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梅の花咲きて散りぬと
大伴宿祢駿河麻呂の梅の歌一首
梅の花 咲きて散りぬと 人は言へど 我が標結ひし 枝ならめやも
(巻3-400)
梅の花が咲いて散ったと人の噂に聞いたけれど、私が印をつけた、あの枝ではないと思うのだけど。
花が散ったとは、女性が他の男性と結婚してしまったことを、たとえる表現。
駿河麻呂としては、結婚の約束をしたのだから、それを守ってもらいたいのだけど、どうやら噂では、別の男性に取られてしまったらしい。
「そんな噂など、信じたくはない」との思いが、歌にこめられている。
あるいは、駿河麻呂の約束など、女性が信じていなかったのかもしれない。
約束だけをして、間を開けすぎて、呆れられてしまったのだろうか。
花が咲く=女性の美しさの絶頂時となり、「口約束で、あてにならない駿河麻呂」を、女性が見限ったのではないか。
やはり、あてにならない男を、待ち続ける女などは、稀有なのだと思う。




