盗賊ショウは街の中をぶらつくことにした。


 しかし、今回の冒険は依頼クエストタイプのものではないらしい。これから、何かイベントが起きるのだろうか?



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