表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/41

stage32.遊楽



「スキー!?」


「ああ、そうだ。お前経験したことないだろう?」


「うん……でも、僕にできるかなぁ?」


「心配するな。最初は皆、未経験だ」


 響咲久遠(きょうさくくおん)は咥えタバコで車のハンドルをゆっくりと切りながら言った。


「でも道具とかは?」


「レンタルだ」


 助手席で滝沢有夢留(たきざわあむる)に訊ねられ、久遠は短く答えた。

 こうしてスキー場に向けて、車を走らせた。




「ぅわー! すっごい真っ白! 寒いけど」


 到着して広い雪原を目の前にした有夢留は、息を白くさせながら感嘆の声を上げた。

 山の上にあるスキー場には、たくさんの客が滑りを楽しんでいる。

 カウンターでサイズに合わせてウェアとスキー板などをレンタルしてから、装着する。


「あれ? 久遠のスキー板は?」


「俺はスノボーだ」


「すのぼ??」


「ま、見てれば分かる」


 久遠と有夢留の他に、若い男のインストラクターも一緒だった。



「それじゃあここで、基本を覚えましょうか」


 インストラクターに声をかけられて有夢留は、戸惑いながら久遠を見上げる。

 外の世界で他人と一緒になるのが、不安らしい。


「大丈夫だ。安心して教えてもらえ」


「久遠はどうするの?」


「俺は適当に滑って待っている」


 そう言い残して、久遠は慣れた様子でスノボー板を持って行ってしまった。

 こうしてインストラクターの指導の下、基礎を教えてもらう有夢留。

 

 どうやら有夢留は飲み込みが早いらしく、すぐにコツを掴んで滑れるようになった。

 もっとも、まだ初心者感は否めなかったが。

 後は実績だと言い残して、インストラクターもその場を後にした。

 有夢留は久遠を探しながらヨタヨタと滑っていると、突然雪の波が覆いかぶさってきた。


「わっぷ!!」


 その場にしりもちを突く有夢留は、全身雪まみれになっていた。


「どうだ。滑れそうか?」


 どうやら久遠の仕業らしかった。


「んもぅっ!! 久遠のイジワル!!」


「クックック……とりあえず一緒に滑るぞ」

 

 久遠は咽喉を鳴らしながら有夢留に手を伸ばすと、立ち上がらせた。


 


 こうして3時間ほど滑ってから、二人はスキー場にある喫茶店で温かい飲み物で寛いでいた。

 久遠はコーヒー、有夢留はココアだ。

 生まれて初めて飲むココアに、有夢留は大層喜んだ。


「どうだ。少しは楽しめたか?」


「少しどころか、すっごく楽しかったよ! 次来る時は僕もスノボーに挑戦してみるよ!」


「そうか。何よりだ」


 久遠は目を輝かせる有夢留の反応に、口元を小さく綻ばせるとコーヒーを口へと運んだ。

 そしてこのスキー場の施設内にあるゲーセンでも遊んだ。

 何もかもが、有夢留にとっては初体験で楽しくて仕方ない。

 無邪気にゲームで遊び、たくさんの笑顔を見せる有夢留に、久遠は和む心で見守っていた。

 ――が。




 スキー場からの帰りの車内では、すっかり有夢留はプリプリ怒っていた。


「大体久遠、大人気ないよ!」


「お前が俺を誘ってきたからだろう。俺は忠告したぞ。どうなっても知らないと」


 実はエアホッケーで有夢留は、久遠に惨敗していた。

 しかも、一度負けてもう一回だと言う有夢留の申し出に応えた久遠は、以降5回もプレイした。


「いいじゃないか。詫びにその邪魔臭いぬいぐるみをUFOキャッチャーで取ってやったんだから」


 確かに助手席に座る有夢留の腕の中には、両腕一杯の大きさをした猫のぬいぐるみが抱きしめられていた。


「そうだけど、思い出したらムカつく」


 有夢留は口を尖らせて、小さく呟いた。

 どうやら有夢留は、負けず嫌いなところがあるらしい。

 時間は夕方の5時を回っていたが、空はすっかり夜の帳が下りていた。

 二人は宿泊場に到着すると、仲居に案内されるまま部屋に入った。


「あー、体がベタベタ! お風呂入りたい!」


「シャワー程度で良ければトイレの隣にあるぞ」


「分かった。じゃあ入ってくる!」


 言うなり有夢留は、室内の風呂へと入って行った。

 

 やがて風呂から上がった有夢留は、テーブルにずらりと並ぶご馳走に目を輝かせた。


「海の幸山の幸だ。これはワインじゃなくて日本酒の方が合うな」


 久遠はそうボソリと言った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ