第一話
俺、空野隼人。
23歳の社畜である。
そう、ホワイトな誘い文句にのってブラック企業に入社してしまった悲しき社畜である。
いつかこんな会社辞めてやると思いながらも、日本人の性かなかなか辞められずストレスのたまる生活をおくっている社畜である。
まあ,そんなことはさておき、今は俺の身に起こっている異常事態を整理しようと思う。
そう、あれはようやく残業が終わり、家に帰って普段は絶対に開けないような押し入れの扉を開けた時のことだった。突然目の前が真っ白に光り輝いたのだ。そして、何とも言えない浮遊感が俺を包み込んだ。
そして、今もなお真っ白に光り輝き続けている。その間、何度か逃げ出そうとしたものの、金縛りにあったかのように動けない。
最初に光り輝いてから、いったいどれぐらいの時間が経っただろうか。
1日? 1週間? 1ヶ月?
まあ、とにかく長い時間が経った頃、俺に、『声』が聞こえた。
微かに何か言っているのがわかるだけで、何と言っているのか分からない。
しかし、だんだん、その『声』は大きくなっていった。それと同時に俺自身も『声』のする方へ引っ張られていくように感じた。
そして、、水中から水面に顔を出したかのような感覚とともに俺の体は放り出された。
そして、今まではっきりと聞こえなかった『声』がはっきりと聞こえた。
「勇者様、ようこそラーズ王国にお越しくださいました!」