表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソノコ  作者: 紀希
6/6

応報



「ただいま、、」



電気の点いていない家は、


外よりも暗い闇に包まれていた。



寝ているのかな、、


古くなった家の床は、歩くと同時に軋む。


ギィ、、



出掛けて、るのかな、


ギィ、ギィ、、


2階の自分の部屋へと行こうとした時。


「おいっ。」


声と共に視界が明るくなると、


そこには父親が居た。


不意で驚いたのもあり、


その場から逃げる様に


階段を上がろとした。


「お前は、ただいまも言えないのか!!」


私は後ろへと引っ張られ、投げ出される。



ドン!



体勢を崩すと、そのまま脚を捻り、


倒れる様にして、視界がズレる。


ガンッ、、


掴む所や、身体を支える場所等無く、


勢い良く身体を強打すると、


反動で頭をぶつける。


痛い、、、



さっきまでの私の世界は、


まるで嘘だったかの様に。



今や、、


"地獄"の最中である。



痛む頭を触ると、


手には血がついていた。


嫌ッ、、



私は泣いていた。


なんで、、


どうして、、



父親は私が持っていたぬいぐるみを見付けると、


拾い上げ、乱暴にも腕を引きちぎった。


「こんなもん、、」



ビリビリビリ、



クマは悲しそうに、床へと投げられる。



私と同じ様に投げられ。


ぶつかり。


下を向く。



なんで、、、


酷いよ、、



這うようにして、クマの腕を拾い、


散らばった綿を集める。



身体を拾うと、強く抱き締める。



ごめんね、、



痛かったよね、、



自分の気が済んだのか、父親はテレビをつける。


テレビの音はうるさいくらいに響く。



馬鹿みたいに笑う笑い声は、


この状況を嘲笑うかの様で、


私の中で込み上げる"ナニカ"が、


遂に爆発する。



『うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい』



壁に凭れ掛かる様にして立ち上がる。


挫いた脚をかばいながら、少しずつ進む。


動く度に、ズキズキと痛みが襲う。


許さない。



父親は、まるで何も無かったかの様に、


普通に横になりながら、テレビを見る。


ゆるさない。



あははははははは!!!


不快な声は私を苛立たせる。


ユルサナイ。



『死んでしまえ!!』



強く。クマのぬいぐるみを抱き締める。


「助、けて、下さ、い。」


あはははははは!



「助けて、、下さい。」


あははははははは!



私は強く掴みながら祈り、唱える。


「助けて下さい!」



父親「さっきからうるせえな!!


聞こえねえだろうがよ!!!」


ゆっくりと身体を起こし、


暴力は直ぐ側まで来ようとしている。



「助けて下さい!」


私を見ている顔が怖い。


「助けて下さい!!!」


私を傷付ける暴力が怖い。


「助けてえ!!!!!」



お父、、さん、



クマの首が180°曲がり、私の顔を見つめる。


怖さよりも、何だかクマの顔は、私を見て、



"哀れむ様な感じがした"



「何だ、、このぬいぐるみ、、



気持ちわりいな、、」


父親が人形に触れ様とした時。


その腕はいとも簡単に捻れ、


赤い血を流しながらもげる。



「うぎゃああぁ!!!」



父親は奇声を上げながら、


痛みで倒れ、床で、もがく。


「い、、いてえなあ!!!」


父親の怒号混じりの声に、


テレビは笑い声を増す。


あはははははは。



クマのぬいぐるみはひとりでに動き出す。


それはまるで、浮いているかの様に、



重力等、関係の無い空間の様に、


父親は壁へと放り投げられる。


ドン!!!


「あは、はは、はは。」


私は震える。



目の前の状況と、リアル。



あははははははは!!


「あははは、、はは」



馬鹿みたいな世界は、


私の悪夢をぶち壊す。



グシャッ、、


いたぶる様に、クマのぬいぐるみは


父親の身体を歪ませる。


父親「やめてくれえ、、」


あははははははは!!


「あはは、、ははは!」



ドン!!!


ガシャガシャガシャ!!


ガガガガガガ!!



父親の腕は私の方へと向けられる。


父親「たす、、けて、、くれ、、、」



あははははははは!!


グチャッ。



「アハハハハハハ!!」



何だったか分からないソレは、


辺りを赤く染め上げ、生き絶えた。


人形はそれを確認すると、


中身が無くなったかの様に、


浮いていた身体は下へと落ちる。



ベチャッ、、



私は這いながら、ぬいぐるみに近付き、


クマを強く抱き寄せる。


「アハハハハハハ」



「大丈夫ですか!!?」


ドンドンドンドン



見て見ぬ振りをしていた近所のクズも。


何もしてくれなかった警察も、



私の惨劇をただ呆然と。



野次馬の如く、見に来たのであった。



あはははははは。






























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ