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ソノコ  作者: 紀希
5/6

ドラマ



クマのぬいぐるみを取りに、


ゲームセンターに行く。


中は耳が痛くなる程に


様々な音で溢れている。



正直。100均でも良かったのかも知れない。


だが、小さなキーホルダーでは、


普通に考えて、大人に勝てる訳がない。


大きさは大きい方が良いに決まってる、、



"呪い"がどの程度の力なのか、、


本当に助けてくれるのか、、


そもそも動いたりするのか、、



"噂"は本当なのか、、



クマのぬいぐるみ、、


クマのぬいぐるみ、、


そんな事を考えながらも、


景品を探し、見て回る。



学校終わりの学生や、


カップルからお年寄りまで、


年齢層は幅広い。



クマのぬいぐるみなんてあるのかなあ、、



私の心も、身体も、、


限界まで来ていた。


本当にクマのぬいぐるみが


助けてくれるのならば、、



藁にも縋る思いで、噂を頼り、


真に受けたかの様に、行動する。



それを否定したり、嘲笑ったり、、


そんな風に会話したり、


相談し合える相手等。



私には誰も居なかった。



『父親に暴力を受けている。』



そんな事。言える訳も無い、、


もしも、警察や、国が。


ちゃんとしてくれていたら、


お父さんは、ああはならなかった。


小さい時の。あの、優しいお父さんは、、



クマの、ぬいぐるみ、、



目の前には大きめの茶色のクマが。


ケースの中で項垂れていた。


「クマさん、、」


両替機にお札を入れる。


ウィーン、、


お札は奥まで入らず、


入り口から出てくる。


ウィーン、、



"まるで、邪魔でもしているかの様に、、"



本当に、クマが動いたら、、


お父さんから私を助けてくれて、、



そしたらお父さんは、変わるのだろうか、、



唯一の家族に。


私は。



『呪い』



をかけようとしている。



ウィーン、、


お札は挿入口から吐き出され、


地面へとヒラヒラと落ちる。


何で、、



いたっ、、


暴力を受けた痕が痛む。


私は。もう、、



"痛い思いをしたくはない、、"



私の覚悟が決まると、


お札は両替され、


カラカラカラカラ、、


と。音を立てて、出口に出てくる。



「よしっ。」


100円玉を入れる。


1play100円。


500円で5回。



隣は500円で6回。


このクマは有名なやつなのかな、、



ゲームセンターに来る事自体が、


私にとっては初めてだった。


テレビはお父さんが下で見ているから、


殆ど見た例が無い。


側に居れば暴力を受ける。



だから帰るとすぐに、部屋に籠った。


静かに。隠れる様にして、、



それだからか、皆の話にも、


ついていける訳が無い。


クラスメイトのブームや


世間の流行と言ったモノには、


全くと言っても良い程。


私には縁も所縁もなかった。



本当は、あの子達の様に、、


一緒に騒いだり、燥いだりしたかった、



全部。


"お父さんが悪い"



100円をいっぱいに入れる。


100円が一枚だけ出てくる。


9枚までしか入らなかった様だ。



軽快な音楽が流れる。


私はクマの中心に掴むやつを移動させる。


ボタンを押すと、掴むやつはクマにアタックする。


ほんの数センチ。


人形は掴まって浮くと、出口とは反対側に落ちる。



難しい、、


人形は重いのだろうか、、


全然動かない。



上がってもただ、緩くバウンドするだけ。


1000円はあっという間に無くなった。


えぇ、、


クマは最初と位置が変わらない。


はあ、、


難しい。


初めてだし、、全然動かないし、



両替しに行くと、目先のカップルが、


何かのキャラクターを取る。


「やったあ!!」


店員さんはベルを勢い良く鳴らす。


「おめでとうございます!」



どうして取れるの、、


さっきの場所へ戻ると、違う人が遊んで居た。



あーあ、、


仕方なく、違う場所を探すも、


クマのぬいぐるみはあそこだけだった。



早く終わってくれないかな、、


近い場所で空くのを眺める。



歳は同じくらいだろうか、、



男の子は、上手に出口へと運び、


その操作は、私よりも慣れていた。


すごい。



そんな風に見つめていたら、


いつの間にか目の前に人形が現れた。



ん?


「あげる。」


男の子は私が取ろうとしていた人形を、


いつの間にか取り、私へと差し出した。


「えっ、、」


男の子と話す事なんて無かったから、


緊張と混乱が私を襲う。


「こーゆーのはほぼ確率だから。


後は寄せたり。な、、


これ。やるよ。」


「でも、、」


すると、押し付ける様にして、


男の子は帰って行った。


「あまり遅くまで居ると、


変なんに絡まれるから、


早く帰れよ?」


まるで、ドラマみたいだった。



私は見た事のないドラマを。


そのドラマで流れるであろうシーンを、


皆が話していたテレビドラマのかの様に。


勝手に想像してこじつけたのだった。

























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