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強打者SFと文庫本SF、どっちがイイですか?  作者: スサノワ


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ノベプラで2021/5/10 4:04から投稿したモノです。

野球・現代チートなんてキーワードから、衝動的に執筆しました。

作者はせいぜい200冊程度の文庫本しか読んでいません。

なので、題材としてはとても出過ぎています。ごめんなさい。

不備がありましたら、ご指導よろしくお願いします。

 小説も異世界も百合も剣豪も冷し中華も、広義の『SF』だと思ってる。

 SFが不当に冷遇されてから、もう数十年になるけど――〝全部SF〟という事実(じろん)に変わりはない――――


「ねえねえコノ辺のも、ぜぇーんぶS☆F(エ・ス・エ・フ)なんでしょぉ? 何かおすすめあるぅー?」

 ――――けどさすがに『野球』はSFではない。


 A:紫色のユニフォーム。

 ホットパンツの裾からチラチラと日焼け跡が見えている。


「おすすめならコレかな。おととい出たばかりの新刊」

 僕は、ビートボックスみたいな動悸を押さえ込み、『猫よ、塀を走る猫よ!<新装版>』をソッと差し出した。


 B:多分、金属バットが入った円筒ケース。

 そんなに胸を張られると……目のやり場に困る。

 袈裟懸けにされたベルトが、食い込んじゃってるよね。


「わぁー、カワイイ♪ コレはどんなお話なの、やっぱり猫の話?」

 最新の科学技術を盛りこむことでSF野球(・・・・)には出来でも、〝野球SF(・・・・)〟には出来ない(個人差)。

 ソレをすると野球ホラー(・・・・・)(広義の社会派)になる(当社比)。


「うん、そう。時速300キロで走る子猫が出てくる――――」

 表紙には『眠たそうな猫をいつくしむように抱きかかえる美少女』が描かれてて、オススメするには趣味的(ラノベ)すぎたかもしれない。


「ぷあっはははっ、さっ300キロって――しかも、子猫って――なにそれっ、あはははははっ!」

 あ、ウケたから大丈夫っぽい。


 C:はじける笑顔。腰までたれたポニテ。

 お嬢様みたいな(噂では、本当に相当いいとこのお嬢らしいけど)清楚な立ち振る舞いからはピアノ弾いたりとか、それこそ僕みたいに文芸部に入っててもおかしくないと思う(偏見)。


「こ、高速カワイイ……アハハッ――けほけほっ!」

 それにしても、よく笑う女の子だよな。

 クラスでもよく声が聞こえてくるけど、彼女のソレは嫌みな感じがしなくて、僕は好きだ。

 笑いが収まったお嬢様が、文庫本をパラパラとめくりだした。


「あー笑った。コレにしよっかな……駅前の本屋で小口印刷(ロットプリント)できるかしら?」

 あーだから、わき腹のあたりをそんなにギュッてしたら、ますます目のやり場に困るじゃないか。


「事前申請して最低――」

 僕はスマホで『書籍ID』を検索する。

「――2人欲しい人が居たら30分で受け取れるけど…………」


 何でも今日は「急に練習が休みになってヒマが出来ちゃってさ」ってコトらしい。

 来週までに提出する読書感想文の事を考えてたら、廊下を歩く僕の顔が見えて、こっそりとアトを付けてきちゃったんだそうだ。

 彼女は副委員長なんかもやってて色々なことに気がつく性格だけど、僕の部活なんかまでよく知ってたな。


「それ、僕の私物だから、良かったら貸すけど?」

 ココは文芸部付き『SF研究会』の部室である。

 間借りの身なれど、実は蔵書の半分は僕が持ち込んだモノだ。


「えっホントッ? いーのぉ? スゴく嬉しーけど……やっぱり悪いよ。読むのに時間かかりそうだし」

「僕はもう何回も読んじゃってるから、本当に全然かまわないよ。もちろん僕のなんかで良ければだけど――」

 もうね、クラスメート(異性)に私物の本を貸すとか、どんなリア充かと内心思うわけで……動悸(ビートボックス)再び。


「イイに決まってるじゃん! 男の子からのおすすめ本なんて、なかなか借りることないし、なんかドキドキするけど」

 マズイ。目が合っちゃった。

 静まれ俺。僕は心のビートボックスのパッドボタンをオフにしていく。

 すーはー、すーはー。なんとか体の震えが収まってるウチに、話題を変えてみる。


「そういえばソレって、何のマーク? ロケットエンジンの配管みたいになってるけど……」

 僕は、かすかに気になってたことを大げさに言ってみた。

 みぞおちのあたりを袈裟懸けに切りつけている、バット入れ(バッグ)のベルト。

 ひょろ長い体型の方の(ドラゴン)を形取ったみたいな模様。


 みずみずしい弾力を見せる双丘(・・)に挟まれる(ドラゴン)の意匠(マーク)

 チラ見しただけで魔術に掛けられたみたいに、目が離せなくなった。

 危ない、なんて破壊力だ。


 グィーン――――ポキリ!

 自分の頭をつかんで、さりげなく(?)視線を無理矢理、横へそらした。


「あ、コレ? んーっとね、なんだっけ? 最新のスポーツ科学を使ってるとかで流行ってるのよ」

「流行ってる?」


「チョットまって、今思い出すから。んーっとんーっと、思い出した! 確かフライホイール打法とかいうやつ」

「ふ、質量電池(フライホイール)!?」

 ちょっとまて。野球から一気にSFになった。


「あれ? 違ったかな? す、スイングバイだっけ?」

「ブッ――す、重力ターン(スイング・バイ)!?」

 こう、SF的ニュアンスのない人から、そういう言葉を発せられると、聞いてるコッチが悪いことをした気になってくる(社外秘)。


「み、見てもらった方が早いかも――えへへ」

 ジジジジー、ゴソゴソ――――――キラァリィーン♪


 〝きらりぃーん♪〟は彼女による発声(こうかおん)

 凄くカワイかったんだけど、僕はソレどころではなかった。


 だって、彼女が取り出したスポーツ科学を使った、おそらくは金属バット。

 アルミとかチタンとかタングステンとか特殊鋼だとかで出来ているはずのソレには――


 D:小さな拳みたいな、短毛で覆われた手があり、長い胴体を伸ばしたり戻したりしていた。

 二つの目・耳。三本ずつ生えた細ひげ。足はなく、彼女の金属バットの持ち手とシームレスに繋がっている。


「ぎゃぃやぁぁっ――――!」

 お嬢様にあるまじき、絶叫。

 でも仕方ない。気にしないで。


 僕だって、そんなモノ(・・・・・)を手にしたら、絶対叫ばずにはいられない。


「よっと、あっぶないなあ。ケガでもしたらどうするつもりだい、まったく!」

 空中に放り出されたソイツは(・・・・)、胴体から下に向かって生えた金属バットの(グリップ)を蹴飛ばすようにして――――脱ぎすてた(・・・・・)


 滞空するソレは、ドコからどう見ても猫にしか見えなかったけど――――取って付け足した鳴き声(ニャァーン)は、そんなに上手ではなかった。

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