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HIKARI  作者: ヒロ・レント
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HIKARI

正直これは反響次第で続きを書くかどうか決めたいと思ってるある意味試験的なチャレンジ作品です。


男性主人公と女性主人公の一人称パートで交互に形成していくつもりです。


非常にデリケートとも言える題材を主軸にしているので、多々実際の現実世界との差異が出てくるかもしれませんが、その辺りに関してはあくまで似て非なるものとして大目に見ていただけたら大変有難く思う次第です。


どうぞ宜しくお願いします。

 これは、僕と、僕の大切な人とが優しく染みる掛け替えの無い世界を映すまでの物語。





 僕は優しくない。

 

 本当に呆れるくらいどうしようもなく醜いから、その上に何重もの優しさと言う覆面を被っているだけで。

 

 努力した。一生懸命そうであろうとした。外見のハンディキャップを少しでも気にさせないために。

 ハンディキャップと言っても障害的な何かがある訳ではなくて、あまりカッコよくないと言うだけのくだらない話だ。

 まぁそれでもその甲斐あってかどうなのか、こんな僕にも今までに何度か恋人が居たこともあったけれど、やっぱりどれも長続きはしてくれなかった。


 いつからだろう…


 と思い出そうとすれば真っ先に出てくるあの出来事。


 あれは小学校3年生の頃だ。凄く好きだったクラスの女の子から《モンスター》と、あだ名を付けられてしまってカッとなってしまい、その女の子を掃除用具のホウキで力いっぱい頭をぶん殴ってしまったのだ。

 子供の力とは言えその女の子は倒れて気を失ってしまいクラス中が大騒ぎになる。

 それ以来僕は本当にみんなからモンスターと呼ばれるようになってしまった。

 けれど本位じゃなかった。彼女を傷つけたのは。


 内心は大好きだったのに。


 だからその時もハッと我に返ると自分でその子を真っ先に負ぶって保健室へと連れて行った。

 それを見ていた周りから「誘拐事件だ。誘拐犯」と心無い子供特有の純粋な悪意で騒ぎ立てる他のクラスメイトの声がしていた。

 後悔して何度も、何度も謝ったけれど、ついにはそれも女の子以下に受け入れて貰える事は無くそれ以来空しく孤独な小学校生活を送った。




 それでも中学生になると多少の環境も変わって、人間関係だって変化していって僕の事をモンスターと言ってたヤツらともバラバラになり、自然と遠のいていってくれたから、僕は必至でバレないように、あの事件を懺悔するかのように優しさの覆面を作って被りだしたのだ。

 でも幸いと言うか、僕は勉強とスポーツは何でもかなり人並み以上は出来た。陸上競技で数種で国体にも出たりしたほど。

 それが功を相してかちょうど十四歳の冬に最初の彼女と呼ぶ相手と出会った。バレンタインデーに告白を受けて僕はそれを受けた、ありきたりな話し。


 でも優しさと努力が報われたのかなと、その時の僕はちょっと舞い上がっていた。その彼女は本当に僕の事を好きで居てくれたように感じた。何故か半年経ってもキスもさせて貰えないでいてヤキモキとしたけれど。一方で思春期の女の子なんてこんなものなのかな、と思って納得もしていた。


 デートなら週2でしてたし、がっちりいつも手も繋いでたし。たまには抱き締めながらイチャイチャもしたからまぁそれでもだいぶ満足していた。

 そうして十ヶ月が経った頃、僕はイルミネーションが綺麗なイベントに連れて行って色とりどりの光の輪の中を彼女と一緒に潜った。眩しい夜に酔いしれて感動しあった。辺りは大部分カップルに埋め尽くされてぴったりとくっ付いて離れないようにして一歩一歩歩いていく。


 そして光のシャワーの終点が近づく。


 一際綺麗な天使のモニュメントが見えてくる。


 二人の天使が手をとって羽ばたいてる姿。


 実はそこの前で恋人同士が同じように手を取ってキスするとずっと仲良く居られるって下らない都市伝説があって、僕も彼女を抱き締めキスしようとした。そこまでは普通だったのに。彼女の名前を呼んでキスを交わそうとした刹那、彼女はもがき僕の腕から抜け出そうとして暴れた。


 僕もパニックになって強引に顔を近付けてしまい、ガチッと歯と歯がぶつかって唇が一瞬だけつぶれるようになり、ただただ乱暴なファーストキスになってしまったのだ。

 気を取り直して僕はグッと唇を押し付けて一分くらいそうしていただろうか。段々と我に返って「悪い」とだけぼそりと言った。彼女も「離して」とだけか細い声で言った。


 そして口を手で覆って足早に立ち去って行く。


 後味は言うまでも無くて。これが最後のデートになってしまった。


 僕の最初の恋愛はそうしてあっさりと終わりを告げた。何故彼女が拒否したのかは未だに知る由も無いけど、一つだけ言える事はあの時、僕は必死になって抑えていた忌み嫌うモンスターになってしまったって事だ。ちっとも成長していなかっただけ。

 それからも数度の恋愛はしたけどどれも似たり寄ったりの内容だった気がする。優しいけど重い、とかダイレクトに、やっぱキモイや、なんて言われたこともあった。

 でも、もう僕は何も感じなくなっていた。なのに…あの小学生の日の後悔と挫折は忘れられず、ダラダラと惰性でもって優しくあろうとしたのだ。このボランティア活動はそんな僕にまさにうってつけなものだったんだ。


 大学に入って二年に上がる少し前に見付けた構内の掲示板に張ってあった募集要項。


 [ボランティアで目の不自由な方達にもっと世界を感じて貰おう]


 と、最初に大きく書かれていて


 [簡単な英単語から点字タイプライターを使って指導していく作業です。それらのコミュニケーションを通して互いの心同士も豊かにしていきましょう。]


 そんな言葉が踊っていた。

 僕はすぐに受付に問い合わせてみて、それに参加する手続きを取っていた。そして順調に面接等をクリアし、早速来る四月からボランティアの非常勤講師を勤めることになる。

 初めて体験した養護クラスの彼ら彼女らの授業は手探りの連続で何度か失敗もしたけれど、中にはほとんど生まれながらに視力の無い子も居てそんな子達は小さな頃からタイプライターを使っていて、一応は僕も前もって勉強してたものの逆に教わることも多々あった。少しずつ時間を重ね、よくよく接していくうちに思ったことがある。眼球が濁りその動きがチグハグな事を除けばそれは健常者と何も変わらないくらいの生き生きとした感じさえしたのだ。まぁ個々の性格の差と言うか、それぞれに悩みがあったり明るかったり暗かったりするんだけど、段々と僕はこの活動に楽しみをも覚えていった。


 そして、この活動の場所に安心感を得るようになっていった。

 どうしてって、この子達は僕の姿形が見えないのだから…少なくとも他のどの場所よりも居心地の良さを感じるようにもなる。

 不純なのは分かってる。でもあまり片意地張ることも無く自然体で居られた事も事実なのだから。

 そんなこんなで半年を過ぎる頃には警戒心の強めな子供達ともある程度打ち解けることが出来た。と自分で思える程には順風満帆な日々が過ぎて行ってくれた。


 年が明け1月の半ばだったろうか、全盲の浦宗智恵美(うらむねちえみ)ちゃんという子がこんな事を僕を呼んでこっそりと言ってきた。

「先生、今度の四月からあたしの知り合いの女の子がココにくるの。歩野華ほのかちゃんってっ…て言ってもまだあたしも会ったこと無いんですけど。パパ同士が知り合いで。まだ失明してからそんなに経ってなくて不安定なんだって。だから支えてあげて欲しいなぁって思って。先生に‥。だって先生いつも一所懸命で一番優しいんだもん。あ、分かってると思うけど絶対あたしが言ったとか言わないで下さい?恥ずかしいし。あたしも仲良くなれるといいなぁ…あ、その子ね、すっごく可愛いんだって。あたし見てみたいけど無理だし先生見たらあたしにもこっそり教えてよ。どんなだったか。ね、ね?京都から来たんだって。楽しみだなぁ。じゃっよろしくお願いしますっ」

って普段の何倍ものテンションで彼女にしては早口に話してくれた。


 そして季節は移る。



 新学期。



 春はいつだって切ない。

 煌びやかな季節をただ愛する人と歩くことに憧れていたのに…

 今となってはそれも空しく切ないものとなっていた。





 ~彼女の場合~(2)へ続く

彼は心にトラウマともいうべき過去を抱いたまま今後新しく見付けた環境でどう変わっていくのか、それは筆者もまだ分かりませんがとても楽しみな部分でもあります。


前書きで言ったように試験的な試みでもあり、更新頻度は期待しないでください(汗)

とは言え書く時は全力で頑張ります。


読んでくれた方全ての方に感謝を述べたいと思います。

有難うございました!!

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