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一日には千重波しきに
大伴宿祢駿河麻呂の歌一首
一日には 千重波しきに 思へども なぞその玉の 手に巻きがたき
(巻3-409)
一日中、千重の波のように、何度も想いをかけるのだけど、どうしてあの玉を自分の手に巻くことができないのだろうか。
玉は、意中の女性。
一日中、恋い焦がれているけれど、意中の女性からは、全く見向きもされないのだろうか。
叶わぬ恋だから燃えるということもあるけれど、まあ、しかたがない。
「なぞその玉の 手に巻きがたき」
自分に魅力がないのだろうかとも、何度も悩むかもしれない。
または、自分より良い相手が実はいるのかもしれないかと、不安に思う。
そんなことを思いながら、その上、相手にその気がなければ、悶々としつづける他はない。




