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笠女郎の大伴宿祢家持に贈りし歌(3)
奥山の 岩本菅を 根深めて 結びし心 忘れかねつも
(巻3-397)
奥山の岩の下の菅の葉の根は深いのです。
その根と同じように、深く思って、契りを結んだ心を忘れることなどはできないのです。
※「根深めて」は「菅」の縁語。
結びしは、心も身体も、深くなのだと思う。
とにかく、好きで好きで仕方がない気持ちが、この歌にもこもる。
一途な恋心なのだけれど、相手の大伴家持の心は、この歌の時期には、笠女郎を距離を置いていたとの説がある。
名門貴族大伴氏の御曹司とは、身分の差があったとか。
ただ、障害があるからこそ、恋は燃え上がる、これは、いかなる時代の男女でも共通するのだろう。
だからこそ、笠女郎の哀しいまでの恋を、感じることができる。




