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テクノ国は電気の国。街が電気じかけで成り立っている。
夜景は不夜城の名に恥じないきらびやかな照明の渦。
「星が地上に降り注いだの?」
ロンはホテルの部屋の窓際に腰掛けて飽きることなく外を眺めていた。
「もし電気がなくなったらこの国はどうなると思う?」
「国は死んでしまうわ、きっと」
バチバチバチン!
ショートする音がそこいらじゅうにはびこった。
静電気で髪が、全身の毛が逆立つ。
「あなたは誰?」
「この国の意思」
「なぜ私にかまうの?」
「お前のガーディアンが俺にケンカを仕掛けてきた」
「ええっ?!」
ピカッ!ゴロゴロゴロ、ピシャアン!!!
青天の霹靂?
街にチラホラいた人影が避難していなくなる。
「さあ、雷竜の娘よ、外へ出てきて俺に姿を見せろ!」
ロンは非常階段に出た。
風が吹きすさぶ。
「私を誰だと思っているの?風使い、雷使いのロン!」
「ならば俺は大粒の雨を降らそう。電気も風も地面に叩きつける」
雨風雷入り乱れての力比べ。
ズゴゴゴゴゴ…。
ものすごい地響きがした。
「なるほど、なるほど」
「しばしの間だけ、滞在します」
「ふうむ。よかろう」
あーあ。また別口の力を持った存在に目をつけられちゃった。
「いいわ。それなら他の手を考えるから」
騒ぎがぴたりと収まった街に人々がおっかなびっくりでもどってゆく。
☆
にゃあん。
黒猫だった。
さっきからロンの携帯にかけているのに全く繋がらない。
異国の地でいきなり天候が荒れてロンは心細いだろうと、ガーは心配していた。
「おいおい、ズボンの裾にまとわりつくなよ。毛がつくだろーが」
ガーが黒猫に手を延ばすと、パチッと静電気がはじけた。
「おーいて」
しゃがみ込むと、黒猫がガーの膝に無理矢理上ってくる。ガーはしょうがないので地べたに座って猫を太ももの上に乗せた。
「おーい、ロンちゃん、ロンちゃんよ。なんで電話に出ないんだ?」
「出れないからよ。携帯壊れちゃった」
黒猫がロンの声で言った。
ガーは目を見開いて黒猫を見る。
猫は毛づくろいに余念がなさそうだ。
「ロン…?」
「うん。本体は出歩けないからこの子の身体借りてます」
「本体って、無事なのか?」
「まあなんとか」
「なんとまあ!」
「でも、猫じゃいろいろ限界があるから誰か女の子にお願いして行動したいんだけど、だれがいいかしら?」
「女の子ねえ。あ、でもアスカはやめとけよ」
「なぜ?」
「今頃ディーンとよろしくやってるだろうし、俺の知ってるだけでも5人彼氏をとっかえひっかえしてるから」
「うーん…」
「飛行機で席譲ってくれた彼女は?」
「あっいいかも!」
「あんまり驚かせないようにな」
…にゃあん。
もうそこにはロンはいなかった。
ガーはため息をつくと、黒猫を優しくなぜてやった。