異世界観察
「う・・・ここは・・・?」
まばゆい光から解放されたと思うと、目の前には見慣れない世界が広がっていた。
雰囲気的にはのどかな田舎の村といった感じで、美しい緑に囲まれて、前方には小さいながらも町のようなものが見えている。
「どうやら無事に異世界についたみたいだね」
隣を見ると、一緒にこちらの世界に来ることになった怜雄がいた。
「おう。これからどうする?」
「うーん、こういうストーリーだとまずはギルドに行って冒険者になるのが鉄板だよね」
確かに、異世界に来た人たちはまず村にある冒険者ギルドで冒険者登録というのがお決まりの流れである。
「まあ、少しこの世界の情報を集めてからの方がいいんじゃないかな?」
「確かに・・・。言葉が通じるかとか、文字が読めるかとかな」
「まあ、8人もの人が送られてみんな無事に過ごしてるっていうなら杞憂だと思うけれど・・・」
「じゃあ、まずはそこの町に行って、適当に観察してみるか」
「それがいいだろうね」
行動方針を決めた俺たちは、目の前の町に向かって歩き出した。
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「「これ、かなりイージーモードなのでは・・・?」」
町にきてしばらく別々に観察していた俺と怜雄は、同じ結論に至っていた。
なんとびっくり、この世界住んでいる生物などの環境だけでなく、言葉も文字も日本にいたころと同じだったのである。
また異世界特有の獣人などはおらず、住んでいる生き物は皆人間だった。
建物などの見た目は違うが、言語なんかに比べたら些細な問題ではないだろう。
「なんか神の力で言語変換とかしてくれてんのかな?」
「ああ、それはあるかもしれないね。なんにせよ優しい世界でよかったじゃないか」
まあそれはその通りである。
また、町の探索中に武器屋と思われる店やギルドらしき鎧などの装備を着けた人が集まっている施設も発見したので、本当に俺たちが想像しているような異世界だと思って問題ないのだろう。
そんなわけで俺たちは今、テンプレ通り冒険者になるべくギルドに向かっている。
「なんか、思ったより早くこっちになじめそうだな」
「本当にね。結構、馴染むまでが大変だったりするのに」
ああ、あるある。最初からきつい展開になる異世界転生もの。
「てか、お前結構こういうのに詳しいんだな」
「まあ、あまり大っぴらにではないけれど、その手の話も読んでたからね」
「ああ、隠れオタクってやつか」
こんなイケメン優男がオタクやってるとは、偏見はよくないとはいえ意外である。
そんなことを話しているうちにギルドの扉の前まで来てしまった。
「じゃあ、開けるぞ・・・?」
「・・・そうだね」
やはりいざとなると怜雄も緊張するようで、先ほどまでの自信が感じられない。
「よし・・・行くぞ」
俺はいっちょ覚悟を決めると、目の前の扉を押し開けた。