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今夜は満月だった。
異国情緒溢れるレンガの道をディーンとガーはのんびり歩いた。
曲がりくねった道だ。建物はでこぼこいろんな形をしているが、高さは制限があるのか、同じくらいの高さばかりだった。
「空が広いね。こう、なんていうか、地上と空が分かれてる」
「俺たちの国は高層ビルが乱立してるもんなぁ。しかもあっちは不夜城で、月や星はほとんど見れない」
「そろそろホテルに戻って夕食とるか?」
「そうだな」
ホテル近くまで歩くと、正面入口付近で何やら騒ぎが起こっていた。
「なんだろ?」
現地人の女性がホテルの従業員たちに押し止められて、ホテルに入れてもらえないようだった。
「その人、なんかしたの?中に入れてあげたら?」
ガーが声をかけると、押し問答していた現地人の女性がガーとディーンの方にかけてきた。
「良かった!会えたわ」
「ロン?!」
民族衣装をつけているので別人かと思った。顔も半分薄布で隠している。
「これだから高級ホテルは!」
「現地人は入れないのか?なんてひどい」
「私、お礼に来たの」
「うん」
きれいにラッピングされたお菓子の袋をディーンとガーそれぞれにくれた。
「俺、花買ってない。ガーが花束君に贈ったんだ。俺はもらう権利ない」
ディーンが恥じて言った。
「あれは二人からだよ」
と、ガーが言った。
「私もそう思ったわ。ディーン、気にしちゃいやよ」
「ありがとう」
三人とも嬉しかった。
「それにしても、ホテルの対応頭にくるな」
「ああ」
「大丈夫!明日の朝を見てらっしゃい!」
ロンがガッツポーズをすると、足早に帰っていった。
☆
翌朝。
ガーとディーンがホテルの朝食を摂っていると、白いワンピースにツバの広い白い帽子をかぶったロンが現れて、ディーンのお皿からプチトマトをつまんでパクリとやった。
「ロン!?」
「どうやって中に入ったの?」
「この格好だとすんなり通ってこれたわよ」
「ドレスコードか?」
「そういう問題か!?」
でも、服装だけで別人のようだった。
「朝食まだなら食べてく?」
「ええ!もちろん!」
3人は同じテーブルで朝食を摂った。