異世界転移(2)
俺が異世界転移をした――?
にわかには信じられない出来事に動揺してしまっている。
「あの、本当ですか・・・?」
「ああ」
ヴァレリと名乗った男と交わされる短いやり取り。
「しかし、何故ですか?」
「ん?」
「何で僕みたいな人をこの世界に?もっと、こう、運動ができる人とか、凄い頭がいい人とか、いっぱいいるでしょうに」
疑問だった。何でこんないたって平凡な男を選んだんだろう?
「ああ、それは、あれだ。異世界に対する知識がある奴のほうが、この世界に馴染みやすくて、いいんだよ」
なるほど、一理あるかもしれない。
「で、貴方は?何なんですか?」
「ん?神だよ」
「・・・え?」
絶句した。
「・・・どうした?」
「あの、こういう時は大体女神様が出迎えてくれるものだと思って・・・」
異世界転生。それと切っても切れない関係。そう、女神!!
だから俺の前にも女神さまが現れてくれるものかと思っていたのだが・・・
「ああ、すまんな。この世界、神は8人いて、その中からランダムで担当をきめるんだが、男神はワシだけだ。運が悪かったと思ってれ」
それは本当に運がないな。
まあ、その分後で何かあると期待しておくとしよう。
「それで、僕はどうすれば・・・?」
「ああ、もう少し待っておれ。もう1人を待っているのだ」
もう1人?と疑問に思っていると。
突然部屋中に白い光が。
目を開けると、そこには眠っている、17歳ぐらいと思われる顔立ちが整った青年がいた。
「あの、この人は?」
「お前と同じ境遇の奴だ」
ってことはこの人も日本から・・・
と思っていると。
「うーん・・・?」
目が覚めたみたいだ。
「ここは・・・?」
疑問を口にするその人に、状況を色々説明しているヴァレリ氏。
「さて、二人とも状況は分かったか?」
「はい。」
「まあ。」
ヴァレリ氏の問いに口々に答える俺とその人。
「良かった。先ほども言ったが、ここはお前らの世界でいうところの『異世界』ってやつだ。お前らには、これからタッグを組んで勇者となり、向こうの世界で魔王を倒してもらう」
「「・・・え?」」
キレイに声が重なる俺とその人。
いや確かにさっきから何か相性がよさそうかもだけど、いきなりこの人と?
見つめあう俺とその人。
「まあ、一人で行くより、そっちのほうが色々都合がいいだろ?ワシなりの気遣いだと思ってくれ」
そういうものなのだろうか。
まあ、確かに訳のわからない世界に一人で放り出されるよりはいいか。
俺はそう納得した。
「ほら、これから二人で勇者になるんだ。挨拶ぐらいしとけ。」
「あ、はい。ええと、風峰陽人って言います。現世では、特に才能もない一般人として過ごしてました。」
「神楽怜雄だ。これからよろしく。」
うわあ、顔だけじゃなく態度と口調もカッコいい・・・。
ちょっと嫉妬してしまった。
「もういいか。それで、このままお前らを異世界に送っても苦労するだろうし、それぞれに適性のある能力を与えてやる。どんなのかは後であっちで試してみてくれ」
そういうと、ヴァレリ氏の雰囲気が変わった。
今までより圧倒的で神秘的な感じ。
そして、僕と怜雄が魔法陣に包まれたと思うと、言葉にできない「何か」が、僕の心に刻まれた気がした。
「完了だ。二人とも、能力が使えるようになっている。その能力を正しく使い、魔王を倒してきてくれ!」
展開が早すぎないか?
もう行くの?
「あの、何かそちらからこちらへアドバイスを送ってきてくれたりするんですか?」
「いや、ワシら神は向こうへ行くことはできんし、何か干渉をすることもできん。全て任せた。」
ええ~・・・。
ちょっと適当では・・・?なんて思っていると怜雄が、
「まあ、神様がこう言ってるんだから、きっと何とかなるさ」
と言ってきた。
「まあ、心配することもない。今まで8人ほどの人間を送ったが、全員無事に向こうについて生涯を過ごしている。」
まあ、そんなものなのか。
「じゃあ、行きますよ。送ってください。」
「任せろ。いい結果を期待している。」
そういうと、また俺と怜雄を魔法陣の光が包んだ。
ああ、憧れだった異世界についにいけるんだ――。
そんなことを思いながら、俺と怜雄は異世界へ転移した!