5
飛行機は成層圏を飛んでいた。
コクピットの操縦士たちは、眼下に広がる対流圏の厚い雲を見下ろして、身震いしていた。
「雷雲がずっと追いかけてきてる」
「無事に着陸できるかな?」
副操縦士が青い顔で応えた。
かなりの電圧の雷竜が雲の中で大暴れしている。あそこを通って地上に降りなければならないのだ。
飛行機に雷が落ちるな。それも何回も。
操縦士は覚悟を決めた。
「高度を下げるぞ。飛行場の管制塔と連絡をとってくれ」
「ラジャ」
☆
成層圏から見る空の色は宇宙の蒼に近かった。
ロンは眼下の雲にため息をついた。
「どうかした?怖いのかい?」
ガーがそう言って気づかっているとき、機内放送で全員着席ベルト着用のアナウンスが流れた。ガーはしぶしぶ自分の席に戻った。
「おばあちゃん!ガーディアンはずっと私のそばにいるみたい」
ロンはそうつぶやいて、おまじないの呪文を口にした。
雷雲は飛行機の行く手から別れてゆき、嘘みたいに穏やかな空になった。
「私がどんな姿をしていたとしても、ガーディアンは私がわかるんだ」
ロンは唇を噛みしめた。
飛行機は無事に着陸した。
ディーンとガーがロンと一緒に空港のロビーに出ると、ディーンの彼女が出迎えにきていた。アスカという名前で、可愛いけれどヤキモチ焼きのヒステリー持ちだった。
「誰?その人」
「ロンだよ」
そう言ってロンがアスカと握手すると、アスカはすぐにロンが女の子だと見破ってしまった。
「ディーン?!」
「なんだよ。俺なんもしてないよ」
アスカはディーンの左腕に両手を絡ませて、ふん、と鼻息が荒かった。
「ガー。おすすめのホテルはどこ?」
「そうだな、格安で治安のいいところにしよう」
ディーンはアスカに囚われの身なので、ガーとロンばかり会話していた。
「よろしくお願いします」
「任せて!」
幸先良さそうだった。